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山岳ガイド赤沼千史のブログ

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遙かな尾瀬 遠い空~~♪

2014年05月21日 | ツアー日記

 ♪遙かなお~ぜ~~、遠いそら~~~♪

 と言う歌があるが、それは本当のことだ。鳩待峠から残雪の斜面を尾瀬ヶ原に降りて、山の鼻からひたすら竜宮を目指す。五月あたまの尾瀬ヶ原は、ほんのわずか水たまりのような湿地が顔を覗かせ始めてはいるが、その殆どはまだ一面の残雪に覆われていて、僕等はひたすらそのザラメ雪の雪原を歩いて行く。尾瀬ヶ原の夏道と言えば木道だが、それに沿って歩いて行くと、時々雪が薄いところがあって突然落っこちたりする。初めは笑っていたお客さん達も、度重なるそんな事に次第に口数が少なくなる。緩んだザラメはズムズムとして足が取られるから、一歩が一歩というわけにも行かず、体感的には二倍の距離を歩いたような感じする。常に次の一歩がボコッとはまらなないかどうか心配しながら歩くのはかなり疲れる。水芭蕉も、ワタスゲも、リュウキンカも、僕等を励ましてくれる物は殆ど何も無い一面雪の尾瀬ヶ原は確かに美しいのであるが、何とも退屈でもあるのだ。遙かに遠くぽつりと見える竜宮小屋までの長かったこと。遙かな尾瀬は、本当の事である。

冷たくないのかね?水に浮かんでて、雨も降ってるし・・・動物たちは何一つ持たず暮らしている

所々川に出くわすから,やはり歩くのは木道沿いになる 

 明るくなるのを待って竜宮小屋を出る。僕等が目指すのは景鶴山。一応この山は登山禁止と言うことになっている。ここ尾瀬ヶ原一帯はご存じのとおり、あの東京電力の私有地で、それを管理する東京パワーテクノロジー(旧尾瀬林業)と言うところが景鶴山だけを登山を禁止としているのだ。その理由はよくわからない。

 景鶴山に登るためにはどうしても通らなくてはならないヨッピ川にかかるヨッピ橋と言うのがあって、数年前のことだが、鳩待峠に「ヨッピ橋は工事のために通れません」と言う張り紙がされた事があったが、実際行ってみると工事など何もやってなくて、いつもと変わらぬ敷き板が外されたヨッピ橋がそこにはあった。

 最近はそんな嫌がらせも何も無いが、そこまでしてここを登山禁止にする理由はいったいなんなのだろう。山頂までは100パーセント雪の上だ。東京電力が言うような植生破壊の危険性などあるはずもない。まあ、私有地だから、所有者が勝手な事を言えるのは解ってる。だが具体的に我々の登山を阻止する行為を何もしていないのなら、お目こぼしに与っていると考えて、ありがたく登らせて頂こうと思うのだ。もちろん自己責任で。

ヨッピ橋を渡る、敷き板は雪の重みで壊れるのを防ぐため毎年外される。川に落ちればただでは済まない。

景鶴山山頂には誰かが設置した小さな看板があるのみ、ひっそりとした雪稜上のピークだ。

 この日景鶴までの雪の状態は非常に良くて、心配していた山頂直下の雪稜も問題なく登ることが出来た。残念ながら山頂からの展望は無かったが、再びヨッピ橋に戻る頃には青空が戻ってきた。ここからは再び遙かな尾瀬を満喫する。今度は山の鼻を目指して、ズムリズムリと歩いて行く。今回は正面に至仏山が迎えてくれてはいるが、行けども行けどもその大きさが変わらない。またしてもぼくらは雪穴にはまりつつ歩く。沼を渡る木道に残るわずかな雪がまたやっかいだった。それはまるで綱渡りの様である。落ちたら大変なことになる。山の鼻に着いて、最後は鳩待峠まで登り返して登山は終わる。

至仏山

首まで落っこちてしまったお客さん、おいおい、なんでそこ踏むねん?(笑)

 尾瀬ヶ原は阿賀野川の上流只見川の源流に当たる。その昔燧ヶ岳の火山活動によって谷がせき止められ出来たといわれる広大な高層湿原地帯だ。上高地なども似たような成り立ちの歴史があるのだろうが、この広さは僕等人間の想像を超えたものだ。東京電力がここを手に入れた時、ダムにしてしまえと言う計画があったそうだが、それは幸いにも実現しなかった。この貴重な大湿原がダムに?・・・・・・人間とは恐ろしい事を考える動物だ。神をも恐れぬ行為の結果が今同じ福島県で起きている。

端午の節句は旧暦に限る。鯉のぼりは五月の空をずっと泳ぎたいんだ、きっと(花咲の湯)