悲しい記憶の多い故郷。侵した罪を突きつけられる場所。
それでも、君と過ごした優しい時間が確かにあった場所に戻ってきた。
「ただいま、ルルーシュ、ナナリー」
隠すように作られた墓の前で、ホワイトローズとアイリスの2つ花束とを抱えた青年は、淡く微笑んだ。
ルルーシュにはホワイトローズをナナリーにはアイリスを。
2人の墓に花を供えて、そっと、目を伏せて、二人の安らかな眠りを祈る。
日本に戻るたびに、二人の墓へ行くのが、この5年間の習慣だった。
「ただいま」
そう、二人の墓に告げる。スザクに帰る場所など、もうない。
帰りたいと願う場所は、5年前に失くした。守りたくて、守れる力を手に入れて、
ずっとあの優しい二人を守っていくのだと、決めていたのに。
結局、自分は何もできず、何も知らず、彼女たちを失った。
ただ、泣くことしかできなかった。
守りたかった人は、もういないのに、俺は生きてる。
ユーフェミア皇女の騎士として、世界を変えるために、自分に出来ることを探していた。
そして、ここにくるたびに、自分の行動を二人に報告する。
(ホントはね?君達に優しい世界をあげたかったんだ。
もう遅いかもしれないけど、それでも、君達にあげたかったんだ。
ねぇ、俺の行動で世界は少しでも君達が願ったものに変わってる?)
そっと、心の中で問いかける。何も答えの帰ってこない問いに、
自分の行動は、ただの自己満足なのだろうと、ここに戻ってくるたび、
そう思ってしまう。
それでも、そうしなければ、自分の心は精神は壊れてしまう気がした。
二人を支えに、いい訳にして、自分を正当化する。なんて、醜い。
きっと、彼女なら、「俺たちを理由にするな。」と怒るだろう。それとも、「それでいいなら、好きにしろ」
と呆れるだろうか。
軽蔑されても、いい。罵られたっていい。願いがあるんだ。
それが叶うなら、どれだけ自分が醜いことをしてたって構わない。
「ねえ、ルルーシュ。会いたいよ。恨み言でも、何でもいいから、
俺に会いに来て言ってよ。そしたら、俺も言うから。
君に、言わなきゃいけないことがあるんだ。」
ホワイトローズに籠めた俺の思い。それに気づいたなら、幻でも、幽霊でもいい。姿を見せて。
そしたら、君に言葉にして伝えるから。
『君を愛してるんだ』って。