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「考える一族」

2008年02月10日 | 読んだり


副題 「カシオ四兄弟・先端技術の航跡」


内橋克人    昭和63年(60年初出)  新潮文庫

ブックオフの100円コーナー本がマイヒット本になること。
それは宝くじがあたるより嬉しいこと。
宝くじ買ったことはないが。

[ちょいすじ] トランジスターがアメリカで生まれたころ、日本のある町工場で一台の計算機が生まれようとしていた。
言わずと知れた、「カシオ」。
それがまだ経営も危ういような町工場であったところから、『言わずと知れた…』と形容されるほどの天下の「カシオ」に至るまでの航跡が、四兄弟それぞれの個性が存分に絡み合って語られる。特に、次男・樫尾俊雄氏の在り方は、今、巷で言われる本当の「考える力」とは何か?という事を突き付けてくる…


いやー、よくできたドラマシナリオでもここまでうまいこと個性が際立つだろうか?
ってほど、団子四兄弟ならぬ樫尾四兄弟の見事な各々の演じ分けよ!…

その発想、創造性は神がかりなほどの次男・俊雄。
俊雄の発想を旋盤一つで「物」として形を成してしまう長男・忠雄。
抜群の外交能力をもって営業する三男・和雄。
プロの設計者として大量生産技術を担う末っ子・幸雄。

大正12年に、その両親が着の身着のまま四国から東京を目指し、
辛苦しながらも一家庭を築いていった軌跡にも触れ、
大企業となった後、ゴルフに耽ってしまった四兄弟を襲った「トランジスター式」の追い上げ等々、
ホームドラマであり、戦前戦後史であり、ビジネス書であり、
245頁、読みどころみっしり。