櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

2006年オープンWS感想です!

2006-11-27 | レッスン・WSノート
東京ワークショップ&クラスショーイング「イノチ響くからだ2006」、本日無事終了しました。

恒例となった、この企画も徐々に内容が成長し、今年はダンス初心者も経験者も来場者全員がひとつのワークを共有し、初心に戻って自身の体と向かい合う、という雰囲気で、非常にしっかりしたワークショップになったように感じました。

今回のワークとして、重点的に行ったのは、「立つ」という作業。

踊る行為とは、己の立つまわりにこだまする万象と響き合おうとする行為だと思います。
そのためには、「ここに私がある」という確固たる自覚を体現する稽古を基盤としたいとの思いが、僕にはあります。
今日のワークショップでは、そんな気分を、何よりも共有したかったのです。

時の流れ、空間の広がりと「共に」在る「私」。

フロアに身を横たえ、ぬける限り力をぬいて、己の呼吸に耳を澄ます。
深い呼吸のなかで、とことん時間をかけて、立ち上がる。
立ち上がったならば、再び脱力し、また立ち上がる・・・。

繰り返しながら、己の肉体の所在を確認し、その存在をだまって受け止めてくれている大地を足元に感じ、
己の関わらんとする時空に心身を開け放っていく。

毎週土曜の基礎クラスでは必ず行うこの作業を、僕は「グラウンディング」と名付けて踊りの基本として毎日行っています。

ゆるんでは立つ。

おおざっぱに言ってしまえば、ただそれだけなんですが、
今日は、そのプロセスの中に、自然とそれぞれの人生が反映されています。

「これだ!」と思ったので、予定していた枝葉は思い切って捨て、今日は、まず、これに集中。
全編2時間半のうち、40分あまりをかけて、およそ30名の方々と行いました。

きわめて、シンプルな作業。
繰り返すうち、一人一人の顔が克明に見え、身体がある種の輝きを放ち始めています。

この風景、何よりも素晴らしかったです。

そして、この体験が今日の肉体の基盤となり、中盤のクラスショーイングでは、普段の練習をそのまま行っているにもかかわらず、ひとりひとりの心の内がダイレクトに伝わってくるような感動がありました。「練習」が「作品」に変貌する瞬間を垣間みた思いです。

基礎クラスのトレーニング・コンビネーション。呼吸法と身体操作法は、軽やかなユニゾンのダンスに変化しています。
のびやかな身体との会話が聞こえました。

オイリュトミー・クラスの舞い。それぞれの日常をかかえながら、ワークとして稽古し続けている形式の蓄積を感じ、ある意味、壮麗です。10年ちかく続けていられる方も、はじめての方も、ひたすら基礎技法を毎週稽古し、出来不出来を問わずに短い作品を一緒に仕上げて蓄積を待つ、精神性はそれぞれにあずけ、あえて形を・・・。というのが僕のレッスン法ですが、今日は「かたち」に「心」を注入してもらえた喜びを感じました。

その練習法をダンスに取り入れたのが、ダンスクラスの個人レッスンパート。
即興を基本としたダンスクラスは、毎週が互いの響き合いの場。この場からは、やはりダンサーとして己を見つめてみたい、という方が出てこられます。そんな方とは、今日のような機会があるシーズンになると個人セッションを行い、振付け作品を踊ってもらうという事を行っています。今回は2名いらっしゃったので、デュエットを。
ここで見えたのは、やはり集中力と「場をになう」という覚悟の美しさでした。緊張に、あえて身を投じる時、人は勇気をもちます。開け放たれた時空に投げ出された肉体を支えるのは、ここに至る蓄積と未来に一歩踏み出す勇気。今日は、それを共有できました。すがすがしかったです。

そして、ダンスクラスによる完全即興のアンサンブル。
動く事、活性化する事。複数の身体がゆらぎ、接触を繰り返しながら己の所在を見つめている。その姿は、即興でありながら、いえ、即興だからこそ、やはり日々の稽古のなかで「からだ自体が過ごした経過」を浮き彫りにして、迫力ある空気を出現させています。
毎週きまって2時間「自由に動く」という積み重ね。それは意識的に発見の場を持続する事です。己の姿にどん欲になります。「私は、どこから生まれ、どこに行こうとしているのか?」現代人の至上命題としての問いかけ。
そのベクトルを、宿し始めた肉体のエネルギーが感じられ、僕も今後の稽古に対して、あたらしいモチベーションと直感を抱くことができた感があります。

定期クラスのみなさん、素晴らしい時間をありがとうございました!

で、拍手をする間もなく、僕はドラを鳴らし、そのまま全員で一緒に踊ろうという呼びかけ・・・。
関係をつくるなら今。そういう衝動だったんです。

それを受け止めていただいて、客席の方はその位置から、さっきまで踊っていた方はその立ち位置のまま、後半40分あまりのインプロヴィゼーション・ワークに突入。

まず今現在の、そのままで身体を感じ、呼吸を感じ、ここまでの全ての体験を憶いながらスタンディング。そして一歩、また一歩を踏みしめつつ踊り場へ。
グラウンディング。
音。
声。

関わろうとする気持ち、それを追う腕、足。

呼吸。
体のカタチ、内部の律動。それを追う、気持ち、思考、熱・・・。

今日のクライマックスは、皆がそれぞれの動きを動き続け、エネルギーを振り絞ったあとの「大きなゆるみ」。
動きが静まった中で、呼吸音がハーモニーとなって空間に響いていた時間でした。

ここから何が始まるんだろう。
そんな予感のなか、黒人霊歌にのって、あたらしい身体のゆらぎが始まりました。

踊ろうとする以上に、すでに踊っている身体に気付く。
非常に動的なリラクセーションの風景を見つめながら、僕は踊りに対する畏敬の念を感じました。
ダンスとは、日々の営みに呼吸を与える智恵なんだろうな・・・、なんて思いつつ、音を止めて、今日最後のモーションに。

ゆっくりと胸を、両手を、大きく開いてしっかりと立つ。
体の重さをじっと感じながら、両手を胸に。
己の体を、己の手でホールド。心の中で、からだにあいさつをする。
とてもシンプルです。とても静かです。

やってよかったです。参加者の皆さん、ありがとうございました。
それから、残念ながら参加できなかった方からも複数、声援のメールをいただきました。ありがとうございます。
またぜひ、一緒に練習しましょう!!


クラス紹介&参加方法




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1 コメント

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楽しかったです! (anju)
2006-11-27 19:50:16
久しぶりに踊ってとてもスッキリしました。
即興は苦手だな~と思っていたのですが、
場の雰囲気や流れで自然に入っていくことが出来ました。
「踊ろうとする以上に、すでに踊っている身体」というのは、
今回、確かに感じることが出来ました。
ありがとうございました
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