タイ国経済概況(2023年11月)

1.景気動向
(1)タイ工業連盟(FTI)の発表によると、2023年9月の産業景況感指数(TISI)は前月比▲1.3ポイントの90.0で、過去14ヵ月の中で最低水準を記録した。FTIは家計債務の増加や農家の所得減少等が消費者心理を冷やしていると指摘。また、業種別では45業種中19業種が上昇。企業規模別では、小規模企業が前月比+1.1ポイントの94.2、中堅企業が同▲3.2ポイントの97.0、大企業が同▲1.7ポイントの79.4だった。大企業は11ヵ月連続の下落となった。

(2)国際通貨基金(IMF)が10月に発表した経済見通しによると、ベトナムのGDPが2026年にはタイのGDPを追い越すと予想。ベトナムが東南アジア内で2位の経済大国となると予想した。フィリピンやインドネシア等は15~64歳の労働生産人口が増えていく一方で、タイの出生率(2021年)は1.33と減少の一途をたどる。IMFによると、東南アジアの主要6ヵ国の名目GDP(2022年)は、インドネシアが4兆369億米ドルでトップ、続くタイが1兆4,824億米ドルで2位だった。3位はベトナム(1兆3,212億米ドル)で、4~6位はフィリピン、マレーシア、シンガポールだった。

(3)タイ工業連盟(FTI)が10月24日に発表した9月の自動車生産台数は、前年同月比▲8.4%の16.4万台だった。内訳は国内向けが同▲17.9%の6.0万台、輸出向けが同▲2.0%の10.4万台。新型コロナ前の2019年9月の生産台数16.9万台を下回った。また、9月の国内新車販売台数は同▲16.3%の6.2万台で、輸出台数は同▲2.9%の9.7万台。新型コロナ前の2019年9月の販売台数が7.6万台、輸出台数が9.8万台であり、販売台数、輸出台数ともに新型コロナ前の水準を下回った。

(4)FTIが10月24日に発表した9月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲20.0%の20.0万台で、3ヵ月連続のマイナスを記録した。2019年9月の生産台数は20.6万台であり、新型コロナ前の水準を下回った。内訳は完成車(CBU)が同▲14.4%の16.9万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲41.1%の3.1万台。また、9月の国内販売台数は同▲5.9%の14.1万台、輸出台数は同▲25.2%の2.9万台だった。2019年9月の販売台数が13.5万台、輸出台数が2.6万台であり、販売台数、輸出台数ともに新型コロナ前の水準を上回った。


2. 投資動向
(1)タイ投資委員会(BOI)は10月11日、今年1月に発効した5年間の投資促進戦略について、修正を加えた24年以降の4年間の戦略を発表した。5つの戦略的産業と活動を投資戦略政策の中核に据え、それらに特別投資恩典を付与する。5つの戦略的産業は(1)BCG(バイオ・循環・グリーン:農業や食品、医療やクリーンエネルギー等)、(2)自動車、特にEVやそのサプライチェーン、充電ステーションおよびその主要部品、(3)電子機器、特に川上(半導体材料等)やスマート電子機器、(4)デジタルとクリエイティブ、(5)地域本部および国際ビジネスセンター。また産業構造の変革を促すため、次の5つの課題を推進する。(1)グリーントランスフォーメーション、(2)技術開発、(3)人材育成、(4)クラスターベースの投資、(5)投資のしやすさ。

(2)世界の株式市場は、米10年債利回りの上昇に加え金利再引き上げの可能性もあり、引き続き下落圧力がかかっている。また、中東情勢についてはエスカレーションに対する懸念が高まっている。SET指数は9月22日の1,545.6ポイントから、10月20日には1,399.4に大きく下落した。下落要因には、新政権による政策施行の遅れ(10,000バーツのデジタルウォレット配布等)による政治的な不透明感から、市場と政府に対する海外投資家心理が悪化していることが挙げられる。10月20日時点でのSET時価総額は17兆1,800億バーツとなり、前月から減少した。サービス分野が時価総額4.52兆バーツで依然としてSET最大分野であり、資源分野が3.56兆バーツで続く。SET市場は下落傾向にあり、その主要因は米10年債利回りの上昇があげられる(10月19日には17年ぶりの高水準となる4.98%に達した)。また、年末に向けて金利再引き上げへの懸念が高まっている。最近の米10年債利回りの上昇は、原油価格が今年7月の約70米ドルから10月には約90米ドルにまで上昇し、インフレ圧力が再度高まっていることが要因とみられる。この原油価格の上昇は、サウジアラビアとロシアによる原油輸出削減決定を受けたものである。さらに、イスラエル・パレスチナ情勢の悪化は市場心理にさらなる悪影響を与えている。


3. 金融動向
タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2023年の9月末時点で金融機関預金残高は24兆4,998億バーツ(前年同月比+1.6%)、貸金残高は30兆5,054億バーツ(同+2.3%)といずれも増加。また、9月27日にBOTは政策金利を2.25%から2.50%に引き上げた。


4. 政治動向、その他
(1)タイ貢献党は10月27日、タクシン元首相の娘であるペートンタン氏を新党首として任命し、執行役員23人も同時に選出した。貢献党は今年5月の総選挙で前進党に敗北したが、その後独自に新連立政権を作り、党員のセター氏が首相に選出された。国内政治の点においては、国民に対する10,000バーツの電子通貨の配布や医療用目的以外の大麻の一掃等、各種政策が急がれる。また、政府は10月31日の閣議で、観光振興策として11月1日から半年間の期限で、インドと台湾からの旅行者を30日間ビザなしで滞在可能とする政策を決定した。また、11月1日に政府はEV振興策の2024年~2027年期の政策延長を発表。セター氏は自らがEV政策委員会の委員長を務めている。

(2)セター首相は10月30日、ラオスを公式訪問。両国にまたがる鉄道や道路等のインフラ整備について、ラオスのソンサイ首相と話し合った。セター氏は、ノンカイ県からラオスのビエンチャン間を横断する鉄道橋の着工を早急に進めることを要請した。加えて、両者はインフラ整備の上、両国間の貿易額を2025年までに110億米ドルに引き上げる目標で合意した。また同日、周辺国経済協力開発機構(NEDA)とラオス国鉄(LNA)がシステムや技術協力に関して合意した。セター氏はビエンチャン・ロジスティクスパークや、両国およびミャンマーが抱える大気汚染PM2.5の問題についても言及した。


(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。

情報提供:三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.



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