“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

起立性調節障害③「朝起きられない起立性調節障害」

2023年08月14日 14時37分40秒 | 思春期
起立性調節障害のブロク、3つ目です。
2つ目と同じく、読売新聞の記事を紹介します。

この記事には「真面目でがんばる子に多い印象」という記載があります。
私も診療していて実感します。
起立性調節障害と診断されて、
いろいろドクターショッピングしたけどよくならなくて、
高校は「登校しなくてよい」定時制へ入学、
するとそこには真面目でおとなしい生徒ばかり、
という話を患者さん本人から聞きました。
心療内科も受診したけど、
薬が合わなくて副作用で苦しみ、
漢方治療を希望して当院を受診、という経緯です。

定時制高校というと、
私の時代(昭和)はやんちゃで普通高校を退学した輩の行くところ、
というイメージでしたが、
現在のまったく違う状況に驚かされました。

1つ目、2つ目の記事紹介で、
・起立性調節障害は自律神経失調
・起立性調節障害と不登校は重なることが多い
・精神的因子(ストレス)対策も必要
であるから、私は生活指導と基本的投薬で改善ない例は、
精神科医+心理士による診療を積極的に導入すべし、
と書きました。
しかし現状は…心療内科へ問い合わせると、
「中学生以下は診療できません」
と断われることが多いのです。

専門家の方々、
こころの問題が不得手な小児科医が抱えてこじれるより、
精神科医へバトンをうまく渡すシステムを作ってもらえませんか?

▢ 朝起きられない「起立性調節障害」 夏は血圧低下や水分不足による症状悪化に注意
 朝起きられず、不登校につながることも多い思春期の病気「起立性調節障害」。単に学校に行きたくないだけだと誤解されて、つらい思いをしている子どもも多いそうです。この病気の発症の仕組みや診療について、東京逓信病院小児科専門外来医師の中澤聡子さんに聞きました。(聞き手・藤田勝)

◆ 思春期に起きる自律神経の機能不全
――どんな病気ですか。
 思春期に起きやすい自律神経の機能不全です。体のどこかに炎症があったり、体をつくる細胞や組織が壊れたり、変化したりなどの異常が起こって症状があらわれる器質的な病気ではありません。思春期に背が伸びて体が大人になっていくのに従い、自律神経やホルモンなどが子どものパターンから大人のパターンに変わっていきますが、その際にずれが生じて発症します。小学校高学年から中学時代に発症することが多く、中学生の10人に1人は起立性調節障害があるといわれています。
――どうして朝起きられないのですか。
 自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、日中は交感神経の働きが強くなり体を活発にさせ、夜には副交感神経の働きが強くなってゆったりとさせます。この二つの神経がバランスをとりながら身体の調子を整えています。
 立ち上がると血液は下半身に偏り、上半身に流れる血液が減って、いったん血圧が下がりますが、通常はすぐに交感神経が反応して血圧を元に戻します。ところが起立性調節障害の場合、その機能不全のため、特に朝は下がった血圧がなかなか元に戻らず、脳の血流が減るのでクラクラしたり、つらくて起き上がれなかったり、いろいろな症状が出ます。
◆ 夜は元気に「明日は学校行くよ」
――そんな状態では学校に行くのは大変ですね。
 起立性調節障害の症状が重かったり、長引いたりすると不登校になってしまうことも多く、不登校の子どものおよそ3~4割は起立性調節障害だとみられています。
 ただ、朝はしんどくて横になっていますが、昼から夜にかけて元気になることが多いです。だから夜は「明日は行くよ」と言いながら、翌朝また行けないというパターンも多く、この病気を知らない人からは「ただ学校に行きたくないだけなのでは?」と誤解されて、つらさを理解してもらえないことが起こりがちです。
 また学校に行けないことで生活リズムがさらに崩れたり、クラスに入りづらくなったり、勉強がわからなくなったりして、ますます学校に行けなくなる悪循環も起きやすいです。
 そのほか、この病気とは関係ない原因で不登校になり、家から出ず、体を動かさないことなどによって身体機能が低下し、起立性調節障害になってしまうこともあります。
◆ 真面目でがんばる子に多い印象
――こんな子どもに起きやすい、などの傾向はありますか。
 発症した子どもの約半数くらいは素因を持っていると言われ、よく話を聞くと、ご両親のどちらかが若い頃は血圧が低かったとか、朝が弱かったというケースが多いです。そういう子が思春期に勉強や部活なども忙しくなり、親の期待にも応えようと無理してがんばって、いろいろなストレスがかかり発症してしまう。どちらかというと真面目で一生懸命がんばる子が多くて、適度に手を抜ける子は発症頻度が少ない印象です。
 そして、環境やストレスの影響を受けやすいのも特徴です。この病気になったことや理解されないことがストレスになることもあります。また、もともと人間関係などのストレスがあり、不登校になった後でこの病気を発症することもあり、心理的な要因も様々です。
――思春期の病気ということは、成長すれば自然に治りますか。
 軽い場合は数か月で良くなることもありますし、症状が比較的重くても早い段階からしっかりと対応できれば、高校生の終わりぐらいまでには良くなることが多いです。しかし、場合によっては、成人になっても症状が続くこともあります。

