アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

第42回香港国際映画祭3日目は中国映画特集

2018-03-26 | 中国映画

香港国際映画祭の事務局へは、毎朝10時のオープンと共に入れるよう、いつも10分前ぐらいに行って閉まっているドアの前で待っています。24日は土曜日だったせいもあってか、6人ぐらい待っていたのですが、昨日は3人、そして今日は誰も競争相手はいませんでした。


部屋は大きく3つに仕切ってあって、一番手前はカタログ等を販売するデスク、次のデスクがゲスト・パスの受付とゲストの世話で、その真ん中パートにはソファーがあり、簡単なお茶セット(インスタントコーヒーとクリームの大瓶や、ティーバッグなど)も用意されています。そして一番奥にメディア・パスの受付があり、そこに毎日朝10時から午後7時まで座っているのが右の男性、ミスター・リー(李先生)なのでした。非常に公平で、かつ親切な人で、今回本当に助かりました。多分、イベント会社から派遣されている人だと思いますが、日本の名古屋と大阪に行ったことがある、と言っていました。いつもは外で待っている私も、今日は「もう用意はできているから中に入っていいですよ」と5分前に呼びに来てくれた李生(レイサン/レイシンサンを縮めてこう呼びます)の好意に甘えて、少し早めにスタートさせてもらったのでした。


このデスク以外の3面には、こういうモニターが並んでいます。全部で10台あるのですが、見ておわかりのように大型画面もあれば、普通のPCモニターぐらいのものもあります。小さい画面だと英語字幕が読めないので、これも李生にお願いして、毎回大型画面で見せていただきました。昨日は音声が聞こえにくいモニターがあり、それも場所を代えてもらうなど、いろいろ便宜をはかっていただいて助かりました。女性の係の人は毎日違う人が来ていましたが、彼女たちも親切、かつ丁寧で、とても感じがよかったです。


モニター画面はこんな風になっていて、右側にアルファベットが並び、英語題名の初めの文字で探せばすぐこんな画面が出てきて、見たい映画を即クリックできます。映画それぞれにカタログのページが資料として付けてあり、これもどんなストーリーか見当を付けたりするのに便利です。よく考えられたシステムでした。TIFFも昨年からオンデマンドになって便利になりましたが、HKIFFのやり方も参考にしてさらに使いやすくしていただければと思います。で、今日見たのは2本+αです。

『北方一片蒼茫/The Widowed Witch(寡婦のシャーマン)』(中国/2017)

北方一片蒼茫

主人公の女性王二好(田天)は3度結婚して3度とも夫に死なれてしまった寡婦です。今は夫の弟で、しゃべるのが不自由な少年と共に、白いバンで寝起きしています。彼女の周りには、借金とりから逃げ回っている中年男や、見捨てられたような暮らしをしている老人、女の子しかいなくて次の出産で男の子を望む夫の妹など、いろんな人がいます。そんな中、二好は次第にシャーマンの素質があるとされるようになり、やがて老人からシャーマンの道具をもらって村人を相手にお祈りや予言をするようになります...。

ものすごくわかりにくい映画でした。シーンそれぞれは単純な内容なのですが、作り方がジグゾーパズルのピースを次々に見せていくだけ、という感じで、全体像がわかりません。また、最初は雪深い林の中をあるく二好と兄(?)をカラーのきれいな画面で撮っていたのですが、やがてモノクロになり、またカラーに一時戻ったかと思うと再びモノクロで物語が進行し...と、なぜそこだけカラーなの? というのが見ている方にはわからないという作品でした。モノクロの最初のシーンでは、二好は死んだことになっていて、その彼女の声と周囲の人の声が録音の調子を変えて聞こえてくる、という状態で、しかも二好は体が動かないのをいいことにレイプされる...と思ったら、次のシーンからはしっかりと生きている人間として登場してくるし、私の理解ではついていけない作品でした。しかしながら、ロッテルダム映画祭では受賞したとかで、これが第1回長編劇映画である蔡成傑監督が中国のマスコミには大きく取り上げられたりしていました。予告編を付けておきます。

The Widowed Witch - trailer | IFFR 2018  

 

『米花之味/The Taste of Rice Flower』(中国/2017)


