“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

自慰行為はいけないこと、それとも必要なこと?

2023年08月13日 07時11分19秒 | 子どもの心の問題
小児科医である私は昨年(2022年)、「性教育認定講師」という資格を取得しました。
これは日本思春期学会が主催し、一定のレクチャーを受けて試験に合格して与えられる資格です。
一通りのレクチャーを受ける中で衝撃を受けたのが“自慰行為”(=オナニー、マスターベーション)です。
我々の世代は、
「自慰行為はいけないこと」
「隠れてこそこそすること」
というイメージが強かったのですが、
現在は、
「自慰行為は将来の子作りの練習として必要」
「男子には必須科目、女子には選択科目」
と講師の先生が堂々と話すのです。

いや~、驚きました。
「これは思春期男子に伝えなければ」
と早速、こんなブログを書きました。
中高生男子の皆さん、参考にしてください。

さて最近、「自慰行為は人類の進化上必要なこと」という、
これまた衝撃的な記事が目に留まりました。
どんな内容なのか、興味深く読ませていただきました。

<ポイント>
・ヒトを含む霊長類の自慰行為は、少なくとも雄にとっては、生殖の成功率を高める(1)とともに性感染症(STI)への罹患リスクを低減させる(2)効果がある。

1.交配後選択仮説(postcopulatory selection hypothesis);
自慰行為が受精の成功に役立つとするこの仮説は、さらに二つの説に分かれる。
一つ目は、強い雄に交尾を中断される可能性の高い低位の雄にとっては、交尾に至った時点で迅速に射精することが必要である。射精を伴わない自慰により交尾前の興奮を高めておくことは、より迅速な射精につながり、繁殖上、有効な戦術になる可能性があるというもの。
もう一つは、射精を伴う自慰により劣化した精子を排出できるため、交尾には新鮮で質の高い精子を利用でき、これにより、他の雄の精子との競争に打ち勝つ可能性が高くなるというもの。研究グループによると、集めたデータからは、自慰行為が、複数の雄が1匹の雌と交尾するシステム(多雄交尾)とともに進化してきたことが示され、この仮説が裏付けられたとしている。

2.病原体回避仮説(pathogen avoidance hypothesis);
交尾後の自慰による射精は、STIでの主要な感染部位である尿道の洗浄につながるため、交尾後のSTI罹患リスクを下げるのに役立つ。

・メスの自慰行為についてはデータ不足で判断できず。

野生動物では、1年の中で発情期というものが決まっていて、
生まれた子どもが食物を得やすい時期に設定されています。
農耕を始めて保存食を得た人類は発情期を捨て去り、
いつでも性交渉をして子どもを産めるように進化しました。

そこで登場したのが「セックスアピール」と「性交渉時の快感」です。
何とヒト以外の動物では、これがないと読んだことがあります。
確かに授乳期以外で乳房が膨らんでいるサルを見たことはありませんね。
「女性らしい体つき」=「子どもを産めるからだ」が本来の意味なのでしょう。

一方で、神様から与えられた「性交渉時の快感」により、
翻弄される人類が観察されます。

いろいろな社会現象が発生しました。
性産業が広がり、性犯罪というダークサイドも。
プラスとマイナスが入り混じり、
ヒトは「性交渉時の快感」に振り回され、
未だ制御しきれない印象もあります。

ただ、昨今の「草食系男子」の増加を観察すると、
やはり必要なことだったのかなと思ってみたり…。


▢ 自慰行為の進化上の利点とは?
 快楽のための行為と見なされがちな自慰だが、実際には、進化において重要な役割を果たしている可能性があるようだ。ヒトを含む霊長類の自慰行為は、少なくとも雄にとっては、生殖の成功率を高めるとともに性感染症(STI)への罹患リスクを低減させる効果のあることが、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のMatilda Brindle氏らによる研究で示唆された。この研究結果は、「Proceedings of the Royal Society B」6月7日号に掲載された。
 動物界で自慰行為を認めることは珍しいことではない。しかし、この一見すると自己志向型の行為が、個体の生存や繁殖といった進化の点で何らかのメリットをもたらしているのだろうか。現状では、自慰行為は病的な行為である、あるいは高い性的興奮の副産物に過ぎないとする非機能的な仮説がある一方で、自慰行為には適応的な利益があるとする機能的な仮説があるなど、統一見解は得られていない。
 そこでBrindle氏らは、246本の学術論文や150件の調査結果、霊長類学者や動物園の飼育員から得た聞き取り情報など、400近くの情報源を集めた。その上で、これらの包括的なデータを系統比較的な手法と組み合わせて、霊長類の自慰行為の進化の経路や関連要因を検討し、雄と雌の双方において、いつから、また何のために、自慰行為が行われてきたのかについての理解を深めようと試みた。なお、現生の霊長類は、ヒトやゴリラなどの類人猿を含む真猿類とメガネザル科から成る直鼻猿類、キツネザル科とロリス科から成る曲鼻猿類の2つのグループに分類される。
 自慰行為の起源については、合計67属の霊長類の自慰に関するデータを、雄・雌別に、「自慰をする」「自慰をしない」「記録がない」として整理し、この基礎データから、それぞれの属の祖先における自慰行為の有無を推定した。その結果、少なくとも真猿類の祖先がすでに自慰を行っていた可能性が示された。
 では、一見非機能的に見える特性がなぜ進化の過程で生まれ、受け継がれてきたのだろうか。研究グループはいくつかの仮説を立てて検証した。一つ目の仮説は、自慰行為が受精の成功に役立つとする「交配後選択仮説(postcopulatory selection hypothesis)」。この仮説は、さらに二つの説に分かれる。一つ目は、強い雄に交尾を中断される可能性の高い低位の雄にとっては、交尾に至った時点で迅速に射精することが必要である。射精を伴わない自慰により交尾前の興奮を高めておくことは、より迅速な射精につながり、繁殖上、有効な戦術になる可能性があるというもの。もう一つは、射精を伴う自慰により劣化した精子を排出できるため、交尾には新鮮で質の高い精子を利用でき、これにより、他の雄の精子との競争に打ち勝つ可能性が高くなるというもの。研究グループによると、集めたデータからは、自慰行為が、複数の雄が1匹の雌と交尾するシステム(多雄交尾)とともに進化してきたことが示され、この仮説が裏付けられたとしている。
 もう一つの仮説は、交尾後の自慰による射精は、STIでの主要な感染部位である尿道の洗浄につながるため、交尾後のSTI罹患リスクを下げるのに役立つとする「病原体回避仮説(pathogen avoidance hypothesis)」である。研究グループは、霊長類において、雄の自慰行為は病原体の発生と関連しながら進化してきたことが示されたとして、この仮説についてもエビデンスが得られたとしている。
 その一方で、女性の自慰行為の意義については、データ不足のため、明確なことは分からないままであるという。
 Brindle氏は、「これらの結果は、非常に一般的でありながら、ほとんど理解されていない性行動に光を当て、自慰行為の機能に関するわれわれの理解を大きく前進させるのに役立つ」と述べている。

<原著論文>


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