アジア映画巡礼

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2月も元気だ!韓国映画<1>『ノンストップ』

2021-02-07 | 韓国映画

1月公開作では『新感染半島 ファイナル・ステージ』と『KCIA 南山の部長たち』をご紹介した韓国映画、2月もまた、面白い作品がやってきます。今日は抱腹絶倒(いや、マジで。お腹の皮が痛くなりました)の元気が出る映画、『ノンストップ』(2020)をご紹介しようと思います。主演はオム・ジョンファお姐さん、と聞けば、韓国映画ファンの方はもうそれだけで、納得ぅ~だと思いますが、ほかにもクセ者俳優がいっぱいご出演。まずは、作品のデータからどうぞ。

『ノンストップ』 公式サイト
 2020年/韓国/韓国語/100分/原題:오케이 마담/英題:OK! Madam 
 監督:イ・チョルハ
 出演:オム・ジョンファ、パク・ソンウン、イ・サンユン、ペ・ジョンナム、イ・ソンビン、キム・ナムギル
 配給:ファインフィルムズ
2月12日(金)シネマート新宿、シネマート心斎橋他にてロードショー

主人公のミヨン(オム・ジョンファ)は、ソウル西大門の霊泉(ヨンチョン)市場で揚げパン屋を営む主婦。ねじり揚げパンなどどれも大人気で、いつもアッという間に売り切れてしまいます。帰宅すると、パソコン修理店をやっている夫ソクファン(パク・ソンウン)は相変わらず機械とにらめっこ。ソクファンのささやかな夢は、栄養ドリンクのプルトップの裏に「二等」の文字を見つけて洗濯機を手に入れることでしたが、なんとミヨンが飲んだドリンクのプルトップには「ハワイ旅行」の文字が。一等が当たってしまったのです。ミヨンとソクファンは、まだ飛行機に乗ったことのない小学生の娘ナリのために、諸経費がかかるのを覚悟でハワイ旅行に行く決心をしました。

© 2020 OAL & Sanai Pictures Co., Ltd. All rights reserved

いよいよ出発の日がやってきました。お金をケチってリムジンバスで空港に向かったミヨンたちは、チェックイン・カウンターが閉まる直前に駆け込む羽目に。でも幸運なことに、2名分はビジネスにアップグレードしてもらえ、ミヨンとナリはビジネスへ。そこには、姑に連れられてハワイ出産を目指す臨月の主婦や、居丈高な国会議員、飛行機が怖くて睡眠薬を飲んで寝ようとする男(キム・ナムギル)、黒マスクの怪しい女性(イ・ソンビン)などがいました。一方、エコノミーに座ったソクファンは、通路を隔てた隣席の老人と親しくなります。CAチーフ(キム・ヘウン)や、彼女に目の敵にされるドジな男性CAのヒョンミン(ペ・ジョンナム)らが離陸準備を終え、機長(チョン・マンシク)の操縦するハワイ便はインチョン空港を飛び立ちます。ところがこの飛行機には、北朝鮮のテロリスト(イ・サンユン)をリーダーとする、北の工作員部隊7名も乗り込んでいたのでした。彼らの目的は、10年前に工作現場から姿を消した女性工作員”モクレン”ことチェ・グイスンを捕らえること。脱北者としてソウルに暮らしている彼女が、この飛行機に乗るという情報が入ったからなのですが、そのお陰でミヨンとソクファンはとんでもない事態に巻き込まれることに....。

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冒頭、女性工作員”モクレン”が姿を消すきっかけとなった10年前の事件が描かれますが、現在のソウルでのミヨン一家が登場すると、そんなことはすっかり頭から飛んでしまいます。まー、とにかく元気がよくて賑やかなミヨンとソクファンに、娘のナリも負けていないのですから、典型的な韓国映画のホームドラマ・コメディか、と思って見ていると、飛行機が離陸してからはどんでん返しに次ぐどんでん返し。エンドマークが出るまで、観客は何度も「えーっ!」と叫ぶことになります。上の方で使ったチラシのキャッチコピーにあるように、「妻は超一流スパイ?」「夫は頭脳派のエージェント?」というのは、演じるのがオム・ジョンファとパク・ソンウンなので何となく予測できるのですが、見た目と違う人がまだまだいます。いつもなら、脇役No.1の検事だったり実業家だったりするパク・ソンウンも、今回はちょっとひねった理系男子のキャラですし、そのあたりの人物プロファイリングの妙が効いていて、とても楽しめます。