◆ 起立後の血圧や脈拍を調べる検査で診断
――どのように診断しますか。
 日本小児心身医学会が作ったガイドラインでは、立ちくらみ、気持ち悪さ、 動悸どうき 、朝起きられない、腹痛、頭痛、だるさなど11項目の症状のうち、三つ以上当てはまるか、二つでも起立性調節障害が強く疑われる場合は、他の病気がないか調べたり、新起立試験という検査をするなど、診断に向かう流れになっています。新起立試験は、10分以上安静で横になった状態から起立したときの、血圧低下からの回復にかかる時間と、10分間の起立中の血圧や脈拍の変化を調べるもので、その結果、起立性調節障害のどれかのタイプに当てはまれば、診断されます。
――どんなタイプがありますか。
 この検査でわかるのは四つあり、起立した直後、ストーンと血圧が下がってなかなか戻らない「起立直後性低血圧」、後半にじわじわと血圧が下がる「 遷延性起立性低血圧」、立っている間は脈拍がすごく増える「体位性頻脈症候群」、失神してしまいそうになる「血管迷走神経性失神」です。また、それ以外に特別な器械を使ってわかるタイプもあります。
◆ まず、早めにかかりつけの小児科へ
――その検査はどこで受けられますか。
 基本的には小児科ですが、この検査を行っている専門的な医療機関は多くなく、何か月も待たないといけないこともあります。まずは、早めにかかりつけの小児科を受診することが大事です。起立性調節障害と思っていても、貧血や甲状腺機能の異常、脳や心臓、おなかの病気などが隠れているかもしれません。全体的な評価をしたうえで、その小児科で診てもらえばいいのか、専門的なところを紹介してもらったほうがいいのか、相談してください。
◆ 水分や塩分、睡眠、運動など生活調整が不可欠
――どんな治療をしますか。
 起立性調節障害は要因がたくさんあるので、時間をかけて問診を行い、どんな症状が起きていて、どんな要因が関係しているのか、本人と一緒に考えていきます。治療としては、血圧や脈拍をコントロールする薬や、頭痛や吐き気などの症状をやわらげるための薬なども必要に応じて使いますが、自律神経の機能を整えるためには生活調整が欠かせません。
 例えば、血圧がストーンと下がらないように頭を下げてゆっくり立ち上がる、水分や塩分をしっかりとる、十分な睡眠をとって早寝早起きを心がける、などです。運動も大事です。下半身の筋力が弱くなると血液が上半身に戻ってきにくくなるので、体調を見ながら少しずつ、散歩でもいいので体を動かすように指導します。ストレスが強い場合はカウンセリングを取り入れることもあります。
 症状が軽くて生活調整だけで良くなる人もいますし、薬を2~3か月服用して元気になる人もいます。重症になるほど治りにくく、何年もかかることもあります。
 周りができることとしては、本人の思いをよく聴いて受け入れることが大切です。そして、本人が自分から治りたいと前向きになってくれることが、回復へとつながっていきます。
◆ 登校しやすい環境をどう作るか
――不登校にはどう対応していますか。
 本人が学校に行きたいのに行けないということなら、登校しやすい環境をどう作るかを考えていきます。診断書を書いて、学校の先生に協力をお願いすることもあります。部活や塾などが忙しく、帰宅時間が遅くなり、どう考えても睡眠不足になってしまうようなら、どのように時間を調整するかを考えます。
 不登校の原因が学校の人間関係にもある場合、最初から学校に行くことを目標にしてしまうと、その子は朝起きてきません。そんな場合は、ひとまず学校のことは考えずに、朝から起きられて、元気でいられるようになることを目指します。
 不登校になると、それだけで「自分はダメだ」と思いこんでしまう真面目な子が多いので、当面、学校に行くのが無理なら、アニメでも音楽でも、何か本人が楽しめることをやって自分を肯定すること、自信を持ってもらうことが大切です。中には、起立性調節障害をきっかけに芸術系の才能が開花した子もいます。
◆ 登校することで好循環が生まれる
――学校側は、この病気のことをよく理解してくれますか。
 以前よりも、起立性調節障害をよくわかってくださる先生は増えました。今は逆に気をつかって「治るまで休んでいていいですよ」と言われたりすることもあるようです。
 でも学校に行かない状態が続くと、体を動かさないので筋肉や骨、心臓や循環器系などの働きも弱くなります。そうすると、ますます起立性調節障害も悪化する悪循環に陥ります。無理やり学校に行かせるのは良くないですが、行き始めると、どんどんいい循環が生まれるので、午後からの登校や別室への登校など少しずつでも行くことができる、ちょうどいい感じの環境を整えることが大事です。また、登校が難しければ、学校以外の居場所を考えることも大切です。
――不登校になると、どうしてもスマートフォンやゲームの時間が増えそうです。
 いきなり取り上げるのではなく、それをしている時間が楽しくてホッとできるなら、とりあえず許容してあげて、寝る前はやめるとか、ある程度、時間を制限するなど、本人も一緒に考えて、納得できる取り決めをするのがいいと思います。
――コロナ禍は、この病気にどのような影響がありましたか。
 新型コロナウイルス感染症の流行で、学校が数か月休校になった時期がありました。この時期は、家にこもって体を動かさないことや友達と会えなかったりすることから、起立性調節障害を発症したり、悪化したりした子が多くいました。ただ、オンライン授業が始まったことで、登校できていなかった子が授業を受けることができて、その後に登校できるようになったり、通学にかかる時間のつらさがないことで少し楽になったりした子もいました。このように、起立性調節障害の子どもたちに様々な影響がありました。
 さらに、新型コロナウイルス感染が自律神経に影響を及ぼすといわれており、これからも注意が必要です。
◆ 夏は血圧低下や水分不足に注意
――夏休みはどんなことに注意して過ごせばいいでしょうか。
 起立性調節障害の子どもは、春先の生活環境が変わるときや、夏の暑い時期、梅雨や台風の低気圧のときなどに症状が悪化しやすいと考えられます。
 暑い夏は自律神経の働きが乱れて血圧が下がりやすく、また、汗をかいて水分不足気味になることなども重なり、悪化しやすくなります。涼しい環境で過ごせるようにすることや、水分を多めにとって体が潤っているようにすることが大切です。



コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。