去った3月17日は父の1年忌だった。
実はこの日は私なりに計画している事があって
18年前の祖母の7年忌の時のビデオをぜひ見せたいと思い準備していたのだ。
ウチの8mmカメラはとっくの昔に壊れてしまって再生出来ずにいたのだが
最近、知り合いからビデオカメラを借りてきてやっとレコーダーで編集、デジタル化した。
業者に頼むのをケチった為、カビで少し画質が悪くなっているけど。。
母や兄弟の気持ちやその時の流れをみて実行するつもりだった。
夕方になり一段落して叔父、兄達はお酒が入り和やかな雰囲気になってきたので
「ねえ、観て欲しいのがあるんだけど」と言って
予めセットしておいたビデオにスイッチを入れて、前置きもなくいきなり
父のホロ酔いの笑顔と大きな笑い声と座卓を囲んだ叔父達の笑顔を映し出した。
昔と殆ど変わらないこの部屋に18年前の笑い声が響き渡る。
それを観て皆が身を乗り出して口ぐちに叫んだ。
「おおっ!! これっていつ? 何年前? みんな若いっ!」
その中には父よりも先に若くして他界した叔父二人の元気な姿もあって
もう二度と集まる事の出来ない全員集合の貴重なシーンだ。
その日はカメラをさりげなく棚の上に置いて殆ど隠し撮り状態で撮影したので
本物の表情や動き、雰囲気、その時間そのものを切り取る事が出来たと密かに満足していた。
母は
「父ちゃんっていつも大声でしゃべってたね~。
あんな笑い声だったよね。そうそう飲むとズボンを膝までまくり上げる癖があった 笑」と
元気な頃の父の表情や動作を一つも見逃さないように画面から目を離さないでいた。
亡くなるまでの7年間程、父は声を出して笑わなかったので
本当に懐かしい底抜けに明るい青空のような笑い声に聞こえた。
みんなで食い入るように観た後で父の末弟にあたる叔父が
「もう今日はこれで満足っ!優子に拍手~っ!」と言ったので
ワタシは皆から想定外の拍手をもらってしまい、なんだか恥ずかしかったのだけどw
さっきまでカメラを向けると「いいよ、いいよ」と恥ずかしがっていたその叔父が
「ゆうこ、僕の写真も撮ってくれ。10歳くらい若くねw 遺影にするから」と言って
私のカメラに向かって精一杯の笑顔を向けた。
込み上げてくる寂しい気持ちを打消しながら
「3.2.1 イェ~イッ!」と笑って私はシャッターを押した。