アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

予想とは違った『最愛』

2012-12-24 | 中国映画

やっと<冬の香港傑作映画まつり>に行くことができました。現在上映中なのは、顧長衛(クー・チャンウェイ)監督作品『最愛』 (2011)です。<冬の香港傑作映画まつり>の詳細は、こちらをどうぞ。

会場のシネマート六本木ロビーには、この時期ならではのクリスマス飾りが。<冬の香港傑作映画まつり>の特別クリスマス・ツリーのようで、スチール写真がいろいろ枝につるされていました。ちょっと『最愛』コンビの顔を拡大してみたのが右写真です。

ロビーの壁には今回上映される3作品、『最愛』『大魔術師Xのダブル・トリック』そして『狼たちのノクターン』のスチール写真がたくさん貼ってあります。韓流ものに負けずに存在感を発揮しているそれらを眺めて気合いを入れ、いざ上映ホールへ。しかしながら、休日だったにもかかわらず、午前中の回のせいか観客は20人弱。ちょっと寂しい上映でした。

『最愛』は、2011年の香港国際映画祭でそのメイキングにあたる『在一起』が上映され、感動を呼んだことをこちらの記事でお伝えしました(映画の題名は当時『魔術外伝』でした)が、その時登場した男の子(写真下)がとても印象に残っていたので、どんな風に映画に出てくるのかなあ、と楽しみにしていました。

ところがっ! (以下、ネタばれいろいろあります。これからご覧になる方はご注意下さい)この男の子が演じる得意(郭富城/アーロン・クォック)の甥は、冒頭で死んでしまうのです。そう言えばこの舞台挨拶の時も、「僕は死んじゃうんだけど」とか言っていたなあ、とあとから思い出しました。映画は、天国にいるこの子が地上を見ながら語るナレーションで進行していきます。

ある村で、エイズ患者が大量に出現し、患者が次々と亡くなっていきました。それは、元小学校長(陶沢如/タオ・ツァールー)の長男(濮存[日+斤]/プー・ツンシン)が村人に売血を勧め、採血の注射針を使い回したことによる集団感染でした。責任を感じた元校長は、今は廃校になっている山上の小学校校舎を使い、患者たちを隔離して生活させることにします。様々な村人が集まってきますが、その中にはやはり感染した元校長の次男得意もいました。

得意は妻や子供を家に残して来ているのですが、患者村では料理番に決まった女性(蔡[雨+文]麗/監督夫人)に早速きわどい冗談を言ったりと、下心ありありの男。そこに新たに入所したのが、得意一家と親戚になる男の妻、琴琴(章子怡/チャン・ツィイー)でした。早速得意は押しの一手で、彼女と関係を結んでしまいます。琴琴は、エイズとわかって夫や姑にひどい仕打ちを受けたことから、得意のやさしさに惹かれるようになったのです。

二人は倉庫で逢い引きしていたのですが、ある晩外から倉庫のカギが閉められてしまいます。それは、妻の不貞に怒った琴琴の夫のしわざでした。夫は琴琴を離婚して再婚することに決めていたのですが、にもかかわらず妻を寝取られたと腹を立てたのでした。それをきっかけに、得意は琴琴を説得し、二人は同居を始めます。得意の妻もとっくに実家に帰ってしまっており、それぞれの夫婦は結局離婚することになります。

そして、得意の兄の奔走で、やっと二人に結婚許可証が届けられます。花婿花嫁らしい服装をして、村の家々にお祝いのアメを配って歩く二人。ですが、病魔は次々村人をあちらの世界へ連れて行ってしまい、料理当番の女性や仲のよかった大嘴(王宝強/ワン・パオチアン)も亡くなってしまいました。そして得意と琴琴も....。

ここに挙げた出演者の他、ゲストとして姜文(チアン・ウェン)、陸川(ルー・チュアン)、馮小剛(フォン・シャオカン)といった大監督が出演しています。そういう意味では見どころの多い作品ではあるものの、何というか、今ひとつピンとくるものがありませんでした。見る前はアーロン・クォックとチャン・ツィイーの純愛映画かと思っていたので、「えー、配偶者のある二人の不倫なの?」とこれも予想外の展開に少々ショックを受けたせいかも知れません。アーロンがスケベ・キャラを演じるのも何だかそぐわない気がしてしまい、これはミス・キャストでは、という思いが終始頭を離れませんでした。

中でも最大の不満は、エイズという病気がファンタジー的に描かれていたこと。劇中では「熱病」と呼ばれ、ある日突然死んでしまう病気、という描写がなされていて、エイズとは別物のような印象を与えていました。もしかしたら、検閲を通すための方便なのかも知れません。それから、山中の鄙びた村に「売血」というシステムが導入された背景が、得意の兄の拝金主義だけで説明されていたことも納得できませんでした。というふうに、アーロン演じる得意のキャラも含めて、「なるほどな~」と胸に落ちる部分があまり多くないのです。エイズ問題に取り組んだ意欲は買うけど、むしろドキュメンタリー映画『在一起』の方が中国におけるエイズ問題をしっかりと捉えていたのでは、と思います。

というわけで、私にとっては少々残念な作品でした。残念と言えば、この映画まつりはパンフレットが作ってなかったのもちょっと残念。次の作品『大魔術師Xのダブル・トリック』で、梁朝偉(トニー・レオン)の魔術に酔うのを楽しみに、年越しをすることにします。なお、今回の記事で使用したスチールは、昨年のファイルに入っているのを見つけたのですが、どこからDLしたのか不明です。もし、クレジットが必要な場合等は、お手数ですがご連絡下さい。

 

 


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