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アジアビジネス成功の秘訣<その2> 「本土主義」

2014-01-13 | ■海外市場開拓セミナー

アジアビジネス成功の秘訣の2つ目は「本土主義」です。これは、「現場主義」と言い換えることもできます。ビジネスが実際に動いている「現場」を自分の目で見て、自分の足で歩き、肌で感じ、その現場で陣頭指揮を執るということです。「本人主義」に続いて、この「本土主義」もアジアビジネスで台湾人経営者が重視するポイントです。

スピーディーな経営判断を行うためには、ビジネスの「現場」で活きた情報収集を行う必要があります。そこで集めた情報の分析も「現場」で行い、「現場」で整理し、「現場」で分析し、「現場」で状況判断と意思決定を行うことが重要です。こうした徹底した「現場主義」がアジアビジネスを成功に導く「鍵」であると言えるでしょう。

台湾人経営者のコメントです。「会議室でいろいろ考えても仕方がない。まずは自分の足で現場を歩き、実際に自分の眼で見て確かめるべき」、「自分の耳で現場の生の声を聞いて、活きた情報の中から必要な情報を見極め、経営判断にすばやく役立てる」というのが台湾人経営者の考え。彼は「日本企業は責任者が現場に来ないケースが多い。どうやって経営判断をしているのか」、「とても理解できない」と考えているようです。

■事前のデータ収集はどこまで必要か?

私の事務所では中国や台湾ビジネスに関する「個別相談」を行っていますが、事務所にいらっしゃる方から「中国の経済指標や企業データを入手したいがどうしたらいいか」と相談されることがけっこうあります。相談に来る担当者の方は事業計画を立てるための資料集めが目的であるようです。

政府発表の「統計資料」を取り寄せたり、与信のために企業の「信用調査」を行ったり、熱心にデータ集めをする人がいらっしゃいますが、こうした取り組みはほどほどにしたいものです。実は集めたデータはすべて「過去のもの」です。まったく意味がないとは言いませんが、本当に活きたデータがどのくらい手に入るものでしょうか?データ集めはほどほどにしておきたいものです。

中にはあれもこれもとデータを必要以上に欲しがる人がいます。社内稟議に提出するためだけのデータ集めであったり、集めたデータが多すぎて混乱してしまう方もいました。(中国のデータの場合、出所によってはデータの根拠となる定義やデータ集めの切り口が異なっているケースも少なくなく、整合性を取るのがたいへん難しいケースもあります)

「上司を説得するためだけのデータ集め」というケースもありました。「何ヶ月もデータ集めだけをやっている」という方もいらっしゃいました。統計数字の確認で出口のない迷路に迷い込んでしまう人もいました。何のためのデータなのか甚だ疑問です。こうしたデータはあくまでも補足的な資料と考えるべきで、やはり大切なのは「現場の声」です。

■日本企業はデータ収集にこだわり過ぎる・・・

「日本企業はあまりにもデータにこだわり過ぎる」という声を台湾人経営者からもよく耳にします。ある日本企業の担当者に台湾人経営者を紹介したときのことです。台湾人経営者が「データ集めに奔走する時間があるくらいなら、まずはとにかく『現場』に来て欲しい」と日本人担当者を一喝。「本当にやる気があるのなら、もっとスピーディに動くべき」と意志決定が遅い日本企業に対して苦言を呈したこともありました。

「日本企業はリスクを洗い出して、そのリスクを避けるための方法を考えることに熱心」とはこの台湾人経営者のコメント。台湾企業はリスクは「避けるもの」ではなく、「立ち向かうもの」と考えます。リスクの裏には必ずビジネスチャンスがあると考えるからです。

魅力的なビジネスにはすぐに喰いつくのが台湾人経営者です。石橋を叩いてもなかなか渡らない日本企業に対して痺れを切らし、自らが訪日して日本人経営者に決断を迫ることもありました。彼らはリアルタイムで入ってくるビジネスの現場の「生」の情報こそが重要だと考え、スピーディかつフレキシブルに行動します。

■現場に行ってやっと理解する「現場を見ることの重要さ」

海外視察を企画し、日本企業の皆さんと現地視察に行くと、帰りの飛行機で参加者の皆さんから必ず出る感想があります。ほぼ必ずと言っていいほど聞くことができる感想です。

それは、「やはり現場に行かないとわからない」、「自分の目で見て来てよかった」、「実際の状況は想像していた以上だ」といったコメント。統計や企業データでは見えてこない現場のムードとか、そこで働く人たちの熱気とか、中国経済の勢いとかを現場に行って自分の目で確認してくることが重要なのです。

できれば、我々が企画する海外視察で「やはり現場に行かないとわからない」を確認するのではなく、自らの力で現場に飛び込んで行った欲しいものです。

次回のコラムでは「本領主義」を取り上げます。



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