東日本大震災 超巨大地震で土砂100万トンがプレート境界に!
2011年3月11日に東北地方の太平洋側を襲った東日本大震災から8年。海洋研究開発機構(JAMSTEC)などの国際共同チームは、地震発生にともなって、土砂など100万トンを超える有機物が日本海溝に流れ込んでいた事実を突き止めた。
巨大地震によって超深海へ流れ込んだ有機物の量を解析したのは、今回の研究が初めてで、海底環境に相当なインパクトを与えた可能性が高い。
日本海溝沿いの超深海を探査
英学術誌『サイエンティフィック・リポーツ』に2月7日付で掲載された論文によると、JAMSTECやオーストリア・インスブルック大学、ニューヨーク市立大学などのチームは、2012〜2016年にかけて6回にわたり、青森県から茨城県沖に南北にひろがる日本海溝沿いの超深海で、堆積物の採取や地形調査などを実施。
日本海溝は、北米プレートの下に太平洋プレートが沈み込んでできた水深7000メートル以上の溝状の地形で、2011年3月に起こった地震は、牡鹿半島から約130キロ離れた三陸沖の海底を震源として発生した。地震の規模を示すマグニチュードはM9.0で、国内観測史上最大であるとともに、世界を見回しても2004年のスマトラ島沖地震以来の規模で、1900年以降では4番目に大きな超巨大地震だった。
海盆にたまった堆積物を分析
有機炭素の循環とは?
グループによると、これは、ヒマラヤ山脈で生まれたガンジス川とブラマプトラ川が合流して1年間に海に運ぶ有機物量の4分の1以上が、たった1回の地震で超深海に流れ込んだことを意味している。
では超深海に運びこまれた有機物は、その先どこへ行くのか?炭素の循環システムや、海底の生物環境に与える影響については、今後の課題だが、インスブルック大学の地質学者によると、日本海溝のようなプレートの沈み込み帯では、地球内部に入り込んだ有機炭素が、火山の噴火で二酸化炭素として大気中に放出される可能性もあるという。
日本海溝は中心部分の水深が7400〜7700メートル、最も深い南端では8030メートルにもなる超深海だ。地球上で「超深海」と言われる水深6000メートル以上の海域は、海洋面積の2%しか占めておらず、月や火星を探査するより困難だと言われている。
日本も参加する国際的な深海探索プロジェクト(IODP)では、2020年に日本海溝での研究航海を実施し、海溝全域で堆積物を採取し、東北沖で過去に起きた巨大地震の歴史解明を目指すとともに、炭素循環のシステムの研究が進むと期待されている。