こちらはとてもわかりやすい作品でした。舞台は中国南部、雲南省の傣族の村です。上海で働いていた葉南(英澤)は、仕事を辞めて故郷の村に帰ってきます。陽光のもと、濃い緑の中に青い屋根の大きな家々が山の斜面に並ぶ絵のような村には、葉南の年老いた父と、父に預けっぱなしの小学生の娘喃杭が住んでいました。昔ながらの茶摘みや織物が続いている村ですが、子供たちはゲームに夢中だし、若者はバンドなどもやっていて、村に太陽光発電機があることといい、ずいぶんと開けてきています。喃杭もゲームに夢中で、同級生と唯一Wifiがつながるお寺に陣取って、夜遅くまでゲームをしています。携帯を取り上げると、母親の携帯をこっそりと盗む始末。ずっと家にいなかった母親と娘の関係は、なかなかなめらかになりませんでした。そんな時、ゲームをするお金ほしさに喃杭が友達とお寺に奉納してあったお金を盗むという事件を起こします。そしてその友達が病気でもう手遅れだということもわかり、あっという間に環境が大きく変化していきます...。

まず、暖かい光のあふれる場面が、これまでの映画にない、画面を見る喜びをもたらしてくれます。ありふれたストーリーと言えばそうなのですが、それをあえてひねらず、直裁的に呈示してある手法をみずみずしく感じたのは、ひねりすぎの作品を見たあとだったからでしょうか。主人公も決して百点満点の人物ではなく、また、牧歌的な村も理想郷とは描かれていません。主人公はイライラするとタバコに手を出すし、最初笑顔が続いた顔も、険しい鬼のような表情になったりします。また、主人公は夫と離婚したことを娘に隠していたのですが、それが村の年長女性によって暴かれたり、病気の少女にカンパをつのる活動を村をあげてしていたのに、彼女が亡くなると「金は返ってくるのか」という村人がいたりと、そのあたりのリアルさが巧みな作品でした。監督は鵬飛という人で、これが2作目です。脚本には主演女優の英澤も関わっており、また、音楽は日本のミュージシャン鈴木慶一が担当していました。予告編はこちらです。

The Taste of Rice Flower (米花之味, 2017) de Song Pengfei

この予告編にある最後のシーンの後、母と娘が傣族の踊りを踊るのですが、明らかに娘を演じた少女の方が踊りが上手でした。きっと、傣族の女の子なんでしょうね。劇中では「お母さん、踊りが上手ね」という台詞がでてきて、確かに手首のスナップの利かせ方なんか上手だなあ、と思って見ていたのですが、最後のシーンで少女の手の動きの方が格段にうまくて、びっくりしました。いい表情をしていたので、女優の道を歩んでもいいのでは、と思います。


もう1本、『尋狗啓事/Looking for Lucky』(中国/2017)という作品も見始めたのですが、手持ちカメラが動き回る画面に酔いそうになってしまい、さらに、昨日辟易したディベイト劇っぽかったので(孫が指を犬に噛まれた、と太ったおばさんが怒り、犬の飼い主である主人公の父が言い返し、主人公がそれをなだめる、というのがトップシーンで、えんえんと続く)、15分ぐらい見てパスしました。あとのアジア映画は、先日の大阪アジアン映画祭で上映された作品だったり、昨年の東京国際映画祭や東京フィルメックスで上映されたものだったり、というわけで、また日本で公開されるかも知れないからいいか、とスルーしました。

それと、今日はどうしても見ておきたい作品があったこともあって、午後4時から旺角の映画館に走ったのです。その作品とは...

Monster Hunt 2 Poster.jpg

そうです、『モンスター・ハント』(2015)の続編『捉妖記2』なのでした。今回は、前回のメンバーに加えて梁朝偉(トニー・レオン)と楊祐寧(トニー・ヤン)の二人のトニーが加わるという豪華版。妖怪側もウーバーに加えて、上のポスター左下にいる笨笨が梁朝偉の相棒で活躍、いい味を出していました。ただ、妖怪との戦いのシーンになった時からすっかり寝てしまい、最後4分の1ぐらいが記憶欠落。ツインさんがまた買って下さって、日本で見られるといいなあ...。映画館のディスプレイの写真を付けておきます。


もちろん、予告編もどうぞ。

 捉妖記 2 | HD粵語中字電影預告

旺角の映画館には、こんな写真も。


『シークレット・スーパースター』、台湾も香港も私が行った少し後で公開、というパターンばっかですね。中国では『ダンガル きっと、つよくなる』に続いて大ヒットだったそうで、日本でも同じように...続いて公開とはいかないでしょうかね、アーミル・カーン様。

 


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