アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

読み応え満点!「韓国女性映画 わたしたちの物語」(河出書房新社)をいただきました

2022-08-30 | 韓国映画

韓国映画のすごいところは、『モガディシュ 脱出までの14日間』(2021)や『キングメーカー 大統領を作った男』(2021)のようなヒットする大作を生み出すところだけではありません。低予算の作品や、トップスターが出演していない作品でも、面白く、見応えのある作品が山ほどあるところです。ことに最近は、女性監督の作る作品が面白い、というのは衆人の意見が一致するところ。こちらで書いた『なまず』(2018)のイ・オクソプ監督が目下大注目を浴びていますが、実は今年の初めにレポートした「2021年韓国映画観客動員数+興行収入トップ10」にも、女性監督の作品が2本ランクインしていました。そんなこんなで今年の韓国映画のキーワードは「女性監督」かな?と思っていたら、数日前にもJAIHOでユン・ガウン監督の『わたしたちの家』(2019)を見つけ、小躍りして見ました。この素晴らしい作品のお話は後回しにして、そんな時だったので下の本を戴いて、おお~、ありがたい、と思ってしまったのでした。

編者の夏目深雪さんは、我々のインド映画本「インド映画完全ガイド」(2015/世界文化社)と「新たなるインド映画の世界」(2021/PICK UP PRESS)の両冊ともを編集してくれた凄腕編集者ですが、映画評論家としても知られていて、書く力もある人です。今回の「韓国女性映画 わたしたちの物語」(河出書房新社/2,250円+税)でも夏目さんは多くのページを担当していますが、他には『映画秘宝』の岡本敦史さんが編集協力&執筆者として名を連ねています。他の執筆者のお名前はずらずら書くよりも、目次を見ていただいた方が早いですね。ちょっと河出書房新社のサイトにお邪魔して、目次をコピペしてこようっと。

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「韓国女性映画 わたしたちの物語」

◎カラーグラビア 韓国映画の女優たち
イ・ジュヨン/キム・テリ/ペ・ドゥナ 

◎巻頭インタビュー
シン・スウォン……成川彩
イム・スルレ……夏目深雪

I 新時代の女性像  
◎はじめに
女性映画と韓国……夏目深雪
韓国の女性監督たち……岡本敦史

◎私の好きな韓国女性映画   
暉峻創三/朝倉加葉子/岸野令子/土田真樹  

◎女優論
ペ・ドゥナ論——初の女性トリックスター……夏目深雪
虚空と慟哭——チョン・ドヨンの演技……北村匡平

Ⅱ 韓国・女性・表象・歴史  
◎韓国女性映画ベストテン
『サニー 永遠の仲間たち』/『私の少女』/『明日へ』/『お嬢さん』/『金子文子と朴烈』/『逃げた女』/『はちどり』/『野球少女』/『ユンヒへ』/『バウンダリー:火花フェミ・アクション』

◎韓国女性映画座談会
崔盛旭×西森路代×夏目深雪×岡本敦史
第一部:韓国女性映画ベストテン
第二部:韓国映画の女性表象の歴史

◎小論
韓流ドラマの女性像……西森路代
韓国映画における中国朝鮮族・脱北女性……崔盛旭
韓国クィア映画の女性表象……児玉美月
お婆さんたちはどうやって生きてきたのか 韓国映画における高齢女性像……ファン・ギュンミン

Ⅲ 韓国女性映画作家名鑑   
韓国映画史における女性映画――黎明期から九〇年代まで……岡本敦史
二〇〇〇年代以降の男性作家と女性映画作家としてのホン・サンス……夏目深雪
パク・チャヌク……岡本敦史
イ・ジュニク……岡本敦史
コラム「韓国独立映画の女性監督たち」……岸野令子
イム・スルレ……岸野令子
コラム「スポーツ映画の女性像の変遷」……岡本敦史
チョン・ジェウン……岸野令子
シン・スウォン……岡本敦史
コラム「ノワール映画の女性像」……岡本敦史

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とても充実した内容でしょう? 「女性監督映画」ではなくて「女性映画」であるところが肝心なんですが、「女性映画」の定義がいまひとつ明確に説明できない(女性が主人公の映画? 女性の生き方、あり方を追求した映画??)私としては、この本を読むことでそれがわかるかな、とちょっぴり期待しています。

 

ということで、冒頭に戻るのですが、「2021年韓国映画観客動員数+興行収入トップ10」にランク入りした女性監督の映画は上の2作品です。

(左)『恋愛の抜けたロマンス(연애 빠진 로맨스)』 
   公開日:11月24日
   興行収入:61億2044万ウォン/観客動員数:60万人
   監督:チョン・ガヨン
   出演:チョン・ジョンソ、ソン・ソック

(右)『ジャンルだけロマンス(장르만 로맨스)』 
   公開日:11月17日
   興行収入:51億8676万ウォン/観客動員数:52万人
   監督:チョ・ウンジ
   出演:リュ・スンリョン、オ・ナラ

チョン・ガヨン監督は、これまでも2018年の大阪アジアン映画祭で監督・主演作『ビッチ・オン・ザ・ビーチ』(2016)という作品が上映されています(紹介はこちら)が、上の『恋愛の抜けたロマンス』とは全然感じが違う作品だったみたいですね。『ジャンルだけロマンス』のチョ・ウンジ監督はモデル・女優として活躍してきた人のようで、こちらのインタビュー記事の写真を見ると、細身ですごくきれいな人です。もう少し長いインタビューを読みたかった、と思ってしまうのですが、この先、監督としても伸びそうな予感大。両作品とも女性映画には分類できないとは思いますが、見てみたいですね。

ユン・ガウン監督作『わたしたちの家』は、前作『わたしたち』と同じく少女たちが主人公です。両親がケンカばかりするのでいつもオロオロしてしまう小学5年生のハナが、近所で暮らす小学校低学年のユミとその妹ユジンに出会い、両親が仕事で遠くに行っている二人に姉のような存在として接していく話ですが、この3人の子役が実にチャーミングで、引き込まれて見てしまいました。JAIHOに入ってらっしゃる方は、ぜひ見て下さいね。前作『わたしたち』(2015)でも、子供たちが感情を爆発させるクライマックスシーンがありましたが、『わたしたちの家』も見ている方がオロオロしてしまうようなシーンがあります。巧みな脚本と演出に、どっぷりと浸かれる秀作です。そうそう、『わたしたち』の主人公を演じた二人の女の子が、成長した姿を見せてくれるのも嬉しいです。どの役かは、ご覧になってのお楽しみ~♥。

 


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