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楽しめる、と言えば男性CAのヒョンミン役ペ・ジョンナムも、コメディリリーフとして過不足のない演技で、特にお局様チーフのキム・ヘウンにやりこめられるシーンは「そこ、リピート!」と言いたくなるほどです。ペ・ジョンナムって、脇役で刑事とかやっていたあまり目立たない人だったと思うんですが、今後コメディ俳優としてブレイクしていくかも知れません。下写真は、諜報部員気取りで腕時計に現状報告をささやくヒョンミンです。

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このヒョンミン、夫のソクファンと共に機内のあちこちにもぐり込むのですが、この機体内部がまた面白いのです。客室の下に貨物室があることは知っていたものの、え、スーツケースって、そういう置き方なの? というような驚きがいっぱい。あとダクトとか、収納とか、機体のスケルトン図を描いて説明してほしいような箇所があちこちで出てきます。配給会社の方の情報によると、「飛行機はボーイング777の機内を完全再現しており、実際にボーイング777機を担当した機長に最終チェックをお願いしたそうなのですが、再現度の高さに驚いていた…という逸話があるそうです」とのこと。飛行機マニアの方は見逃せませんね。下の写真なども、「どこから出てくるんじゃい!」とびっくりのシーンです。

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ほかにも、「ナッツ姫」ネタや、ミヨンが「霊泉市場(ヨンチョンシジャン)で仕事を」と答えたのをCAヒョンミンが「ヨンチョン(氷川?)市長(シジャン)」と聞き間違え、「市長様でいらっしゃいますか!」と感激するシーン、あるいは恐らくアクション・ヒロインもの韓国映画『スレート』(2020)を意識したと思われる下のような登場人物(これがチラシにある「謎の美女」です)など、小ネタも満載です。

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肝心の敵役を紹介していませんでしたが、イ・サンユン演じる北朝鮮のテロリストの名前はリ・チョルスン。韓国の観客はここでも笑ったのではないかと思います。なぜって、かの有名な、北のスパイが韓国に潜入してスーパー豚の遺伝子を盗もうとする映画のタイトルが『SPY リー・チョルジン 北朝鮮から来た男』(1999)。激似の名前なんですから、一発でスパイとバレてしまいます。こんな風に、いろんな所に笑いの隠し球がありますので、韓国映画ファンの方はぜひ見つけてみて下さい。

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監督は、ムン・グニョンとキム・ジュヒョクの『愛なんていらない』(2006)でデビューしたイ・チョルハ(イ・チョラの記載も)。最新の監督作『消された女』(2015)は未見ですが、こんな達者なコメディが撮れる監督さんだったのか、と驚きました。また、マ・ドンソク主演作『悪人伝』(2019)のアクション監督チェ・ボンロク(チェ・ボンノク表記も)が、アクションを担当しています。そのせいか、オム・ジョンファはかなりヘビーなアクション・シーンを何度か見せてくれます。『ミス・ワイフ』(2015)以来5年ぶりのオム・ジョンファ、少々体が重そうですが、それでもアクションもとてもがんばっています。こちらもぜひお楽しみに。

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では、最後に予告編を――と書いてしまうと、キム・ナムギルのファンの方からは、「私のオッパはどこに出てるの!?」と言われそうですね。えー今回キム・ナムギルは、「出てる」というよりは「寝てる」と言った方がいい役柄なんです。かなりもったいない使い方ですが、ラストを締めくくってもくれますので、こちらもどうぞご期待下さい。コロナ禍など吹き飛ばしてくれそうなパワー満載の『ノンストップ』、劇場でぜひご覧になって下さいね~。

韓国映画『ノンストップ』予告編

 


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