御伽噺ロジック

コードギアス中心に色々やらかします。

ぬくもりの証 第2部 3

2007-05-18 21:36:57 | ぬくもりの証 第2部

初めて、その花束を受け取ったのは、5年前。


「届け物だ。ルルーシュ。」


相変わらずの傍若無人ぶりで、C.C.がルルーシュに花束を押し付ける。
ルルーシュは眉をしかめながら、渡された花束を見る。
C.C.と花。なんと奇妙な組み合わせ。彼女がわざわざこんなものを用意する
とは思わない。それに「届け物」だと、彼女は告げた。



「なんだ、これは。」
「ホワイトローズの花束だ。」
「そんなもの、見れば判る。これをどうしたと聞いている。
 届け物って誰からだ。」




「枢木スザク」


「!?」

「アイツがお前の墓に置いて行ったものだ。」
「・・・・・・。」
「『あなたを愛しています』か。」
「スザクは、花言葉なんて知らない。」
「そうでもないようだ。ナナリーには、アイリスの花「やさしい心」。
 彼女を現しているようだし。それは、お前へのメッセージだよ。」
「・・・・・・そんなもの・・・。」

顔を歪めるルルーシュに、c.c.は溜め息をついて、ルルーシュに背を向ける。

「まあ、花に罪はない。ちゃんと生けて飾っておけ。」

(恋も愛も、捨てたんだ。破壊のためには、心が邪魔だったから。
 なのに、どうして、胸が痛いのだろう。
 どうして、彼の想いを信じてしまいたいなんて、想うんだろう。
 彼はユフィを選んだのに・・・・。)


それから、スザクが日本に来るたびに届けられるホワイトローズ。
それを見るたび、捨てたはずの心が揺れた。





「ほら、届け物だ。」


変わらないホワイトローズ。




その花片に触れながら、ルルーシュの瞳が揺れる。

「毎度毎度、律儀なことだな。」

TVでユフィの傍にいるスザクを確認するたびに、自分たちのことなど、
欠片も考えていないように思えるのに、スザクは日本に来るたびに、
この花を置いてゆく。誰も眠っていないただの石の上に。


(忘れていない。愛してる。)


そう、想いの籠められた花束を切なく、苦しそうな表情のルルーシュは
抱き締める。



「私達のことなど、いい加減忘れてしまえばいいのに・・・・・。」



ここまで自分のことで苦しそうなルルーシュを見るのは、この花束を見るときだけ。

C.C.は、それを見るたび、切なくなる。

「知っているか?ルルーシュ。
 生きるということは、日々変化することだ。人も思いも、良くも悪くも変わる。
 そんな中で、たった一人の人間を想い続けることなど、不可能なんだよ。
 でも、それでも、たった一人を想い続けることができるとすれば、そいつの心は 病んでいる。」

花束から、顔を上げC.C.を見つめるルルーシュに、C.C.は苦笑する。


「病んだ心にしか、たった一人を想い続けることはできないんだよ。」


寂しく笑って、C.C.は部屋を後にする。






一人残されたルルーシュは、腕の中の花束に視線を落とす。






「それなら・・・・。それなら・・・・、俺の心も病んでいるのかもしれないな・・・・・。」






顔を埋めるように、ホワイトローズを抱き締める。





閉じた瞼に映るのは、あの日の彼。


もう、誰も愛せない。心は、あの日の彼に捕らわれたままだから。