アジア映画巡礼

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すごいタイ映画を見ました!『頭脳ゲーム』

2017-08-18 | 東南アジア映画

明日は金曜日。映画のプログラムが変わる日です。というわけで、昨日の3本に引き続き今日もアジア映画を2本見ましたが、昨日ご紹介したディック・リーの自伝映画『ワンダー・ボーイ』以外の4本はどれも力作というか、クセ者作品揃いでした。その中でも特に光っていたのが、今日見たタイ映画『頭脳ゲーム(原題:Chalard Games Goeng/英語題:Bad Genius)』(2017)です。邦題がすでに付いているのは、9月に開催されるアジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映予定だからです。こんなすごい映画を早くも日本で上映とは、アジアフォーカスもお目が高い。今年5月3日に公開されて1億1215万バーツを稼ぎ、今のところ今年のナンバーワンヒットとなっている作品です。

Chalard Games Goeng theatrical poster.jpg

舞台となるのはある名門高校。成績優秀なリン(上ポスター左端)が、教師である父に連れられて女性校長のところにやってきます。父はリンの将来のためにこの高校に入れたいと頼みに来たのですが、リンは学費その他の出費の心配をし、すらすらと暗算で必要経費を計算しては数字を挙げていきます。校長は優秀な生徒と判断して、喜んで迎え入れることにしました。そんなリンに初めて声を掛けてくれたのは、金持ちの娘グレース(上ポスター右から2人目)でした。グレースは勉強がダメで、リンに教えてもらっているうちに、「試験の時、何とかして~」と頼みこんで来ます。リンはカンニングをさせることにし、それは見事成功、グレースは礼金を支払います。それを聞きつけたグレースのボーイフレンド、パット(上写真右端)は、もっとたくさんの学生に答えを教えないか、とリンに持ちかけます。

こうして、「リン先生のピアノ教室」が始まりました。マークシート方式の回答なので、ABCD(正確に言うとタイ語版の「あ・い・う・え」)の4つの答えの区別がつくよう、リンが右手でピアノのメロディーを4種類奏でる、というやり方でした。みんなはリンの右手が見える後ろの席に座り、指の動きを見て取ってABCDを判断し、見事高得点を獲得します。謝礼は1人1科目3,000バーツ。たちまち、リンの預金通帳には多額の現金がプールされていくようになりました。ところが、ピアノ方式がわかりにくい、と言い出す男子生徒が出て来て、リンが別の方式を使ったところ、隣席の優等生バンクにバレて先生にチクられてしまいました。でも、それをきっかけにバンクも仲間に引き入れることができ、やがて4人は大学入試統一試験(STIC)でのカンニングを考え始めます。世界中で実施されるSTICはどこで受験してもよく、時差を使えば、先に試験が実施される会場からリンとバンクが答えを前もって送ることもできそうです。4人は大規模な作戦を考え始めます...。

脚本が見事、キャスティングが見事、演出が見事、と三拍子揃った作品はそうそうありませんが、『頭脳ゲーム』はそれを余裕でクリアしていて、130分というタイ映画としては長めの上映時間中、まったくだれることがありません。特にリン役のChutimon Chuengcharoensukyingが素晴らしく、高校へ初めて来たシーンからこちらを虜にしてしまいます。ちょっと黒木華に似た雰囲気を持つ女の子で、表情も体の動きもヒロインになり切っているのを見ると、これから黒木華みたいに大女優になるのでは、と期待がふくらみます。美人顔じゃないのがタイではマイナスになるかも知れませんが、ぜひ次の作品が見たいものです。相手役のバンクを演じるChanon Santinatornkulはどこかで見た顔なのですが(ハンカチ王子時代の斎藤佑樹に似ているかも)、彼もなかなかの演技力で引き込まれます。

監督はナタウット・プーンピリヤという人で、ニューヨークでグラフィック・デザインを勉強したあとタイに戻り、テレビCFや歌のPVを作ったのち、2012年にスリラー映画『Countdown』を初監督、『頭脳ゲーム』が2作目です。脚本は監督を中心とした3人の共同執筆で、何度か出てくるカンニング・シーンがとてつもないサスペンスを生み出していて、手に汗握らされます。プロデューサーの1人としてチラ・マリクンが名前を連ねており、これは福岡までいらしてご覧になる価値が大いにあるというものです。アジアフォーカス・福岡国際映画祭の作品紹介ページはこちらです。最期に予告編を付けておきます。

BAD GENIUS Official International Trailer (2017) | GDH

なお、作品紹介ページを見ていただければおわかりのように、「タイ大特集」では『頭脳ゲーム』のほかにも、新作、旧作を合わせて8本の作品が上映されます。このまま、東京にも持って来ていただきたいですね...。

<追記>あら、香港でも公開中ですね。コメディみたいな中国語題名が付いていますが、それに欺されて見に行った人は唖然、ボー然でしょうねえ...。

出貓特攻隊



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