アジア映画巡礼

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超傑作タイ映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』を見逃すな!

2018-09-21 | 東南アジア映画

近年ではピカイチのタイ映画と言える『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』が、いよいよ明日から公開となります。9月はなぜか仕事がてんこ盛りでやってきて、なかなかブログでのご紹介もできず公開直前になってしまいましたが、この映画を見逃すと一生後悔する!と言っても過言ではない、よくできたタイ映画ですので、ぜひお早めに劇場にお出かけ下さい。私はこれまでに3回見たのですが、何度見てもぜ~んぜん飽きません。最初にシンガポールで見た時のレポートはこちらです。1年後の今夏、やっと日本語字幕で拝見できて、さらに面白さがアップしました。ではまずは、データからどうぞ。

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』 公式サイト 
2017年/タイ/タイ語/130分/原題:Chalard Games Goeng/英題:Bad Genius
 監督:ナタウット・プーンピリヤ
 主演:チュティモン・ジョンジャルーンスックジン、チャーノン・サンティナトーンクン、イッサヤー・ホースワン、ティーラドン・スパパンピンヨー、タネート・ワラークンヌクロ
 提供:マクザム
 配給:ザジフィルムズ、マクザム
9月22日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

(c) GDH 559 CO., LTD. All rights reserved. 

冒頭、カンニングがバレたために追求されているのは、上写真右から、天才女子高生のリン(チュティモン・ジョンジャルーンスックジン)、演劇好きのかわいい女子高生グレース(イッサヤー・ホースワン)、グレースの彼で大金持ちのグータラ高校生パット(ティーラドン・スパパンピンヨー)、そしてリンと並ぶ天才的な頭脳を持つ高校生バンク(チャーノン・サンティナトーンクン)の4人。でもこれは、模擬テストならぬ模擬追求でした。自分たちの大規模なカンニングがバレた時のための、予行演習だったのです。

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時間はちょっとさかのぼり、リンが名門高校に入学を許された時の校長面接になります。リンは教師である父親(タネート・ワラークンヌクロ/上写真左)と2人暮らしで、リンの天才的な才能を伸ばすにはこの私立高校がふさわしいと判断した父は、女性校長に頼みに来たのでした。その場でリンは数学の才能を発揮して見せ、校長は優秀な学生であると喜んで、授業料とランチ代全面免除という特別待遇で受け入れることにします。もろ優等生の外見のリンに、証明書の写真撮りの時明るく声をかけてきたのは、裕福な家庭の娘グレースでした。こうして2人は親友になりますが、グレースは成績がよくなくて、演劇志望なのに学校の劇にも出してもらえない始末。リンは見かねて家庭教師になったものの、数学の試験の時、教えた問題が出ているにもかかわらず解けない様子のグレースに、ついある方法で答えを教えることに。

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おかげでいい成績が取れたグレースは、ボーイフレンドの大金持ちの息子パットにこのことを話し、パットはリンに「1科目3000バーツ(約1万円)で、試験の答えを教えてくれない?」と持ちかけます。パットはほかに数人の友人をつのり、こうして「リン先生のピアノ教室」と称するカンニング方式で、彼らは成績をアップさせることに成功しました。ところがある手違いから、カンニングがリンと並ぶ優等生のバンクにバレてしまい、一時は窮地に陥ることに。ですが、パットはリンと共にバンクも味方に引き入れ、グレースも加えた4人は、次の目標をアメリカの大学入学に向けた世界的な統一試験「STIC」に定め、時差を利用した大規模なカンニングを計画していきます...。

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カンニングは必ずバレる、というのが私の持論なのですが、今はスマホという最強武器がある時代。本作では、最初意表をつくやり方でカンニングが実行され、最後のクライマックス、STIC試験ではスマホが秘密裏に駆使されます。それぞれの場面はサスペンス度がそのたびにアップしていき、最後のSTIC試験は、試験後の追いかけっこに到るまでサスペンス度マックス状態で、見ているこちらは呼吸すら忘れそうになるほど。逃げるリンの背に、「早く、早く!」と声を掛けたくなってしまいます。切り返しの場面では、タイで待つパットとグレースの奮闘が描かれるのですが、悪事とはわかっていても、手に汗握りながらつい応援したくなる面白さ。脚本のうまさには脱帽、というか、5つぐらい帽子を脱ぎたくなる作品です。

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脚本と共に最高なのが、キャスティングと各俳優の演技です。特にリンは、物語の牽引役であるだけにミスキャストだと目も当てられませんが、モデルとして活躍しているチュティモン・ジョンジャルーンスックジンの起用はこれ以上ないブリリアントなキャスティング。9頭身の体型と地味目の顔立ちが、怜悧な天才少女を見事に体現します。あとの3人は、いわゆる美男美女タイプなのですが、中でもバンク役のチャーノン・サンティナトーンクンは甘い二枚目顔で、優等生ながらもろいところもあるバンクにピッタリ。中国語圏では公開と同時に彼が大人気となり、本作の大ヒットに繋がったのだとか。本作がデビューのチュティモン・ジョンジャルーンスックジンと違って、チャーノン・サンティナトーンクンは2014年に映画デビュー済みですが、2人とも今後は引く手あまたになること請け合いです。

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そして本作には、少し前にタイ映画『ポップ・アイ』(2017)をご覧になった方には「知ってる!」の俳優さんが出演しています。そう、『ポップ・アイ』では象と共に主演していたタネート・ワラークンヌクロですね。リンの父親役なのですが、要所要所で登場して、映画を引き締めています。タネート・ワラークンヌクロはもともとミュージシャンで、映画出演は『ポップ・アイ』が初めてなのですが、2017年にはその年の興行収入第1位となった本作にも出て、たちまち俳優として知られるようになりました。3人ともテレビドラマへの出演依頼も相次いでいるようですが、スクリーンでその姿を再び見てみたいですね。そうそう、リン役のチュティモン・ジョンジャルーンスックジンは、本年3月の大阪アジアン映画祭で上映され、目下開催中のアジアフォーカス・福岡国際映画際でも上映されている『ダイ・トゥモロー』(2017)にも出演しているようですが、ご覧になった皆様、いかがでしたか? 密かに「タイの黒木華」というニックネームを付けたチュティモンちゃん、これからもがんばってほしいです。

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下に、本作の予告編を付けておきます。お彼岸の連休中は、『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』をたっぷりとお楽しみ下さい!

カンニング描くタイの大ヒット作『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』予告編



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