アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

明日から ”大将” ヴィジャイが大暴れ! 『マスター 先生が来る!』

2022-11-17 | インド映画

『RRR』フィーバーやら映画祭やらいろいろあったこの1ヶ月ですが、ようやくその熱い波も落ち着いてきました。と思っていたら、2022年はまだまだ終わらない。熱量がハンパではない作品が、寒さに向かうこの時期にやってきます。明日18日(金)公開の、タミル語映画界で”大将(ダラパティ)”と呼ばれているヴィジャイの主演作、『マスター 先生が来る!』(2021)です。以前、<IMW(インディアン・ムービー・ウィーク)2021パート2>で上映されたのですが、その後2022年が明けて、ハリウッド映画も含む2021年インド映画全興収で第4位、インド映画だけだと第3位になったことが判明したため、きちんと公開されるといいな、と思っていた作品です。ちょっと宣伝期間が短かったように思うのですが、このパワフル作品を見逃す手はありません。まずは映画の基本データからどうぞ。

『マスター 先生が来る!』 公式サイト
 2021年/インド/タミル語/179分/原題:Master
 監督・脚本:ローケーシュ・カナガラージ
 出演:ヴィジャイ、ヴィジャイ・セードゥパティ、マーラヴィカ・モーハナン、アルジュン・ダース、ナーサル
 配給:SPACEBOX
11月18日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

©️B4U Motion Pictures, ©️Seven Screen Studio, ©️X.B. Film Creators

映画は、ヴィジャイと共にもう一人の主人公を演じるヴィジャイ・セードゥパティが扮するバワーニの少年時代から始まります。時は2002年、舞台となるのはインド最南端のカンニャークマーリー(コモリン岬)から西北にすぐの町ナーガルコーイル(「ナーガ神の寺院」の意)。バワーニの父はトラック輸送業のライバルである3人に殺され、家も焼かれた上、バワーニは彼等の陰謀で少年院に入れられてありとあらゆる虐待を受けます。いじめ抜かれたバワーニはそれに耐え、やがて脱走すると3人の仇の前に現れて、自分の悪の才能を見せつけます。少年院に戻ってきたバワーニは、今やヒーローでした。こうしてトラック輸送業界の大物となったバワーニは、2019年に3人の仇を始末して、ナーガルコーイルのドンとなります。

©️B4U Motion Pictures, ©️Seven Screen Studio, ©️X.B. Film Creators

その頃チェンナイの名門大学では、学生会の会長選挙を実施するか否かで先生たちの意見が分かれていました。ほとんどの先生たちは混乱を恐れ、選挙に反対しますが、学生から絶大な信頼を寄せられている教授JD(ヴィジャイ)や、新任の女性教師チャールラタ(マーラヴィカ・モーハナン)は選挙を支持します。JDことジョン・ドゥライラージは正義感に燃える熱血教師なのですが、夕方以降はべろんべろんに酔っ払い、その間の記憶がなくなるというていたらくで、先生たちには眉をひそめられています。今回の学生会長選挙実施は、混乱が生じたらJDが大学を辞める、ということで何とか実施されたものの、開票時に大混乱が引き起こされてJDは大学から退くことに。JDは大学の創設者(ナーサル)に言われ、今度は少年院の教官として3ヶ月間赴任することになります。ところがその少年院は、バワーニの手下ダース(アルジュン・ダース)らが少年たちを支配下に置き、麻薬漬けにしている所でした。徐々にJDは少年院のからくりに気づき、ある兄弟が自殺に見せかけて殺された事件を契機にして、バワーニとの戦いを本格化させていきます...。

©️B4U Motion Pictures, ©️Seven Screen Studio, ©️X.B. Film Creators

主役はヴィジャイなのですが、オープニングのタイトルに「”大将” ヴィジャイ」と並んで「”タミル民の宝” ヴィジャイ・セードゥパティ」と出るように、ヴィジャイ・セードゥパティも主役級の扱いです。そしていくつかのシーンでは、同時刻にJDとバワーニがやっている行動が、交互に画面に登場してストーリーが進行していくという、表ヴィジャイと裏ヴィジャイが作り上げる映画になっているところがニクい作品です。表ヴィジャイの方のこれまでの出演作は、『サルカール 1票の革命』(2018)や『ビギル 勝利のホイッスル』(2019)のようにスーパーヒーロー型の主人公が活躍する話が多く、『ビギル』では二役をやって老け役にも挑戦しているものの、イメージが平面的になりがちでした。ところが今回は、ヴィジャイ演ずるJD役が単なるスーパーヒーローではなく、内面の葛藤や闇の部分も抱える弱さを持つ男として描かれた上、裏ヴィジャイ(ヴィジャイセードゥパティ様、すみません!)やアルジュン・ダースのお陰で作品自体にも陰影が付いて、見応え倍増となっています。

©️B4U Motion Pictures, ©️Seven Screen Studio, ©️X.B. Film Creators

ソング&ダンスシーンもそれを反映してか、弾ける音楽とダンス、これでもかの語彙パンチという従来のものとは異なる、面白い作詞作曲、そして振り付けがなされています。このあたり、ローケーシュ・カナガラージ監督の趣味なのかも知れません。何せ、ヒットした前作『囚人ディリ』(2019)では、まともな挿入歌と言えるものが全然なかったという映画作りをした監督なのですからね。これじゃ、着メロに使えない、宣伝にならない、とプロデューサーは頭を抱えたのでは、と思います。というわけで、『マスター 先生が来る!』では若手人気作曲家アニルド・ラヴィチャンダルが起用され(多分byプロデューサー)、いつものヴィジャイの持ち味を生かしつつも、この作品にふさわしいシーンが創出できるよう、様々な工夫がなされています。”大学+ヴィジャイ”という十八番の設定となった曲「♫Vaathi Coming(先生が来る!)」も、チェンナイの名門大にそんなタイコ持ったおっちゃんがいるのかよ! 等々とツッコミたくなるようなシーン満載で、とっても面白い展開を見せてくれます。ぜひ、ソング&ダンスシーンにもいつも以上にご注目下さい。

©️B4U Motion Pictures, ©️Seven Screen Studio, ©️X.B. Film Creators

あとは、皆さんがいろいろ発見して下さいね。ヴィジャイ・セードゥパティやアルジュン・ダースはもちろん、子役(と言えるかどうか、多分素人の子供たちだと思います)たちも結構達者で物語を盛り上げてくれます。さあ、公式サイトでチェックして、上映館へ走れ! 最後に、前述した「♫先生が来る!」のシーンを付けておきます。いつかこれ、分析してみたい...。

Master - Vaathi Coming Video | Thalapathy Vijay | Anirudh Ravichander | Lokesh Kanagaraj

 


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