あけましておめでとうございます。
昨年は、ほとんど更新のない拙ブログに気長にお付き合いくださり、ありがとうございました。
今年も筆の(キーボードの??)向くまま 、気の向くままにフランス語&ベルについて綴ってまいりたいと存じます。
今年も、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、案の定、年を越してしまった「花の女神」の続きでございます。
(実は他にも、2年越しでまだ完結していないネタもあるのですが)
OT:「花の女神の蜜をすこしくださいますか?」(集英社文庫第3巻)
Voudriez-vous bien me donner un peu du miel de la Déesse des Fleurs ?
Me donneriez-vous un peu de votre nectar ?
何故、Kana版には 「花の女神の」 de la Déesse des Fleurs が入っていないのでしょうか?
フランス語には、こんな鉄則があります。
文を作る時、同じ単語や表現を繰り返してはいけない。
同じ単語や表現を繰り返して使うとレベルの低い文章と受け取られてしまうそうで、「教養がない」と見なされるのだそうです。そこで、繰り返しを避けるため、代名詞を使ったり表現を変えたりと、いろいろな工夫をします。
また、文の情報や要素として必要十分な条件を満たしている場合、簡潔で短いほうが良い文と見なされるそうです。
そして、フランス語は音の響きが美しい…といわれますが、音の面でもあまり繰り返しは好まれないようです。
ここら辺の判断はネイティブの方でも意見が分かれるので、外国人には難しいところですが…
テクストの比較に戻りましょう。
『大事典版』は 「 花の女神の蜜をすこしくださいますか?」 という日本語のテクストのみを抜き出して訳したものであり、前後関係は考慮されていません。これに対して、『Kana版』はストーリーの中にある一文である…という点に違いがあります。
今回の台詞の場面は、父・ジャルジェ将軍の婿取り舞踏会の企画に腹を立てたオスカル・フランソワが男装して現れ ( いつも男装ですけれど… …婿取りなので父上&周囲としてはドレス姿を期待しておられたのですよね ) 、ジェローデル中佐をはじめとした求婚者たちを尻目に、次々にご令嬢方を誘惑しまくるというところ。
ご令嬢のお一人にオスカル・フランソワが甘く語りかけます。
オスカル・フランソワ「お名まえは?」
ご令嬢 「フローラ」
オスカル・フランソワ「おお! フローラ(花の女神)」
「 花の女神の蜜をすこしくださいますか?」
OT(オリジナル・テクスト):集英社文庫第3巻
Kana版では、これは次のように訳されています。
Oscar François : Comment vous applez-vous?
Mademoiselle : Flora.
Oscar François : Oh! Flora, déesse des Fleurs !
Me donneriez-vous un peu de votre nectar ?
日本語のオリジナル・テクストでは、【フローラ(花の女神)】 と記述されていますが、Kana版では Flora, déesse des Fleurs と、【花の女神】 déesse des Fleurs を発話させています。
フランス語の表現としてはこの方が自然なのだろうと思います。同時に、Flora はフランス語では存在しない名前である可能性が高いようです。
英語では花の女神を Flora といい、同時に Flora という女性名が存在します。フランス語では Flore となりますが、これは花の女神 Flore を指すほかには一般名詞 flore として植物誌や植物分布など意味する単語としか使われていないようです。
参照:http://fr.wikipedia.org/wiki/Flore
18世紀にこの限りであったかは不明ですが、花の女神 Flore / Flora と同じ名前の女性である、ということを説明するには、Flora, déesse des Fleurs と明確に発話することが必要であるようです。
そして、ここで 【 フランス語の鉄則 】 が登場します。
déesse des Fleurs と言ってしまったら、次の台詞で同じ言葉 déesse des Fleurs を繰り返すことはできません。
筆者のような無知な外国人であればルール無視をやらかしても仕方ないでしょうが、貴族の中でもとりわけ教養の高いオスカル・フランソワの使うフランス語では、たとえ会話であっても繰り返しはできないと考えられます。
ことに、しゃれた会話テクを使ってご令嬢をメロメロにさせておられる場面では
こんな理由から、Kana版では
le nectar de déesse des Fleurs ではなく、
votre nectar あなたの神酒
という表現を使っていると考えられます。
この、「文を作る時、同じ単語や表現を繰り返してはいけない。」 という鉄則、きちんと基礎から学習しておられる方には常識かもしれませんが、筆者は一昨年、作文を勉強するまで全く知りませんでした。
「代名詞なんて使えないし聞き取れないし自分には必要ない」と思っておりましたので、その時まで無視し続けてきたのですが、作文を試みようとするとどうしても必要になることを痛感し、しぶしぶ覚え始めました。…しかし、未だに使いこなせておりません…
深いですね♪楽しい♪
少しでもフランス語を勉強していてよかった、
ベルばらを知っていてよかった、
このブログに出会えててよかったと思える
年明けになりました☆
今年もよろしくお願いいたします。
Oさまのお言葉について考えるのは、とりわけ楽しいですね
2年越しなのにまだ完結していないあたり、今年のペースもすでに見えているような気がしますが…
まだまだフランス語もベルも分からないことがたくさんあります。少しずつでも頑張って勉強して書いていこうと思います。
今年もどうぞよろしくおねがいいたします!
