アジア映画巡礼

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ラビンドラナート・タゴール「少年時代」と「タゴールを語る――文学・歌・踊りの夕べ」

2022-11-10 | インド文化

今年の10月に出版社めこんから、ラビンドラナート・タゴール著「少年時代」が出版されました。訳者は大西正幸さん。これまでもタゴールの「家と世界」(レグルス文庫)や、タラションコル・ボンドパッダエの「船頭タリニ」(めこん)など、多くのベンガル語文学の翻訳を手がけてきた人です。まずは本の外見を見ていただきましょう。帯ありと帯無し画像です。

どちらも素敵でしょう? カバーの絵はゴゴネンドロナト・タクルによる「若きタゴール」で、タゴールの5番目の兄ジョティリンドロナト・タクルによる1877年のスケッチを元にしたもの、とのことですが、ゴゴネンドロナトの祖父はタゴールの父とは兄弟という間柄です。姓の表記が「タゴール」「タクル」と2種類あって、戸惑う方もあると思いますが、「Tagore」と英語で綴るこの姓は、ベンガル語で綴ると「タクル」(ヒンディー語読みだと「タークル」)となり、両方の読み方が混在しているのです。なお、ゴゴネンドロナト・タクルは女優シャルミラー・タゴール(俳優サイフ・アリー・カーンの母)にとっては曾祖父となり、そんなことから彼女がサタジット・レイ監督作『大樹のうた』(1959)でデビューした時は、あのタゴールと縁戚関係にある女優、として騒がれたのでした。下は1980年代に岩波ホールの招きで来日した、シャルミラー・タゴールです。

今回の本「少年時代」は、文字通り、タゴール自身が幼い時から大人になる直前までの自らの思い出を綴った本です。当時のタゴール家の暮らしや周囲の様子が素直な筆致で綴られており、大西さんの美しい日本語ともあいまって、とても読みやすい物語になっています。また、当時の事物や風俗から始まって、植物名などにも大西さんがすべて解説を施していて、耳慣れない言葉もすぐに意味がわかります。この本文下段にある注釈を読むだけでも、知識が豊富になる本です。それに加えて、本文終了後に大西さんによる「解説」が付けられているのですが、これが何と70ページ余りにもなるもので、本書の3分の1を占めています。本文にも挿絵があったりするのですが、「解説」にはタゴールが住んだ様々な家の写真や、ゆかりの人々の写真も載せられていて、これだけでも立派な読み物となっています。インドに関心のある方には、必携の1冊です。アマゾンでのご紹介サイトはこちらです。

さらに今回、この本の出版を機に、次のようなイベントが開かれることになりました。関西にお住まいの方は、ぜひ参加なさってみて下さい。

            

日印国交樹立70周年・インド独立75周年記念企画
「タゴールを語るー文学・歌・踊りの夕べ」

【日時】2022年11月21日(月)15時 ~ 17時
【場所】京都大学吉田本部キャンパス(百万遍キャンパス/下のアクセスの下方部分)総合研究2号館4階大会議室(AA447号室) アクセス
【プログラム】
 司会:池亀 彩(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
 1)開会の辞:竹田 晋也 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科研究科長
 2)在大阪・神戸インド総領事館総領事ご挨拶:Nikhilesh Giri総領事
 3)「マニプリ・ダンス」:外川 セツ(インド舞踊家)
 4)「タゴール文学の魅力 ― 『少年時代』をめぐって」大西 正幸(ベンガル文学研究家)
 5)「タゴール・ダンス」:外川 セツ
<休憩>
 6)パネル・ディスカッション
  モデレーター:中溝 和弥(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
  パネリスト:大西 正幸、外川 セツ、中溝 和弥
 7)閉会の辞:藤倉 達郎(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、KINDOWS代表)

*どなたでもご自由に参加できます。ご来場当日、会場での受付も可能ですが、混雑防止のためできるだけこちらのフォームよりお申し込みください。

            

外川セツさんは幼少時からタゴールの造った学園シャンティニケトンに暮らし、タゴールの詩に曲を付けたタゴール・ソングと、それに振り付けを施したタゴール・ダンスに親しんできた人です。タゴール・ダンスは北東インドのマニプリ・ダンスとケーララ州のカタカリ・ダンスが基礎となっており、「マニプリ」と呼ばれるマニプリ・ダンスにも習熟しているセツさんです。実は私は、40年ほど前にシャンティニケトンで、当時は牧野セツさんだった彼女の踊りを見ているのですが、その時の写真がこれです(撮影:村上元彦氏)。今回は、どの曲を踊って下さるのでしょうね。めったにない機会ですので、お近くの方はぜひどうぞ。

 


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