スローな生活 in富良野

富良野の陶芸家 恒枝直豆 
楽葉窯のブログです。
備前の土を富良野で焼きながら
マイペースに過ごしています。

手を盗む

2007-11-24 | 日記
シリーズの二週目「手を盗む」です。

「おまえ、今日は先生な」と言われたのは、備前焼作家の弟子を始めて1週間くらいたった日のことでした。もちろん陶芸を始めて1週間。それまで陶芸教室や体験などには行った経験も無く、要するに素人ですね。そんな私がキョトンをしているのを見て、師は「今日は体験教室の人が20人くらい来るから、お前も先生だからな」と言って支度を始めました。慌ててついていきましたが、頭の中は真っ白。もうどうなってしまのでしょう。
この日の私は伝言ゲーム。生徒さんから問われたことを師に伝え、師から聞いたことを生徒さんに伝えるような感じだったことを覚えています。
陶芸家の弟子の仕事は、基本的には「整理整頓」です。地面の下から掘られた粘土の原土を粘土に調整して整理したり、粘土で師が作れるように準備したり、作ったものを棚に順番に整理したり・・・・挙げていると、きりが無いですね。
その仕事の中で、一番重要なのは「手を盗む」ことです。弟子をしていても、仕事の中では、師から「作る」ことについて教えてもらうことはありません。師が作陶している時に、斜め後ろから師を見て「ああして作るんだ」と手順を覚えます。夕方まで仕事をして、そこから自分の練習に励みますが、その時に、昼に覚えたことを自分の手で試してみて、上手くいくかを覚えていきます。「教えてもらう」と、その作り方以上には上手くなれないからです。
陶芸家として独立した今では、なかなか友人の陶芸家の仕事場に行けなくなりました。仕事場を見たり粘土を見たり、作品を見たりしただけでも、その人の仕事ぶりが分かってしまいます。その人と同じものを作る訳ではないのですが、自分が同じように見られている時のことを考えると、何だか悪い気がします。

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