両方の手を水槽にはりつけ
水中の鼓動を聴いてる
かじかんでいた心の中をいま
覗くようで息をひそめる
視界くぐり抜け体曲げて踊る
ピンクの魚よ
はるかに続くエメラルド色の波に帰る夢を見たりするの?
24時間 朝から朝になる
キスしたり背中向けたり
それぞれの針 時計が動き出し
人生が始まり終わる
淋しくはないの?愛はあるの? そこに
君をここから放してあげたい
けれども外はもっと怖い
大きな水槽だから
ピンクの魚よ
君はいつでも
平和と戦争とのはざまを泳ぐ
わたしなんだ
『ピンクの魚よ』
by 永井真理子