中国人理解/異文化理解

「中国人とうまくつきあう実践テクニック」(総合法令出版)著者による公式ブログ

「絶対に贈ってはいけない品物」 <贈り物の品物選びに要注意 (1)>

2013-11-18 | ■異文化理解

このコラムではアジアビジネスを進めていく上で注意したい「異文化理解」のポイントについて取りあげていきます。できるだけ具体的な事例を取り上げながら、すぐに役立つ知識やノウハウ、さらには実践的ですぐに使えるテクニックを紹介していきたいと思います。よろしくお願いします。

特に、中国、台湾、香港、シンガポールなど「華人圏」でのビジネスに注目し、彼らとうまくつきあっていくために必要な基本知識やマナー、仕事の進め方や商習慣の違い、ビジネスの上で注意すべきポイントなどを解説していきます。さらに、中国人の価値観や仕事観、彼らが持つ独特なコミュニティ感覚や仕事に対する就業意識まで踏み込んでいけたらと考えています。

「なぜ大きな声でケンカをするように話すのか」、「なぜ列に並ばないのか」、「なぜ列に割り込むのか」、「なぜ残業をしている同僚の仕事を手伝おうとしないのか」、「なぜ食事をご馳走した翌日にお礼を言わないのか」、「なぜ言い訳ばかりするのか(素直に謝らないのか)」etc.

このようにマイナスイメージで中国人を見る日本人も少なくありません。しかし、こうした中国人に対するマイナスイメージは「単なる日本人の誤解」であるケースも少なくありません。彼らの行動にはそれぞれ理由とその背景があり、「異文化理解」に目を向けることが如何に重要であるかを気づかされます。

このコラムではこうした日本人と中国人の価値観や考え方の違いに目を向け、コミュニケーションギャップの原因を考え、彼らとうまくつきあっていくにはどうしたらいいかを考えていきます。ビジネスを進めていく上で知っておきたい「異文化理解」のポイントをひとつでも多く紹介していくことを目的に執筆を始めました。

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■テーマ■「絶対に贈ってはいけない品物」 <贈り物の品物選びに要注意 (1)>

さて、最初に取りあげるテーマは「贈り物の品物選びに要注意」という内容です。皆さん、いっしょに考えてみてください。

■ケーススタディ■ 中国出張のとき、取引先の担当者にお土産を買って行こうと思います。相手は仕事で日頃からお世話になっている中国人です。鈴木さん(仮名)は成田の免税店でお土産を選ぶことにしました。しかし、次の①から⑥の品物の中で、「贈り物」には相応しくない品物があります。贈り物としては絶対に選んではいけない品物があります。さて、「贈り物」として相応しくないのは、どの品物でしょうか?贈り物として相応しくないと思う品物には×を、大丈夫だと思う品物には○をつけてみてください。

① 職人が手作りで仕上げた伝統工芸品の和傘
② 日本各地の有名お菓子を集めた詰め合わせセット
③ 設立25周年を記念して作ったインテリアとしても美しい木目調の置時計
④ 秋葉原でしか買えない数量限定のキャラクターデザインの可愛い扇子
⑤ 太陽パネルで電池交換の不要なハイテク目覚まし時計
⑥ 会社のエコキャンペーンで製作し、TVでも有名になった緑の帽子

ここで解答を読み進める前に、1分間程度自分で考えてみる時間を作ってみてください。


さて、いかがでしょうか。どれが○か、どれが×か・・・。絶対に贈ってはいけない品物はどれか、考えてみましたか?≪解答≫はこのコラムの最後にあります。まず、≪解説≫を確認してから解説の文章を読み進めてください。

■解説■
詳しい解説の前に、先に「解答」(結論)を述べましょう。答えは①× ②× ③× ③× ④× ⑤× ⑥×です。つまり、これらの品物はすべて「贈り物」としては相応しくないものです。②のお菓子の詰め合わせセットは、品物がダメなのではなく、渡すときの言葉に要注意です。後で詳しく解説します。

まず、最も注意しなければならない品物は③と⑤です。ポイントは「時計」です。掛け時計、置時計、目覚まし時計など、中国ではこのような「時計」を送るということは厳禁です。「時計」は中国語で「鐘」(zhong)と発音します。掛け時計は「掛鐘」(kua zhong)、置時計は「坐鐘」(zuo zhong)、目覚まし時計は「閙鐘」(nao zhong)と言います。

「時計」の「鐘」(zhong)という文字の発音が、「終」(zhong)という文字の発音と同じです。「時計」を送るということは、「終了」、「おしまい」を連想させます。つまり、「私たちの関係をこれで終わりにしましょう」という意味です。大げさに言うと「絶縁状」を叩きつける行為、「絶交宣言」なのです。

また、「時計を送る」という意味の「送鐘」(song zhong)という言葉は、まったく同じ発音に「送終」(song zhong)という言葉を連想させ、この言葉の意味は「親の死に水をとる」、「死者を見送る」、「死者を弔う」という意味になります。例えば、皆さんの家族や友人の結婚式に黒いネクタイをして来た人がいたら、皆さんはどう思うでしょうか?「縁起でもない」、「なんて失礼な人なんだ」と思うでしょう。中国人に「時計」を送るということは、これと同じような感覚です。不吉なことを連想させる常識はずれの行為なのです。

選択肢には「会社設立30周年記念」の置時計とか、「キャラクターデザイン」の目覚まし時計とありますが、これらはあまり問題ではありません。会社のノベルティグッツでもキャラクターデザインであってもそうでなくても、「時計」は送ってはいけない品物です。品物がどんなにりっぱでも、希少価値のあるものでも「時計」は贈ってはいけない品物なのです。


発音の音繋がりで①の「傘」や④の「扇子」も避けたほうがいい品物です。中国語の発音では「雨傘」(yusan)、「扇子」(shanzi)と言います。これらの言葉は、中国語の「解散」(jiesan)、「離散」(lisan)の「散」(san)という言葉を連想させます。つまり、「散らばる」、「ばらばらになる」、「別れ別れになる」という意味。「関係が壊れる」、「縁が遠のく」というマイナスイメージを連想させる言葉なのです。日本でも結婚式では「終わり」と言わずに「お開き」と言ったり、「終わる」や「分かれる」といった言葉を使わないように注意を払います。「時計」「傘」「扇子」などは贈り物としては相応しくない品物なのです。

選択肢には日本的な図柄、伝統工芸、職人が作った、日本ブランドといった説明がありますが、これらは特に意味がありません。「傘」と「扇子」という品物が送ってはいけない品物なのです。

②の「お菓子」について、⑥の「緑の帽子」については次回のコラムで解説します。

To be continued



 

 

【答え】①× ②× ③× ④× ⑤× ⑥×


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