中国人理解/異文化理解

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アジアビジネス成功の秘訣は「三本主義」<その1> 

2014-01-06 | ■海外市場開拓セミナー

今回のコラムで取り上げるテーマは「三本主義」です。これはアジアビジネスを成功に導くための基本姿勢として、台湾人の企業経営者がよく使う言葉です。「三本主義」とは、「本人主義」、「本土主義」、「本領主義」の3つを指します。

1911年の辛亥革命で孫文が唱えたスローガンを「三民主義」と言います。これは「民族」、「民権」、「民生」とういう革命の3つの基本原則です。ここで紹介するのは「三民主義」ではなく、「三本主義」です。これは政治やイデオロギーの話ではありません。あくまでもビジネスの現場での話しとしてご覧いただきたいと思います。

台湾人経営者が唱える「三本主義」に我々日本人も学ぶべき点があるのではないかと思います。「三本主義」をひと言で表現すると、「経営者自らが、現場の最前線に立ち、徹底的に強みを主張すること」です。話を聞かせてくれた台湾人総経理は、「中国でビジネスを成功せさるためにはこれがすべてだ」と力説。その姿がたいへん印象的でした。

■「本人主義」とは・・・

まず、第一に「本人主義」とは、「経営者自らが率先してビジネスの陣頭指揮をとるべき」という考え方です。つまり、これはビジネスを「人任せにしない」ということです。経営者自らが現場で陣頭指揮をとり、スピーディーな情報収集と情報分析を行い、その場で判断し、その場で意思決定を行うことが重要です。変化に対してフレキシブルに対応していくためには、やはり経営者自らが現場に立つことが必要なのです。

責任者自らが現場に立てないケースもあるでしょう。その場合、現場責任者に「権限」がきちんと与えられているかいう点がポイントです。現場の責任者が「決定権」を持ち、それぞれの現場できちんとこの「決定権」が行使できる体制を作ることが必要です。台湾人経営者はこう考えます。

■責任者は誰・・・?

中国で日本企業誘致に携わる地方政府担当者からよくこんな話を聞きました。「日本企業は顔が見えない」、「誰が意思決定者なのかよくわからない」、「現場の責任者が決定権を持たされていないようだ」といったコメント。中国側から見ると、「意思決定ができる責任者がいない」というのはたいへん不思議な光景に映るのでしょう。組織で動く日本企業の実態を知らない中国人には「本当にビジネスをやる気があるの?」とも映るようです。

もちろん、最終的に意思決定をするのは「社長」です。しかし、日本企業の場合(特に大企業では)、社長は意思決定が済んだあとの「調印式」に儀礼的に現場に行くだけというケースもあります。さらに、調査から準備へ、法人立ち上げから工場の建設へ、実務レベルが下から順番に現地にやってくるというケースも奇異に映るようです。

日本の会社の場合、会社として方針決定に到るまで社内での根回しやスタッフ間の十分な意識の共有が必要であり、何度も稟議を重ねます。このように意思決定には一定のプロセスが必要で、一歩ずつ手続きを踏んで「組織」として意思決定がなされることが特徴です。

しかし、これが、日本企業が海外でビジネス展開をする際にブレーキにもなっています。台湾企業の場合、もし経営者本人が現場で陣頭指揮をとれない場合、だれに「権限」があるのかが明確にされます。経営者に代わって全権を委任される経営者の代理人が現場に臨み、強いリーダーシップを発揮して判断と決定を行っていきます。これが台湾企業のスタイルなのです。

次回のコラムは「本土主義」を取り上げます。