アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

第42回香港国際映画祭2日目は韓国映画『Last Child』が出色

2018-03-25 | アジア映画全般

本日は日曜日、香港はどこもすごい人出です。今日は友人と飲茶の約束があったので、その前後に3本見ただけですが、韓国映画『Last Child/살아남은 아이』にすっかり心を奪われました。ググってみると、昨年の釜山国際映画祭で上映されたようですが、韓国ではまだ公開されていないのでしょうか。韓国語のポスターとかが出てきません。香港国際映画祭の事務局にお願いしている画像がちっとも送られてこないので、今回も仕方なくポスターでご紹介します。

『Last Child/살아남은 아이(最後の子)(韓国/2017)

살아남은-아이

小さな内装会社を妻ミスク(キム・ヨジン)と二人で経営するソンチョル(チェ・ムソン)は、内装業者として確かな腕を持っており、誠実に仕事をこなす人間でした。ところが、たった一人の高校生の息子が友人を助けようとして川で溺れ、亡くなってしまいます。悲しみに沈む夫婦でしたが、人命救助の市民賞が亡き息子に授与されたり、学校に寄付をして奨学金に使ってもらったりと、さまざまな対応をする中で、次第に立ち直っていきます。ただ、ミスクは息子のことを話してくれる相手を求め、その時一緒にいた男子学生を呼び出してみたりしたのですが、なぜかその子は口をつぐんだまま去って行きます。一方ソンチョルは、息子が助けたという同級生キユン(ソン・ユビン)が配達のバイトの途中なのか、黄色いバイクに乗って奇声を発しながら走り去るのを見ます。やがてキユンと知り合ったソンチョルは、彼がレストランの出前のバイトをしていること、母は蒸発し、父もほとんど家に帰らない中で自分で生活費を稼いでいること等々を知るようになります。バイクを盗んだ疑いでレストランを首になったキユンをソンチョルは内装の仕事に誘い、資格試験を受験できるよう、参考書を買い与えたりして面倒を見ます。最初はいいかげんだったキユンですが、やがてまじめに内装の仕事に取り組むようになり、ミスクとも顔見知りになって、見事資格試験に合格します。お祝いに郊外にピクニックに行き、家族のように楽しく過ごす3人。ですがその帰途、いつかの同級生に会ったとたん、キユンは人が変わったようになり、やがてミスクに衝撃の告白をするのでした...。

シン・ドンソク監督はこれが長編デビュー作で、脚本も書いていますが、実にしっかりした脚本になっていて、冒頭10分ぐらいで映画に引き込まれます。主人公を演じた3人も素晴らしく、特に男優2人、チェ・ムソンとソン・ユビンはずっとその演技を見ていたいと思わせるものがありました。ソン・ユビンの巴旦杏のような目が印象的で、どこかで見たことがあると思ったら、チェ・ミンシク主演『隻眼の虎』(2015)の息子役の俳優でした。あれからまた大きく成長したようで、17歳という実年齢と同じ役ながら、影のあるキユンという人物像を見事に形作っていました。妻役のキム・ヨジンも、抑えた演技からにじみ出るものがあり、ソン・ユビンとのからみでは何度か目頭が熱くなりました。予告編はこちらです。

BIFF2017 l New Currents : Last Child


『Black Kite(黒い凧)』(2017/アフガニスタン、カナダ)

Black Kite Poster

こちらは、ターリバーン時代のアフガニスタンを描いた作品です。冒頭、初老の男がターリバーンに捕らえられ、絞首刑を宣告されます。幼い彼の娘は泣きますが、その男アリアンは牢屋へと引き立てられて行きます。牢屋には先住の男がおり、その男に請われて、アリアンはこれまでのいきさつを語っていきます。父親が凧職人だったアリアンは、幼い時から凧に夢中でした。そのため学校の卒業試験にも落ち、卒業資格が取れませんでしたが、父親の後を継いで様々な凧作りに励んでいました。やがて美しい妻を娶り、女の子も生まれて幸せな毎日でしたが、妻が銃撃戦に巻き込まれて亡くなり、ターリバーンの支配下で「凧などまかりならぬ」という風潮になります。ところが娘は姿を消した凧を見たがり、その噂を聞いた人が寄贈してくれたりして、やがてアリアンの家は凧でうまります。でも、それを空に揚げることはできません。そんなある日、新月の闇夜に黒い凧を揚げたらどうだろう、と思いついたアリアンは、それから闇夜を待ちわび、娘と共に黒い凧を揚げるのに熱中します。でも、ある時そのまま屋上で寝てしまった2人は、ターリバーンに見つかってしまったのでした...。

お話の進行と共に、画面にアニメーションが現れ、青系と橙系の美しいアニメが話を説明してくれます。さらに、当時のアフガニスタンのドキュメンタリー映像も使われていたりして、知らない光景に目を奪われます。アイディアも面白いのですが、凧大好き人間のアリアンの描写がちょっと弱く、いまひとつ真実味に欠けていたのが残念でした。予告編ではないのですが、一部をピックアップしたものを付けておきます。

BLACK KITE Clip | TIFF 2017


『Ava(アーヴァー)』(イラン/2017)

Ava (2017 Iranian film).png

イランの女子高生アーヴァーが主人公で、ボーイフレンドと会っていただけで処女性を疑われて母親に医者に連れて行かれるなど、いろんなフラストレーションがたまっていく日常を描いています。そこそこお金持ちの娘でバイオリンを習いに行くなど、欧米文化にも触れている存在として描かれていますが、学校へは父母が車で送り迎えするなど、イスラーム教の規範はがっちりと守らされています。ところがこの映画、ものすごくディベイトが多いのです。父と母の、あるいは母とアーヴァーの、うるさいまでの言葉の応酬シーンが何度かあって、ものすごく疲れました。

AVA Trailer | TIFF 2017


西アジアの映画を見たので、突如羊肉とかが食べたくなり、チュンキン・マンションのインド料理店へ。下のお二人がやっている店で、写真を撮ったらしっかり名刺を渡されました。「Wakas Sweets」というお店で、1階のショップNo.55です。


下がショーケースで、実はこの右側にお菓子がいっぱい並ぶショーケースもあったのでした。というわけで、「ワカス菓子店(スイーツ)」という名前はウソではありません。


食べたのは最下段左のベジタブル・カレーと真ん中の段右端のラムカレー。どちらもすごくおいしかったです。パンはパラーターにしたのですが、上段のナーンでもよかったかも。あとチャイを飲んで、これで合計50香港ドル(約700円)。安いですねー。おいしかったので、明日もここで食べようかな。あれだけインドにいたのに、映画館の中でドーナツとかあまりまともなインド料理を食べなかったため、今、取り返している感じです...。



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