CULTURE CRITIC CLIP

舞台評
OMSの遺志を引継ぐ批評者たちによる、関西圏のアートシーンを対象とした舞台批評

レベッカ

2010-06-25 15:34:20 | 西尾雅
ゴシックロマンと謳われる原作はミステリーやホラー、心理サスペンス、ラブロマンスの要素がミックス。最大の山場はレベッカの死の謎解きだが、少女「わたし」の成長譚と見る方がより興味深い。無垢で傷つきやすい少女から、母性愛あふれる大人の女へ、さなぎは脱皮し蝶が羽ばたくように「わたし」は突然生まれ変わるのだ。もう戻ることはない、あの少女だった日々。本作が回想で語られるのは必然だ。広大なマンダレーの屋敷はもはやない。朽ち果てた屋敷跡の夢から物語は紡ぎ始められ、何十年か後の現実に舞い戻り、目覚める。苦く甘酸っぱい思い出、もう帰らない失われた時間、それが本当の主役だ。ダンヴァース夫人にとって、亡きレベッカこそが永遠かつすべてであったように。 . . . 本文を読む

薔薇とサムライ

2010-06-02 10:49:17 | 西尾雅
「サイコーだー!!」 劇中、浦井健治扮するシャルル王子が、天海祐希扮するアンヌを賛美する台詞が、本作をすべて言い表す。やはり新感線はサイコー、劇団30周年記念作品にも関わらず、お馬鹿なエンタメで押しまくる様は、私が出会った「井戸穴じょーじの大冒険」以来何も変わらず、一貫したその姿勢とますますのスケールアップの落差に めまいを覚える。テイストはまったく同じ、懐かしさでデジャビュに襲われるほど。なのに巨大な3面LEDスクリーンを使った映像と舞台のシンクロや、大阪城ホールのライブ並みの照明と音響の進化は留まるところを知らない。大劇場を満杯にする観客の多さにも旧来のファンはとまどうが、劇団に追いついたのは時代の方だ。 . . . 本文を読む