コロナ拡大で自宅待機している状態の中、雨でない限りは毎日ウォーキングして
ネット購入などし、あとはプライムビデオで海外ドラマを観るという日常は
どちらかというと出不精な私には快適な環境といえる。
「秦の始皇帝」は、中国を初めて統一した冷酷な皇帝、万里の長城を築いた人。
こういう認識しかなかった。
『先入観のない状態で観るのが良い』とレビューにはあったので
まずは1話45分から順に48話の長いドラマを観た。
ドラマを観終わってから、インターネットでだが「始皇帝」とは、どういう人物なのか
調べてみた。
「麗」という女性は架空で、後はほぼ史実を忠実に見事に描かれていて驚く。
ドラマは、秦の始皇帝・嬴政(えいせい)と、麗姫(れいき)の初恋相手で
後に燕国の刺客として始皇帝と対峙する荊軻(けいか)を軸に
戦国時代の秦の進出を描いている。
始皇帝・ 嬴政(チャン・ビンビン)

ネットで書かれている実際の始皇帝は「ブサオトコ」らしいが
主役演じるチャン・ビンビンは撮影当時24歳。
始皇帝の天下統一に向ける策略、悩み、麗に対する熱烈な思いを
抜群の憂いを帯びた雰囲気で演じているイケメン。
荊軻という男性は唯一実在の人物(リウ・チャン)

荊軻は始皇帝の暗殺を試みて失敗し殺される。
始皇帝の謁見の間でのこのシーンは、史実を忠実に描いて残酷。
主人公の麗姫(ディリラバ・ディリムラティー)は架空で
彼女を軸にして取り巻く物語もフィクション。
麗を演じている女優さんはウィグル族の出身で、エキゾチックなのは
トルコ系の顔立ちだからだそう。

この女優は、先の中国ドラマ「皇帝の女傅(じょふ) ハンシュク」で
楼蘭の王女役で出演していた。
剣術の兄弟子でもある韓申を救おうと、始皇帝の前で二人の息の合った剣術を見せる
重要な場面。

麗を守る重要な役割で、報われない愛を、抑えた演技で演じる大人な男性像が
あまりに切なく、荊軻よりずっと魅力を感じる。
「麗」(後に麗姫)と幼馴染の「韓申(かんしん)」「荊軻(けいか)」の
3人は、剣術の師匠でもある麗の祖父の同門の教え子で
孤児だった大師兄(韓申)と師兄(荊軻)、師妹(麗)は
本当の兄弟のようにして剣術に励みながら育つ。
幼いころ、追っ手に追われていた嬴政(えいせい・のちの始皇帝)を
麗と荊軻が助けたという縁があり、秦王に即位した嬴政は麗と再会する。
この時嬴政は麗と気づき、この後、初恋の彼女を妃に迎えようと国中に
お触れを出す。
彼女は荊軻と恋仲であったが、秦王側の策略で後宮に入るしかなくなり
秦王の元に入内(じゅだい)する。
宮中に入った当初麗は、荊軻と引き離され、自分の育った祖国「衛」を滅した嬴政に
まるで拾われてきた仔犬が飼い主に噛みつくように歯向かう日々。
何とか彼女の心をつかもうと、天下の秦王だが、心を砕く涙ぐましい様子は
切ないぐらいに一途でかわいそうにも思う。
次第に麗はその熱意と優しさにほだされていき、心を通わせることになっていくが、、、
秦をとりまく6つの国とのかかわり、戦の状況などを盛り込んで、綿密なシナリオと
史実に出てくる人物のそれぞれの心の内に潜む心情、計略などを
表情やせりふ回しで俳優たちは見事に演じる。
特に、麗のディリラバの剣術シーンは圧巻。
余談だが、私は子供の頃男子が好むようなドラマが好きで
今でも空手を習いたかったなと思うし「男前」と褒められると嬉しい(笑)
中国の美しい景色を映す映像の色合いやアングルがしなやか。
人物の描き方も表現も日本人の国民性と共通するように思う。
剣術が一貫した筋になっていて、目にも止まらないような太刀まわりや間合い。
私にはその知識はないが「武士道」の世界観を描いているのだと思う。
今では薄れてきている日本人も持っている「精神性」を感じる。
48話を一気に観たが、始皇帝が最後に一人だけ残る結末に
「なんでこんなに悲しいのだろう」と、最終回が終わって画面が消えても
しばらく涙が止まらない。これほど余韻が漂うドラマは久々で
是非いろんな方に観て頂きたいと思う。