櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

ロバート・ウィルソンのメサイア

2021-04-08 | アート・音楽・その他

かなり前になりますが、ロバート・ウィルソン演出の『メサイア(モーツァルト編曲版)』を映像で見た、その印象が、なかなか消えません。

ウィルソン独特の美術とドラマ構築によって、ヘンデルの荘重な宗教音楽が全く新しい次元を獲得し、一見すると非日常的な様式美さえ漂わせるのに、いつしか人間的な喜怒哀楽に落とし込まれ、リアルな出来事のように迫ってくる、それは魔術的な感じなのでした。そして、モーツァルトの編曲により、楽曲がきらきらとした光を帯びているのが、とてもよくわかりました。

演劇やダンスの挿入、重々しい存在感が一種のオペラのように流動し、人物の内面性がくっきりと感じられるように演出されている、その鮮やかさに目が覚めました。

演出という作業によって、この音楽から、神秘的なものが軽やかさとリズムに還元されるのは、実に爽快でした。

聖書、象徴、音楽、身体。それらが独特のスピード感で解体されては消えてゆく。歌手、ダンサー、コーラス、オーケストラ、それらすべてが精密で正確で、舞台という構造物とパフォーマンスという解体行為を共存させ、音そのものの生命をあらわにしてゆく。

いかにも荘厳な聖書劇の音楽なのに、ウィルソンの演出によって、美しく楽しげで、チャーミングなものが、次々に溢れ出てくるのです。

僕は録画で見ただけなのだから、本当のすべてが見えてるはずがありませんから、ナマの本番は、もっともっと、いろんなものに溢れているに違いない、僕は想像しているだけなのだ、そんな思いもありました。

ロバート・ウィルソンが演出する舞台をナマで観たのは『ヴォイツェック』が最後なのだけれど、そのときの驚異的な体験は脳みそに雷を注射されたみたいでした。

ウィルソンの舞台特有の造形感覚、人工的な時空、陶酔、グロテスクなまでの冷却感、、、。

それらが、人間の人間たる匂いをまざまざと感じさせるのだから、すごいことです。

新しいメサイア、ほんとうは劇場に行って感じたかったです。

 

 

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stage 櫻井郁也/十字舎房:公式Webサイト

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