アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

明日公開! 『不思議の国の数学者』は連休一番の感動作!!

2023-04-27 | 韓国映画

連休中に映画を見ようとお考えの皆様に、お勧めしたい作品はこれ、韓国映画『不思議の国の数学者』です。数学という知性の柱に、受験戦争、南北問題、格差社会問題などいろんなものがからまる、とても見応えのある作品です。と同時に、とても後味のいい作品でもあります。数学では「以上、証明終わり」を「Q.E.D.」で表しますが、これはラテン語「quod erat demonstrandum (証明がなされた) 」の略だそうで、この映画のラストもこの言葉「Q.W.D.」で締めくくられます。何が証明されたのかは、ぜひご覧になってご確認下さいね。以下、映画のデータと簡単なあらすじ等を付けておきます。

『不思議の国の数学者』 公式サイト
 2022年/韓国/韓国語/117分/原題:이상한 나라의 수학자/英題:IN OUR PRIME
 監督:パク・ドンフン
 出演:チェ・ミンシク、キム・ドンフィ、パク・ビョンウン、パク・ヘジュン、チョ・ユンソ
 配給:クロックワークス
4月28日(金)よりシネマート新宿ほか全国ロードショー

©2022 showbox and JOYRABBIT INC. ALL RIGHTS RESERVED. 

ここは成績の上位1%に入る優秀な高校生が通うという名門、ドンフン高等学校。当然お金持ちの子女ばかりなのですが、1年生のハン・ジウ(キム・ドンフィ)はちょっと違います。父親が亡くなり、母親が働いているという、決して裕福ではない家の息子なのです。実はこの高校には「特例入学枠」という制度があり、片親の家庭の子などを受け入れているのですが、その実態は「ビリがいるので皆さん安心でしょ」と金持ち父兄にへつらうため、というトンデモな高校だったのです。やがて、勉強について行けなくなった「特例入学枠」の生徒たちは、「転校して他校に行き、一番になった方がいい」と説得されてやめていきます。そんな親切ごかし教師の筆頭が、数学を担当するジウの担任グノ先生(パク・ビョンウン)でした。そんなこともあって、ジウは数学が苦手でした。しかし1年生には、毎年行われる学校名物の数学大会「ピタゴラス・アワード」に参加する義務があり、今年はこれが期末試験に代わるものとなる、という通達まで出ていました。

©2022 showbox and JOYRABBIT INC. ALL RIGHTS RESERVED. 

ある時、寮生仲間の飲み会用の酒とつまみ調達に行かされたジウは、無断出入りを警備員(チェ・ミンシク)に見つかってしまい、寮を追い出される羽目に。雨の中、荷物を持って校内の屋根のある所で震えていたジウはまたもや警備員に見つかり、自宅に連れて行かれます。噂ではこの警備員は脱北者で、みんなは「人民軍」というあだ名で呼んでいました。着替えて数学の宿題をしているうちに寝てしまったジウは、翌日宿題に答えが書いてあるのを見つけます。その答えが正解で、グノ先生に感心されたジウは、警備員に数学を教えてもらおうと思い、つきまといます。ついに根負けした警備員は、イチゴ牛乳を持ってくることを条件に、科学館の一部屋でジウに数学の手ほどきをしてくれるようになりました。ただし、①ここで勉強していることは誰にも言わない、②数学以外の質問はしない、③数学は教えるが試験や成績のためではない、という条件を守るよう厳しく言われてしまいました。

©2022 showbox and JOYRABBIT INC. ALL RIGHTS RESERVED. 

それでも数学の話を2人でしているうちに、少しずつ警備員のことがわかってきます。彼は実際に脱北者で、脱北者支援本部に時々顔を出しては、友人で彼を「兄貴」と呼んでいるギチョル(パク・ヘジュン)と碁を打ったりしていました。また、警備員はクラシック音楽にも造詣が深く、特にバッハが好きであるなど、深い教養を感じさせる感性の持ち主でもありました。警備員と一緒の時間が増えるにつれ、ジウ自身も変わっていきますが、そんな彼を驚きの目で見ていたのは同級生のボラム(チョ・ユンソ)でした。明るくて積極的なボラムは、ジウと警備員の授業の場に押しかけ、やがて2人の仲間になっていきます。「数学は美しいだろ」と警備員も2人に心を開き、ボラムの伴奏で円周率の数字から作られた「π(パイ)ソング」を倉庫の古ピアノで連弾するまでに。ボラムも母子家庭なので特別枠で入ったのですが、母は富豪の娘で、ボラムも特別な塾に通わせられたりしています。ところが、ピタゴラス・アワードの日、試験問題を見たボラムはなぜか答えを書かず、そのまま教室を出て行きます。また、警備員と書店に行ったジウは、そこで脱北者らしい男性が警備員に、「リ・ハクソン先生では?」と声を掛けるのを目撃します。こうして、謎の「人民軍」を巡る情勢は大きく変わっていくのですが...。

©2022 showbox and JOYRABBIT INC. ALL RIGHTS RESERVED. 

チェ・ミンシクが、「人民軍」というあだなで呼ばれる脱北者にキャスティングされたのは、かつてのヒット映画『シュリ』(1999)での北朝鮮軍兵士の印象が強いせいでしょうか。今回も、北朝鮮なまりの朝鮮語を話すべく、実際の脱北者に会って方言を習得したりしたそうです。最初に登場した時の、いかにも警備員兼用務員のおじさん、といった外見で、ジウを口汚く罵る姿から始まって、その後徐々に知性が感じられていき、クライマックスシーンではいかにも数学の大学教授然とした姿で登場するなど、その変化を見ているだけでも見応え十分です。「人民軍」と「リ・ハクソン(韓国語だと「イ・ハクソン」)教授」との間に横たわる悲劇的な事件も最後に明かされるのですが、それを補うかのようなエンディングには泣かされました。チェ・ミンシクだけでなく、若い2人の俳優、キム・ドンフィとチョ・ユンソもいい味を出していて、3人のアンサンブルが見事です。監督のパク・ドンフンはこれが長編劇映画初監督だそうですが、面白い題材を上手にプレゼンしてくれていて、今後が楽しみです。また、今回が長編劇映画初主役というキム・ドンフィくんも、将来有望ですのでこの際ぜひチェックしておいて下さいね。最後に予告編と本編映像を付けておきますので、一瞬、数学の世界に取り込まれてみて下さい。

4月28日(金)公開『不思議の国の数学者』|本予告

 

4月28日(金)公開『不思議の国の数学者』|本編映像

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『RRR』がここまで人気に! | トップ | ラーム・チャラン主演作『ラ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

韓国映画」カテゴリの最新記事