ひ鳥ごと

Tweetとは、鳥のさえずりのことです。

メディアを操れば儲かるのか

2009-10-29 18:36:40 | コンピュータ
Business Media 誠より。

まず感想を言えば、前半(1ページ目)は興味深く、後半(2ページ目)は「この記者はテクノロジーを知らない」と思った、というところです。

膨大な新聞記事を集めて、株価データと突き合わせて特徴を抽出し、得られたデータを用いて今後の株価をコンピュータで予想するというのは、人工知能のテクノロジーに対してリテラシーのある人ならすぐ思いつけることで、「金と時間とやる気さえあれば」実現可能であるということは容易に想像できます。

さて、では株価が動く要因は何か。直接的には企業の動向(新規事業の立ち上げや、不祥事など)ですが、結局それを入手する手段はメディアということになります(最近はネットでプレスリリースを公開する企業も多いですが、プレスリリースに直接書かれない情報も含めて企業情報の入手先はメディアということになります)。つまり報道によって株価が左右されるということになります。だからこそ、上述のような「報道から株価を予想する」というシステムが成立するわけです。ということは、メディアが悪い情報を書かなければ(あるいは、大きく取り上げなければ)株価が大きく崩れることはない――ということになります。たとえば、株価の話ではありませんが、小泉内閣の支持率が小泉首相の在任中に大きく下がらなかったのは、飯島秘書官によるメディア対策がうまくいっていたからだ、といわれています。

「メディアを操れば儲かるのか?」と聞かれれば、たぶん答えはYesでしょう。もちろん成功すればの話ですが。記事によれば、「新興ファンド自身がPR(広報)のコンサルタントを雇い、機動的に記者を誘導する」ということなので、メディア操作の成否は上述の分析・予想システムの精度ではなく、このコンサルタントの腕にかかっているということになるはずです。

この記事の残念なところは、「記者をなめるな」「賢明な読者ならお気づきだと思うが~」とテクノロジーに対して詳細な検討をせずに感情的に斬って捨てているところでしょう。こういったシステムのバックグラウンドとなるテクノロジーに対するリテラシーがないなら、下手に取り上げて自身の浅さを露呈するのではなく、きちんと勉強してからレポートするか(速報記事ではないのですからそれくらいの時間はあるでしょう)、あえて取り上げない勇気も必要だと思います。