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御伽噺ロジック

コードギアス中心に色々やらかします。

ぬくもりの証 2

2007-04-08 19:24:53 | ぬくもりの証 第1部

「・・・髪、濡れてる。新しいタオルで拭けよ。」

まだ水分を含んだ彼の髪をツンツンと軽く引っ張って、濡れたタオルをとりあげる。
新しいタオルを取り出して、ベットに腰掛けたスザクの足の間に立って、やさしくタオルドライをしてやる。

「ちょっ、ルル。自分でできるよ。」
「いいから。やらせろ。」
「うーーー。」

少し、照れたように俯くスザクが可愛くて、抱き締めるように髪を拭う。



静かな沈黙、微かに感じる互いのぬくもり。



その静寂を破ったのは、スザクの呟くだった。
「・・・ルルーシュは、責めないんだね。」
「何をだ。」
「僕は父を殺した。」

タオルで隠れて、スザクの表情は見えないけれど、思いつめた顔をしているのだろう。

「ああ、そう聞いた。」
「どうして、責めないの?」

タオルを取り、スザクの髪を指で梳きながら、整えてやる。

「責める?どうしてだ?」
「俺は父さんを殺したんだ!!」

履き捨てるように言われた言葉。悲鳴のように。




「・・・・・・お前が、あの時、 枢木首相を殺した理由。なんとなく分かる。」
「え?」
「止めたかったんだろ。護りたかったんだろ。たくさんの命を。」


あのとき、徹底抗戦を唱えていた枢木首相。
彼があのまま、その姿勢を貫けば、民間人にも、もっと大勢の犠牲がでた。
そして、自分とナナリーも。見せしめとして、いつ殺されてもおかしくないことを肌で知っていた。



「・・・・。」
「少なくとも、お前の行動で救われた命は、多くある。俺もそのひとつ。」

バッと顔をあげ、目を見開いて、俺を見つめるスザクに苦笑しながら、
まだ少し乱れている髪を直してやる。

「あの状況だ。予想くらいしてたさ。」
「ごめん。」

自分の父が幼い姉妹にしようとしていたことを思い出し、
顔を歪めるスザクに、ただ優しく微笑む。


「謝るな。仕方のないことだ。
お前はお前の行動を後悔しているのかもしれないけど。
俺はお前の行動に感謝している。お前のおかげでナナリーは生きてる。」

「ルルーシュ・・・。」

見つめてくるスザクに微笑む。

「ありがとう。スザク。それと、ごめん。」
「え?」
「7年前に、気づいてやれなかった。あのとき。気付くべきだったんだ。
あんなに傍にいたのに。ごめん。スザク。」


7年前、父を失い泣くスザクを抱きしめたときに、
ナナリーと3人で死体だらけの道を歩きながら、泣いたスザクを見た時に。
もっと早く、あのときに気付いてやれば、スザクの心はここまで傷つかなかったのではないだろうか。



泣きそうになる。スザクも顔を歪めて、目の前にある俺の腰を引き寄せる。
胸の辺りにスザクの額が当たる。


「・・・・・・・ありがと・・・。」

微かに聞こえた。泣きそうなその声に、目の前の少年から青年に変わりかけている、けれど、今は幼い子どものような彼をぎゅっと抱きしめた。



抱き締められたまま、スザクはポツリポツリと語りだした。
淡々と語られる、あの時の彼、アレからの彼。今の彼。
小さく相槌をしながら、自分の胸に縋りつく彼の背をただ、優しく撫でた。



泣けばいい。7年前にできなかったことをしよう。
君の心のままに、叫んで。心に溜め込んだままの、誰にも言えなかった。思いを。
今なら、受けとめられるから。
独りじゃないと抱き締めるから。



全てを吐き出した彼は、ひどく弱弱しくて、傷だらけの心をむき出しにしていた。
長く語ったスザクは最後に、俺に回した腕の力を強めながら、懇願した。


「今夜は、ひとりで耐えられそうにないんだ。そばにいて・・・・。」

答えなど、決まっている。

苦しそうに言葉を吐く唇に、そっと己の唇を重ねた。

「・・・そばにいる。」



重なる二人の影を、月だけが見てた。