りゅういちの心象風景現像所

これでもきままな日記のつもり

自署

2024-07-11 17:30:10 |  日 記 

自分で自分の名前を書くということ。
この、ありふれた行為を自分でできなくなる。そういう事態が、もし起こってしまったら。
いっそ、そういう事態を想像することは無意味であると言い切れたら、それはそれで楽なのかもしれない。が、世の中、そんなにあっさりと「自分」を諦めさせてはくれないものらしい。
また、他ならぬ自分自身が、諦めることを許さないらしい。

やらなきゃ、とか、そういうことを思うよりも前に書こうとする。名前を書くという行為が、生命力と直結していることをまざまざと見せつけられると、文字はただの文字とは思えなくなる。
文章なんか書けなくても、焦ることなんてなにもない人はいる。だが、名前を書けなくなるとなると、ペンを持つ手に生命の切実さが宿る。自分の名前のカタチを思い出そうとする。インクの線は、たとえたどたどしくとも。
何度か書き直す内に、自分の名前のあるべき姿を思い出させるレベルで文字を形成する。
たが、本人が満足していない。思ったようには書けていないからだ。
もともと、力強く、きれいな字を書く人だった。
今できる努力のすべてで、この程度か、という落胆が伝わってくるが、こんなんじゃない!という思いもあからさまに伝わってくる。
何日か経つと、文字はだいぶカタチを成してきた。
そのうち、字と字の間隔が気になってくる。バランスの取れた文字列が現れると、もはやそれは単なる文字ではない。

僕がお父さんを心の底から尊敬できる理由が、またひとつ増えた。
その署名は、紛れもなく、ご本人の署名。
お見事です。

まだまだ、満足のいく出来ではないらしいけれど、いやいや。そこはゆっくりでよいでしょう。
焦らず、ゆっくり、かつての力強い、美しい筆跡を取り戻していきましょう。


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