『モンキーマン』の劇場用パンフレットができあがってきました。チラシと同じ画像ですが、スタイリッシュな文字入れなどをじっくりとご覧下さい。
パンフレットは作品の配給会社さんが作ることが多いのですが、今回は上映劇場の東宝さんの発行です。編集は東宝ステラさんで、このケースは私にとって『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018年12月公開)以来二度目。配給会社のパンフレットと違って、ゴージャス感があるというか、紙質や中身が充実しているような気がします。『モンキーマン』パンフの内容は、「監督から一言」とイントロ&ストーリーに続いて、江戸木純さんのコラム、デーウ・パテールとジョーダン・ピールのインタビュー、私のコラム、そしてプロダクション・ノートとキャスト&スタッフ紹介と続きます。中開きのページが私の好きな下の写真なので、ご満悦の私です。
©Universal Studios. All Rights Reserved.
ところで、タイトルにある補足点ですが、3点ほどあります。
①「ハヌマーン/チャーリーサー(猿神頌歌四十句)」ですが、インドのアニメ『Hanuman』のVCDに付録のようにして入っていたのを発見、アニメの絵がかわいらしいので、全編の歌詞を付けておきます。これだけでは、ヒンディー語ができる方以外は「何のこっちゃ???」だと思うので、どういうことを歌っているのかはこちらにある坂本葵さんという方の研究レポート「『ハヌマーン・チャーリーサー』翻訳」をご参照下さい。大阪大学から出ている「印度民俗研究」の13号(2014年)に掲載されたものです。実際の歌はYouTubeでググっていただくといろいろ出てきますが、こちらなどハヌマーンのイメージがいろいろ登場して面白いのでは、と思います。
母親が幼いキッドに聞かせていたのがこの「ハヌマーン・チャーリーサー」ではないかと思うのですが、パンフには広い意味で「ハヌマーン・マントラ」と書いています。『モンキーマン』に登場するものはどちらの表現が正しいのか、詳しくご存じの方がいらっしゃいましたらお教え下さい。
©Universal Studios. All Rights Reserved.
②インドの中央映画検定局が検定をとうとうネグり倒した話ですが、製作会社のユニバーサル映画は当初から非常に気を遣い、検定にかける前に自ら何カ所かの修正を行ったそうです。7月24日付けの「The Hindu」紙のこの記事「ユニバーサル・スタジオによる全世界向けのカットで政治的影響がさほどでなくなった後も、検定員会は『モンキーマン』の公開を阻止」によると、宗教と政治のかかわりを強調するシーンの修正や、あるところに使われたサフラン色を赤に変えるなど、インドでの上映に際し、かなりカットや変更が行われたようです。日本で上映されるのもカットされたバージョンのようですが、あ、ここか、とわかる箇所もあります。とはいえ、残っているのはほんの一瞬で、それすらも気になるならカットを命じればいいわけで、検定局の検定サボタージュは「何が目的でやってるの?」という感じです。昨年2月に私が対検定局交渉でひどい目にあった時も感じましたが、「♪インド中央映画検定局、このごろすこーし変よ♬」と歌いたくなってしまう機能劣化です。
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③パンフレットの冒頭「監督から一言」にこういう部分があるのですが、このシャー・ルク・カーン主演作って、どの映画だと思います?
「僕は子供のころからアクション映画に夢中だった。真夜中にこっそり階下に行って、ブルース・リーがスクリーンから僕の想像の中に飛び込んでくる『燃えよドラゴン』や、シャー・ルク・カーンが最愛の人を救うために何百人もの悪者と戦うのを見たりした」(下の写真は25年ぐらい前のシャー・ルク・カーン)
Photo by R.T. Chawla
「最愛の人を救うために何百人もの悪者と戦う」シャー・ルク・カーン主演作なんてなかったように思うのですが、デーウ・パテールのイメージの中では、シャー・ルク・カーンはそういうヒーローだったのですね。ブルース・リー作品始め、他のアジア諸国の映画はそれぞれ個別作品として認識されていることからタイトルがいろいろ出てくるのですが、インド映画は個々の作品としては認識されず、彼の頭の中には「インド映画」として残っている、というのがわかったのも面白かったです。さて、インド映画好きの皆さんは、どんな風にこの『モンキーマン』を見て下さるでしょうか。ぜひ、コメントをお寄せください。最後に映画のデータとメイキング映像を付けておきます。
『モンキーマン』 公式サイト
2024年/アメリカ・カナダ・シンガポール・インド/英語(一部ヒンディー語)/121分/字幕:風間綾平/原題:MONKEY MAN
監督:デヴ・パテル
出演:デヴ・パテル、シャールト・エプリー、ピトバッシュ、ヴィピン・シャルマ、シカンダル・ケール、アディティ・カルクンテ、ショビタ・ドゥリパラ、アシュウィニー・カルセカル、マカランド・デシュパンデ、ジャティン・マリク、ザーキル・フセイン
配給:パルコ、ユニバーサル映画
※8月23日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか、全国公開
【特別映像】8/23(金)公開 映画『モンキーマン』デヴ・パテル