でりら日記

日々の雑記帳

読んだメモ「朝日のようにさわやかに」「日本の名随筆14 夢」「飛ぶ男」

2008年01月25日 | 趣味の雑記
忘れかけてた読んだメモ。

読み終わった日:1月18日
朝日のようにさわやかに/恩田 陸 単行本
 2007年3月30日
 株式会社新潮社 281p  短編集
 収録作品(初出)
  水晶の夜、翡翠の朝(『殺人者の放課後』2002年 角川スニーカー文庫刊)/
  ご案内(「讀賣新聞」2006年4月8日夕刊)/
  あなたと夜と音楽と(『ABC殺人事件』2001年講談社文庫刊)
  冷凍みかん(『GOD』1999年廣済堂出版刊)/
  赤い毬(「i feel」 No.31 2005年Winter 紀伊国屋書店刊)/
  深夜の食欲(『グランドホテル』1999年廣済堂出版刊)/
  いいわけ(「小説現代」2004年8月号)/
  一千一秒殺人事件(『怪談集 花月夜綺譚』2004年ホーム社/集英社刊)/
  おはなしのつづき(「飛ぶ教室」第二号 2005年光村図書刊)/
  邂逅について(『凶鳥の黒影』2004年河出書房新社版)/
  淋しいお城(「小説現代」2006年4月号)/
  楽園を追われて(「yomyom」2006年Vol.1)/
  卒業(「Timebook Town」2006年7月7日配信 パブリッシングリンク)/
  朝日のようにさわやかに(「サントリークォータリー」82 2006年 Winter サントリー)

 ショートショートから中篇(それでも掌編か)まで。冒頭の「水晶~」は、『麦の海に沈む果実』『三月は
深き紅の淵を』シリーズのヨハンが登場。黒い。

 「おはなしのつづき」に泣きそうになる。こういうのは弱い。本当に弱い。泣く。「あなたと夜と音楽と」は
頭の中でドラマ仕立てで楽しんだ。こういうのも好き。本骨頂。「冷凍みかん」は、別の長編にチラッとエ
ピソードとして出てきた(筈)。いや、別の収録本を読んだのか?溶かしてはいけない、アイスボックス
の中に何年も何年も保管されている冷凍みかんの話。

 そうして個人的には「淋しいお城」も好きだ。あんまりおしつけがましいのは好きではないけれど、「み
どりおとこ」が「MAZE」の恵弥を髣髴とさせる。

 こういう短編集は早く読めるような気がして実はそうでもない。でも一粒で何度もおいしい。でも不思
議と疲れる。きっと頭の切り替えをてきぱきしなければならないからだ。

読み終わった日:1月23日
日本の名随筆14 夢/編者 埴谷 雄高
 1984年1月25日 第一刷発行
 1990年3月31日 第十二冊発行
 株式会社作品社 255p 単行本

 このシリーズは、一つのテーマで丸々一冊、時代・ジャンルを問わず集められた随筆集。(まぁ随筆と
いうジャンルなのだがそうではなくて様々な畑で活躍する人の作品が集められているという趣向。)
今回は14巻の「夢」。別件で調べものをしていて、埴谷雄高の編集が目を引いた。コレがなかなか面白
い。

 編者をはじめ、三島由紀夫、芥川龍之介、阿部公房、井上ひさし、澁澤龍彦、なだいなだ、福永武彦、
森鴎外、横光利一、与謝野晶子、吉行淳之介、萩原朔太郎などなどという豪華っぷり。短く纏める妙、
夢に関する論文、不思議な夢での体験、様々。これもまた、さらっと読めそうでなかなか奥が深く、思っ
たよりも時間がかかった。このシリーズだけでも暫く楽しめそう。

 個人的には阿部公房の「睡眠誘導術」、小川国夫の「燃える馬」、西郷信綱の「夢あわせ」が興味深
い。中には同じものを扱った作品もあるが(共通のテーマだ、いたしかたのないことで)それでも千差万
別。

読み終わった日:1月24日
飛ぶ男 The Flying Man/阿部 公房 単行本
 表紙/オブジェ:藤掛 正邦; 撮影/額賀じゅんじ
 装幀 新潮社装幀室
 発行 199年2月10日
 二刷 1994年2月10日
 株式会社新潮社 152p

 1993年1月22日に亡くなった著者の遺稿フロッピーを単行本化したもの。残念ながら未完。突然、
「弟」を名乗る人物から電話を受けた男性教師。「弟」は、なんと夜空を飛んでやってきた。
「さまざまな父」を収録。こちらを読めば、「飛ぶ男」がどうして生まれたのか、少し理解できる。

 先日読んだ辻井喬の「過ぎてゆく光景」に引用されていた阿部公房の「燃えつきた地図」を読みたくな
って「著者:あ」の棚に行ったのだが、残念ながら同書はなく、かわりに目を引いたのがこの本。135mm
×215mmの変形サイズ、縦長で手に持った感触がとてもよい。印象的なカバーを開くと、実に美しいで
デザイン。文字配列、段組、印象的なノンブル、実に微に入り細に入り手を尽くし心を尽くした作りだ、と
思ったら遺作だったというわけだ。

 タイトルの「飛ぶ男」は、後半は文章が繋がっていないし、プロットらしきもののままで止まっている。
読みながら、三原順の「ビリーの森ジョディの樹」を思い出した。これも三原順の遺作で、後半はほぼ下
書きのまま単行本化されている。謎がゆっくりと解明へ向かい、事件が大きく動き始めたとき主線は消
えてエンピツの線になる。それでも、三原順の「描きたい、描きたい」という情熱が伝わってきて、涙なし
には読めなかった。今でも思い出しただけで画面が滲む。

 この「飛ぶ男」も同様、一つ一つ積み上がっていく言葉が冷静で巧みなだけに、最後まで書き終えら
れずにしまわれていたのが惜しまれてならない。それでもこうして美しい本になって私の手に届いた裏
には、これに関わった人総ての筆者と同氏の作品への深い愛情、哀悼の念がある。たまたま手に取っ
ただけだが、こういう偶然に私は心から感謝する。

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