アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

Netflixでインド映画漬けの1日

2024-07-28 | インド映画

昨日は、ずーっとNetflixを見ていました。ここ数ヶ月仕事が忙しく、ネトフリもチラ見しかできなかったため、仕事が一段落した今見ておかないと、と思って見始めたら止まらなくなったのです。皆さんはもうご覧になったかも知れませんが、ちょっと感想等を書き付けておきます。

『Crew(乗組員)』
 2024年/ヒンディー語/118分
 監督:ラージェーシュ・A・クリシュナン
 主演:タッブー、カリーナー・カプール、クリティ・サノン、ディルジート・ドーサーンジ
 インド封切り日:3月29日

『ルートケース』(2020)の監督作だったので、今春インドに行った時に、もうちょっと公開日が早ければ見られたのに、と残念に思いながら帰ってきた作品です。インドの弱小航空会社(の割には、海外都市あちこちに路線が飛んでいたりしますが)コーヒヌール社のCA3人、ギーター(タッブー)、ジャスミン(カリーナー・カプール)、ディヴィヤ(クリティ・サノン)は、ある時チーフ・パーサーの老人が飛行中に急死したことから、彼が金のインゴット密輸の常習犯だったことを知ります。そのルートを辿ると、何と直属の上司が手配の総元締めだったことが明らかになり、ギーターら3人も彼の提案に飛びつきます。こうして、小さな球状にしたインゴットにチョコをコーティングし、金紙で包んでどこやらのチョコレートと同様の10個入りパッケージを作り、それで金を海外へ持ち出すことに。この副業で儲かった3人は有頂天になりますが、税関の女性職員に目を付けられ、ある日抜き打ち検査の一行が麻薬犬と共にやってきます...。

『ルートケース』と同じくコンゲームですが、庶民的というか貧乏くさい前作から一気にグレードアップ、有名女優3人を使っての『Crew』は、ちょっとバブルになりすぎました。とっかえひっかえのデザイナーブランド私服は、このファッションショーをやるのが目的? と思ってしまうほど。脇役もいい役者を揃えていたのに、『ルートケース』のようにそれぞれに個性を出させる脚本にはなっていなくて、これまた残念。脇の顔ぶれは、コーヒヌール航空のオーナーにシャシュワト・チャテルジー(『女神は二度微笑む』の殺し屋役)、失職し、家でケータリングをやっているギーターの夫にカピル・シャルマー(人気バラエティーのホストでありながら、最近映画づいているコメディアン)、ジャスミンの祖父にクルブーシャン・カルバンダー(80&90年代のニューシネマ作品には欠かせぬ俳優。お元気そうで何より)、そしてディヴィヤの恋人になる税関の責任者にディルジート・ドーサーンジー(歌手でもあって、ホント、カッコいいんですよ~。ヒンディー語映画とパンジャービー語映画に出ているのですが、『フライング・パンジャーブ』(2016)が映画祭上映されているものの、きちんと日本公開作ができて人気者になってほしい)らですが、いずれも印象が薄かったです。予告編を付けておきます。

Crew | Trailer | Tabu, Kareena Kapoor Khan, Kriti Sanon, Diljit Dosanjh, Kapil Sharma | March 29

 

『Srikanth(シュリーカーント)』
    2024年/ヒンディー語/134分
 監督:トゥシャール・ヒーラーナンダーニー
 主演:ラージクマール・ラーオ、ジョーティカー、アラーヤー・F、シャラド・ケールカル
 インド封切り日:5月10日

実在の人物に材を採った作品です。1991年7月7日にアーンドラ・プラデーシュ州のマチリパトナムに生まれたシュリーカーント・ボーラー(ラージクマール・ラーオ)は、生まれつき目が不自由でした。農業に従事する一家は貧しく、シュリーカーントは学校に行くのがやっとでしたが、12年生の修了試験の成績は何と98%(=98点)。盲目を理由に大学が入学を許可しないと、彼は訴訟に訴え、学ぶ権利を勝ち取って行きます。やがてアメリカのMITで学び、帰国後彼はラヴィ(シャラド・ケールカル)という協力者を得て、ボーラート・インダストリーズという会社を設立、廃棄物や使用済みの紙から再生紙を製造、視覚障害者を雇用するなど、優秀な起業家となっていきます...。