今年も、よろしくお願いいたします。
フランス語で、Floraが女性名として一般的には使われていないとは考えたこともありませんでした!
言語というものは面白いものですね!
>文を作る時、同じ単語や表現を繰り返してはいけない。
これは、フランス語だけでなくどの言語でも当てはまる原則だと思うのですが、僕の場合は、日本語でも実行できないので、困っています。(苦笑)
lapisさまの格調が高く魅力的な文章を拝読して、自分も見習わないと…といつも思っております。
私は感性でものを見たり考えたりする傾向が強いので、lapisさまの緻密で分析的な視点はとても参考になります。最近になってやっと言語や美術を「読み解く」面白さに目覚めたところです。
…まだまだ未熟者ですが…
「ブロガー検定」では【採点対象外】になりそうな私ですが、今後ともいろいろご教示くださいませ
かなりサボり気味のフランス語ではありますが、今年も細々でいいから続けていこうと思っていますので、よろしくお願いいたします。今年こそ準1級をとりたいとか、そういう野望が頭を掠めることもありますが、まずは、後退しないこと、完全に遠ざかってしまわないこと、興味を失わないことを目指します。
うさぎさまのサイト、いつも拝読させていただいておりますよ~
英検準1級、高得点での合格、おめでとうございます
行き当たりばったりの私は、うさぎさまの緻密な学習計画を見習わないと~と思ってはいるのですが、恥ずかしながらなかなかできません。でも、うさぎさまから豊富な学習情報をいただけること、とってもありがたく思っております
フランス語&英語、目標を持って、たとえ少しずつでも学び続けていきたいですね。
今年も共に頑張りましょう
新年のご挨拶もしないまま、1月も2週間ほど過ぎてしまい、失礼をいたしました。
先日、やっと年末からの記事を読ませていただき、その内容の格調高さにうっとりとしております。
←ちなみに、子年のわたし、年女。
仏語を勉強していなかったり、全く無知であったりしても、興味深く立ち寄られている人々は多くいらっしゃると思いますよ!
知性に富んだ方々のコメントを拝読すると、仏語の(仏語も!)できない鈍才のわたくしなど、投稿するのは、場違いかなぁ・・・とも思うのですが、ただこのブログのファンであり、ベル・ファンである、という理由だけでも、書き込んでもいいのじゃない?と開き直っております。
でも・・・、仏語ならぬせめて母国語だけでもと思い、昨年、「美しい日本語を使いたい。」などと大風呂敷を広げた自分が、したいほど、今更ながら恥ずかしい!!
きちんとした場面においてでさえ、前言撤回したいと思う程の言葉遣いしかできていないようでーす。
でも、・・・club_3様を少しでも見習えたらなぁ・・と今年も夢見るmidoriです。
いつも遅レスで申し訳ございません
midoriさま、今年は年女でいらっしゃるのですね
よい年になりますよう、お祈りしております。
お正月ムードもあっという間に去り、新しい年が本格始動いたしましたね。
今年はついにベル新作アニメが公開されるのか
また、新たなグッズが登場するのか
…等々、ベル関連でどんな動きがあるのか、楽しみですね
行き当たりばったりで書き綴っているこのBlogも、ふと気づけば、3年目に突入いたしました。
去年はほとんど更新できなかったのですが、読んでいただけること、本当に嬉しく感じております。
フランス語をきっかけに再燃した私のベル愛ですが、ベルについて語り合える方々と出会えて、幸せです。
今年もBlog更新もレスもになってしまうかもしれませんが…こんなペースでもどうぞお許しくださいませね。
「美しい日本語」…大切ですね。
私もきちんとした日本語を話せるようになりたいと思っておりますが、なかなか出来ません。「見習う」などとおっしゃっていただくと、恐縮してしまいます。
Oさまのように、時には優雅に、時には凛々しく…そんなふうに自分の言葉を使いこなせたらいいですね。