goo blog サービス終了のお知らせ 

かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

人生における優先順位

2014年08月04日 | 昼下がりの外来で
「自分の命にも限りがあるのだ」

このことは、考えてみればごくごく当たり前のことではあるのだけれど、そんなことをいつも気にしていては、うつ病になってしまうかもしれない。

しかし、かつて、「限りある命」を思い知らされる出来事があって、それ以来、ワタシの人生観は変わった。

それまで漠然と考えていた人生におけるさまざまな物事の優先順位が、がらりと変化したのだった。

そうして自分のなかで、ある種のキーワードになったのが、この「人生における物事の優先順位」である。



朝起きて、窓を開けることとトイレに行くこと、どちらを先にしようか?

そんなふうに私たちは日常的に物事に優先順位をつけながら生活をしている。

でも、自分の命の残り時間が、不幸にもある程度明確にわかってしまった場合、最善の時間の使い方をするためには、この「優先順位」は更に重要となる。



食道がんと診断されて、主治医の勧めで禁煙外来に通い始めた方がいる。

「こんなにすんなりとタバコが吸わずにいられるなんて、ビックリです」

ニコチンパッチを使い始めて、禁煙治療は順調。


『それはよかった!手術の予定はいつですか?』


「手術は延期してもらおうと思っているんです」


術後の回復が心配なので、来月の稲刈りを終えてからにしたいと、主治医に頼むつもりだというのだ。

「かなりこだわって作っているコメなんです。毎年お客さんから注文をうけて、作っているんです。だから、信頼して注文してくれているお客さんを裏切るようなことは絶対したくないんです」

『こういう病気の治療は、早いほうがいいんですよ。一ヶ月以上先延ばしにするなんて・・・病気の治療がうまくいけば、来年またおコメは作れますよ』

「来年のことは考えてません。命があるかどうかもわからないし・・・だから、とにかく今年はきっちりやっておきたいんです」



昨日のH子ちゃんの爆弾発言に対して、N先生とアタシは、どちらかというと苦言を呈した。

大型犬4頭ともなれば、餌代もバカにならない。
当直のたびに預けているペットホテル代だって増える。
稼ぎの大部分を、犬にかけることになるのでは?
子犬の頃は、体調壊すことも多いし、どこも預かってくれないし。
今だって充分大変そうなのに、仕事との両立は大丈夫なの?
云々


それに対してH子ちゃんは「趣味ですから」とケロリ。

「本当は5頭で計画していたんです。そうすれば、1頭目が死ぬ頃には、5頭目が・・・とか考えて。自分が先に死んで、犬だけが残されるなんていうことだけはしたくないと思ってます。」


人生色々。
優先順位のつけ方も色々。

理解しあいながら、みなが人生を悔いなく楽しめたらいいよね。













コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする