ひ鳥ごと

Tweetとは、鳥のさえずりのことです。

おかしなPASMO

2008-10-27 21:02:02 | 鉄道
PASMOのサービスが始まって1年半が過ぎました。
同時にSuicaとの相互利用も始まり、Suica/PASMOで連絡定期を作れるようになるなど、便利になりました。

しかし、先日京王線で人身事故があってダイヤが乱れた際に振替輸送を利用して、
それがきっかけでICカード乗車券のトラブルに巻き込まれてしまいました。

私はモバイルSuicaにJRと京王線との連絡定期券を入れており、この日も利用していたのですが、
事故により京王線を定時通りに利用できる見込みがないので振替乗車票を改札でもらいました。
その際に出場処理をし忘れてしまい、次に井の頭線の駅で入場しようとした際に自動改札で引っかかってしまったのです。
有人窓口にその旨申し出ると、「ここでは処理を行えないのでJRの駅で処理してもらってください」と連絡票を渡されました。

なぜ処理できないのか。
それは、京王の駅改札窓口にあるICカード乗車券の処理装置がカード型のみにしか対応していないからです。

鉄道の話ではないですが、昔Edyが普及しだした頃(かつ、おサイフケータイが今ほど普及していなかった頃)に、
一部のEdy取り扱い店舗に設置されていたチャージ機はカードタイプのみに対応するものでした。
スロットにカードを挿入し、現金を投入すると、バリュー(通貨価値)が積み増されたカードが返却されるというものです。
おサイフケータイの普及により、このチャージ機は非カード型にも対応できるタイプ(リーダ/ライタに乗せるだけ)に
置き換えられ、カード挿入タイプは今では見かけることはありません。

さて、PASMOの登場は2007年の3月です。一方、モバイルSuicaのサービスインは2006年の1月。
それぞれのサービスのプレスリリースを探してみると、モバイルSuicaについては2003年12月に
フィールド試験についてのプレスリリースが出ています。
一方PASMOは、2003年7月28日に各事業者から発表されたプレスリリースが最古のものとなっていますが、
この時点でPASMOを運営する(株)パスモは存在しません。
運営会社については翌年2004年1月30日のプレスリリースでようやくその存在が登場します。
このように、PASMOの企画とモバイルSuicaの開発がほぼ同時期に行われており、
PASMOがサービスインした暁にはモバイルSuicaと相互利用されることも当然視野に入っていたはずと考えられます。

なのに。京王を始め、一部のPASMO導入事業者の駅務機器はモバイルSuicaを扱えない。
具体的には、先述した以前の型のEdyチャージ機のようにカードをスロットに挿入するタイプの機器となっているのです。

SuicaやPASMOは非接触式ICカードです。
取り扱いにあたってはカードにリーダ/ライタを接触させることなく利用できます。
現実に、それが売りの一つでもあります。
例えば、磁気券だと改札機に乗車券を投入しなければいけないので、慣れない人の場合手間取る可能性がありますが、
「カードをかざすだけ」でいいのなら操作の難易度はずっと下がります。

実はこの「かざすだけ」は事業者側にもメリットがあります。
磁気券のように「投入」しなければいけない機械では、
機械の内部に券を受け入れたり排出したりする機構を設けなければいけません。
これにはモータやベルトといった部品を使いますが、これら可動部品はどうしても摩耗という事態から逃れられません。
これらの部品の交換や調整には当然コストがかかります。
また、券詰まりが起きる可能性もあり、それらのトラブル対応にもやはりコストがかかります。
一方かざすだけでよいのなら、カードの処理に必要な部品はアンテナ(と回路)のみとなります。
これは可動部品ではないので摩耗する心配はなく、モータなどに比べれば寿命はずっと延びます。
券詰まりの心配もありません。

窓口にあるカード処理機にも同じことがいえます。ようやく今回の話の本題です。
PASMOは現在カードタイプのみとなっていますが、非接触ICカードなので取扱機器に
必ずしも「挿入」操作をする必要はありません。
改札機と同じように「かざすだけ」の機械を設計することもできたはずです。
現実にJRでは改札の有人窓口に設置してあるICカード処理機は「乗せるだけ」のタイプとなっています。
なのに、PASMOの事業者では改札窓口にカード挿入タイプのICカード処理機を導入している。
これは以下の点でマイナスだと考えられます。
・機構の複雑化によるコスト高(導入コスト・メンテナンスコスト)
・取り扱いできない乗車券(モバイルSuicaなど)の処理を他社に依頼するための連絡票(=紙)が必要になる
・連絡票を渡して乗客を他社窓口に誘導することによる、乗客の不便
特に3つめについては、便利になるはずのICカード相互利用サービスで逆に不便になるという皮肉を生んでいます。

PASMOはサービスが始まってまだ2年もたっていないので、
PASMO事業者で導入したICカード関係の機器が更新されるのはかなり先の話になると思います。
しかし、その更新においては、乗客に負担をかけないようなシステムになるよう是非期待したいものです。

以上、今月の月記でした(w