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黄泉の国へ

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詐欺に出会って、お父さんは天国へ行きました

2024-11-14 15:43:00 | 日記
そのときの内容は
こうだった




「もしもし?おとうさん?」

普通に電話にでた
ワタシの声に


父は無反応だった



そして
ギイイーバタンと
扉の音がして
「やれやれよー」
漏れるような声がした


「おとーさーん、おとーさーん」
やはり
ワタシの声に無反応





父はスマホでしばらく
遊んでいたんだろう



そしてトイレに入ったのだ


スマホはシャツの胸ポッケの中



意図せずかかってくる
スマホに替えて不慣れな頃に
起きるアルアルなやつだ


耳も悪いんだから
ワタシが叫んだって聞こえないので
電話を切ろうと思ったら
あの女性の声がした


「おとさん、おとさん!さんまい いるからねー」


は?
さんまい?
いるって
何が?

訳わからないので
話を聞いてみることにした


すると父が
「朝もやったろおが、もうないで」


女性は
「おさいふ、みせてくれないとダメだからねー」


ドンドンドンと
ドアを叩いたのか
蹴ったのか
音がした


「ください」
「駄目」のやりとりが
少し続き


父はトイレから出て
財布を取りに行き
女性に財布の中を見せた


「ほれ見てみー、3万も入っとらんじゃろー
1枚しかないでーあんたに朝あげたんじゃから」


女性は
父から
財布の中のお金を受け取り


いや
抜き取り


「勝ったら、おにくー食べにいくか?」


そう行って
出て行った



3枚は
3万円のことだ


この日の朝
父から一度お金をもらい
パチンコへ行き
負けて帰り
負けを取り戻すために
またパチンコへ行ったのだ



一旦電話を切ってから
少し考えたのち
ワタシから電話をした



というわけで



この頃から
女性は割と実家にいるようになった




ワタシはまた
父に自由に近づけない



悔しいけど


まだ父が元気だということが


ワタシを不安にさせなかった



まさか

1年後に
天国へ行ってしまうなんて



誰も思いやしない


つづく










詐欺に出会って、お父さんは天国へ行きました

2024-11-12 15:41:00 | 日記
ワタシは父に電話をかけた

「スマホは慣れた?」

「いや慣れんよー」

「奥さん、どうしとるん?」

「チンジャラホイじゃ」



そして
こう聞いてみた
「お金渡してない?」

すると父は
「もうやっとらんで(あげてない)」

「パチンコのお金はどこから出とるん?」
といえば

「さあどうかのー、どうしとるんかのー
わしも知らんでー」
父はワタシに嘘をついた


ワタシに余計な心配をかけない為だ



実は
この電話の30分くらい前のこと


父から電話がかかっている



つづく


詐欺に出会って、お父さんは天国へ行きました

2024-11-11 15:59:00 | 日記
翌日には
すぐにスマートフォンを買いに行ったそうだ

使い方に慣れるまでしょっちゅうドコモに通ったらしい


法事から別れて
1週間ぐらいして電話したときも
まだ全然スマートフォンに慣れていなかった


ドコモがモール内にあるので
待ち時間に退屈はしないでも
お店のほうは
毎日登場する父に少しは困られたかもしれない



株やっている父には魅力的で
カープの試合のリアル情報も知れるとなれば
すぐにでも欲しくなる
スマートフォン


女性はとっくにスマホを使っているようだった
便利なスマホに何故かそれまで飛びつかなかったのは


会話の問題だと思われた



父がスマートフォンを持つようになると
女性はどこからともなく
父のもとに帰ってき





つづく


詐欺に出会って、お父さんは天国へ行きました

2024-11-09 16:23:00 | 日記
法事で父はしっかり呑んだ

運転手役のワタシには
たくましく
豪快な父は健在だ


帰りには
三次ワイナリーへ寄り
試飲をしまくり
数本のワインを買い
ご機嫌な父とワタシは
ドライブを楽しんだ



時々サービスエリアで
コーヒーを飲みながら休憩をし
父はその度に
「それ見せて」



ワタシのスマホを気にするので



「お父さんもスマホにしたら?」



「そーよのー!」







その時の父のキラキラした目は
忘れない



父は
先に逝ってしまった兄弟たちの分まで
もっと楽しく
この世で過ごさなければといい


自分なりに
気持ちを持ち直そうとしているようだった





ワタシのスマホで出来る色々なことに
興味津々
無邪気な父が
嬉しかった




つづく






詐欺に出会って、お父さんは天国へ行きました

2024-11-07 19:33:00 | 日記
叔父が亡くなったと聞いたとき
ワタシは大阪にいた



すでに父は
車で3時間以上もかかる
隣県の田舎の斎場にいて


1泊して
翌日の葬儀の後
火葬場に参列してから戻るといい



ずいぶんお酒も飲んでいるような
話しぶりだった


訃報を知らせる為もあるが
実家の金魚にエサをあげてきて欲しいらしく


ワタシが実家へ行かれないというと
1日ぐらい餌がなくても
金魚は死なないだろう
と言って電話を切った




翌朝またも
前夜と同じ内容の話をして
金魚に餌をあげに行って欲しいという



朝方、ハイハイしながらトイレに行く程
随分呑んだのだそうだ



父はまた一人なんだなと
聞かなくてもわかる



49日の法事は
父に同行して斎場へ向かった



高速道路を使っても
車で2時間以上はかかる


道案内をしてくれる
父にはほんとに感心した


一度通っただけの道だというのに
頭の中に地図を描き
それをなぞるように
目印の橋や店まで
記憶していて

「ここを右じゃ、これは左じゃ」

迷うことなく
車を走らせた


道中
あの女性から何度も電話があった


父が心配なのか
私といることが不安なのか


とにかくやたら頻繁にかけてくるので
父も
「こんなに再々かけてきたら、充電がなくなるでー」
といった通りに


斎場に着いた頃には
父の携帯の充電は
本当になくなった



女性は
この頃も実家にはいなかったのだ



つづく