映画では、シュリーカーントの才能を伸ばそうと心血を注いでくれる女性教師デーヴィカー(ジョーティカー)を登場させ、またアメリカ留学時代に知り合ったインド人女性スワティ(アラーヤー・F)との恋愛も描いて、彼のこれまでを辿ろうとしています。ただ、シュリーカーントがアブドゥル・カラーム大統領から絶賛されるシーンなどは、カラーム大統領のそっくりさん役者が登場し、それまでのリアルな展開がちょっと茶番劇化してしまいました。主演のラージクマール・ラーオは演技巧者として知られていますが、今回も目を半眼にし、非常に自然な演技で、頭脳明晰でガッツがあり、時には傲慢にもなってしまう主人公を演じています。全編に流れるテーマソングは、アーミル・カーン主演作『Qayamat Se Qayamat Tak(破滅から破滅まで)』(1988)の「♬Papa Kahete Hain(パパが言うんだ)」の歌。シュリーカーントの父親とはイメージに違和感がありますが、沈みがちの画面を明るくする役目も果たせる、というので使用されたのでしょう。こちらも予告編をどうぞ。

SRIKANTH (Official Trailer): RAJKUMMAR RAO | SHARAD, JYOTIKA, ALAYA | TUSHAR H | BHUSHAN K, NIDHI

 

『ヒーラマンディ ダイヤの微笑み』
 2024年/ヒンディー語/ドラマシリーズ:全8回/原題:Heeramandi: The Diamond Bazaar
 監督:サンジャイ・リーラー・バンサーリー
 主演:マニーシャー・コイララ、ソーナークシー・シンハー、アディティ・ラーオ・ハイダリー、シャルミーン・サイガル・メーヘター、リチャー・チャッダー、サンジーダー・シェイク
 インド放送開始日:5月1日

『デーウダース』(2002)、『バジラーオとマスターニー』(2015)、『パドマーワト 女神の誕生』(2018)などの豪華作品を得意とする、サンジャイ・リーラー・バンサーリー監督の最新作。1本の映画には納まりきらない、と判断したためか、8回連続のドラマとして作られました。舞台は、イギリス統治時代、1920年のラホール。パンジャーブ地方に11世紀から栄えたイスラーム王朝が築き上げた都市として、繁栄を誇っていたラホールは、19世紀半ば以降はイギリスの統治下に入ります。その一画に「ヒーラー(ダイヤモンド)・マンディー(市場)」と呼ばれる区域があり、娼館が立ち並ぶ華やかな地域であったそうです。娼館の上得意は、ナワーブなどイスラーム王朝時代の王や高官の血を引く人々、そしてイギリス軍の上級官僚たち。本作は独立運動の機運が高まる中、ヒーラーマンディーの娼館に暮らす女性たちの様々な運命を描いていきます。

最初に登場するのは、娼館シャーヒーマハルの女主人レーハーナージャーン(ソーナークシー・シンハー)、その妹マッリカージャーン(マニーシャー・コイララ)、下の妹ワヒーダー(サンジーダー・シェイク)。マッリカーの生んだ男の赤ん坊を、レーハーナーが父親である貴族の元へやってしまい、マッリカーはその恨みから姉レーハーナーを自殺に見せかけて殺害、自らが娼館の主人となって、レーハーナーの幼い娘ファリーダンを追い出してしまいます。それから26年、マッリカーには2人の娘が生まれており、上の娘ビッボ(アディティ・ラーオ・ハイダリー)は母の後を継いで娼館の花となり、下の娘アーラム(シャルミーン・サイガル・メーヘター)はそろそろ娼妓としてのお披露目という年頃を迎えていました。アーラムはある時、本屋で出会った貴族ナワーブの息子タージダール(ターハー・シャー・バドシャー)と恋に落ち、お披露目をいやがるようになりますが、同じ頃、レーハーナーの忘れ形見ファリーダンが戻ってきて、隣に娼館をかまえます...。

こうしてマッリカーとファリーダンの闘いに貴族やイギリス軍人も巻き込まれながら、世の中はインド独立に向けての人々の闘いが顕著になってくる、という、歴史の中で翻弄される娼館と娼婦らを描いていくストーリーです。すべてセットだと思うのですが、ヒーラーマンディーの娼館を始めとする様々な館の豪華な内部が再現され、中庭で繰り広げられるカタック・ダンスなど、サンジャイ・リーラー・バンサーリー監督のゴージャス趣味がまたしても炸裂しています。主人公たちの数々の衣装やアクセサリーも、ため息が出るほど豪華絢爛で、どれぐらい製作費がかかっていることか、と見ている方が心配になるほど。製作費は20億ルピーとWikiには書かれていますが、配信のみの配給で、それが回収できるのかどうか。加えて、ストーリーに感銘を受ける点がほとんどなく、独立運動のシーンもリアリティからはズレていて、豪華絵本を見ているよう。サンジャイ・リーラー・バンサーリー監督は、今後もゴージャス趣味を極めるためだけに映画を作りつづけるのでしょうか...。

予告編を付けておきます。上手な日本語字幕が付いていますので、豪華絢爛のお好きな方はぜひどうぞ。

Heeramandi: The Diamond Bazaar | Sanjay Leela Bhansali | Official Trailer | Netflix India

 

 


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