安倍首相は、成長戦略の柱の一つに「女性の活躍」を掲げている。女性の能力をもっと生かし、経済の活性化を図るのが狙いだ。
首相は、その具体策として、全上場企業が女性の役員を最低1人は登用するよう経団連などに協力を求めた。女性の経営参画が、会社の成長にも資するという問題意識がある。
「言うは易(やす)く行うは難し」である。日本では、女性の管理職登用が進んでいない。民間企業と公務員の管理職以上の女性は、米仏英各国など先進諸国では40%前後なのに対し、日本では約12%と大きく差がついている。
このままでは、社会のあらゆる分野の指導的地位において女性が占める割合を「2020年までに少なくとも30%程度」とする政府の目標を達成するのは難しい。
注目されるのは、政府の要請に応じた各証券取引所の動きだ。上場企業に提出を義務づけている「コーポレート・ガバナンス(企業統治)報告書」に女性の役員数を開示するよう促している。
男女雇用機会均等法の施行は1986年で、当時企業に採用された「均等法世代」と呼ばれる女性総合職も、幹部になっている。
女性役員には、外部の人材に頼るばかりではなく、生え抜きの女性社員を能力に応じて登用することが必要ではないか。
経済産業省と東京証券取引所は今年2月、女性が働き続けるための環境整備など人材活用を積極的に進めている花王や東レなど上場企業を選定し、発表した。「なでしこ銘柄」と呼んでいる。
投資家が、人材を生かす経営管理能力や環境変化への適応力を評価する目安になるという。
この取り組みは、安倍内閣が野田内閣時代の有識者会議の提言を引き継ぎ、証券取引所に働きかけて実現した。女性活用は、どの政権にも共通する課題と言える。
首相は先月、育児休業を3年まで取得できるようにすることを経済界に要請した。現行の育児・介護休業法では原則1年、最長1年6か月となっているが、企業側に自主的な対応を求めたものだ。
働く女性の選択の幅は広がる。育児と仕事との両立を支える道を開く一つの方法だろう。だが、3年の育休で、企業負担は増し、女性にとってもキャリアでのマイナスや所得減への懸念がある。こうした課題をどう乗り越えるか。
需要の多い0~2歳児の保育施設の拡充など、待機児童対策もしっかり進めたい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます