CULTURE CRITIC CLIP

舞台評
OMSの遺志を引継ぐ批評者たちによる、関西圏のアートシーンを対象とした舞台批評

マルグリット

2011-05-13 09:47:47 | 西尾雅
春野寿美礼は高い歌唱力を持ち、はかなげで薄幸なマルグリット像を演じたが、藤原紀香からは華やかさがこぼれる。下り坂の元歌手でナチス将校に庇護される愛人の倦怠と爛熟には、上品過ぎるのが逆に難。意外と歌は健闘(1年近く特訓したそう)、透明な声質がマルグリットの純粋さにぴったり。ベッドシーンやリンチでなぶり殺しにされるシーンを体当たりで演じる女優魂に目を見張る。 . . . 本文を読む

港町純情オセロ

2011-05-13 09:35:17 | 西尾雅
シェイクスピアの原作を、関西で縄張り争いする戦前(1930年)のヤクザ社会に置き換える。神部(かみべ)を支配する赤穂組傘下の藺牟田(いむた)組組長オセロが、若頭補佐・伊東郷の計略にはまり、新妻モナの浮気を疑い悲劇を招く。原作の舞台、ヴェニスとキプロス島が神部と小豆島(あずきじま)、対戦国のトルコは抗争中の六国組に代わる。むろん神戸と小豆島(しょうどしま)のもじり、六国は四国そして瀬戸中海は瀬戸内海を指す。登場人物や地名ひとつにも新感線テイストがあふれるが、あくまで原作に忠実(脚色:青木豪、演出:いのうえひでのり)。最大の違いは原作のイアゴー=伊東郷(田中哲司)の妻エミリア=恵美(松本まりか)にゲイの弟・沖元准(大東俊介)を付け加えたこと。 . . . 本文を読む

「蘇りて歌はん」遊劇体 精華小劇場

2011-04-19 19:04:58 | 松岡永子
2011.3.5(土)14:00 作・中島陸郎 演出キタモトマサヤ これまで中島陸郎作の芝居をいくつかみたが、ああこれは好きでないと、いつも思った。 芝居の出来不出来ではない。戯曲のよしあしでもない。 ただ、好きでないということが最初の印象だった。そうするとなかなか面白くはみられない。 しかし、今回はとても面白かった。そして、感動した。中島氏の分身らしい長田が、自己存在の支柱である芝居を否定する . . . 本文を読む

「石榴の罠」P・T企画

2011-04-19 18:05:55 | 松岡永子
2011.3.20(土)18:00 欧風レストランChez Noix 観客参加型演劇。 舞台と客席の区別はなく、役者は観客の間を歩いたり、観客の隣に座ったり、立ったりして芝居が進む。 原作のミステリを劇に脚色して(脚色・演出:和泉めぐみ)、30分の問題編、観客のための15分の解答時間、15分の解決編(正解者にはお菓子をくれる)、と全体を1時間におさめる。 この劇団を見たのは2回目。 前回は探偵 . . . 本文を読む

「わたしノほしデハ鯨ガおよグ」 コトリ会議 

2010-12-05 07:53:51 | 松岡永子
2010.11.27(土)19:00 ウイングフィールド  見ていて、かわいいなあ、と思う。こころが、しん、として、この舞台は好きだなあと思う。  通信販売で買った超高性能ダッチワイフのりりりが、あと一週間で機能を停止します、と告げる。購入時に入っている電池はお試し用なので保証の限りではない。電源を入れてから一週間しかたっていないのにというクレームは却下される。  彼女は特にセクシーでもない、 . . . 本文を読む

「密会」 くじら企画

2010-12-04 10:19:20 | 松岡永子
2010.10.30(土)19:00 ウイングフィールド  以前、劇評を書いたことのある作品の再演。   http://www.log-osaka.jp/movement/ccc/body.html?aid=82  今回は旧バージョンのビデオ上映もあり、ああそうこんなふうだったと思い出しながら、比べて見ることになった。  幸せそのもののような白い光に包まれて若い主婦がゆっくりと通り過ぎてゆ . . . 本文を読む

「サラサーテの盤 」くじら企画

2010-11-26 11:56:58 | 松岡永子
2010.8.28(土)19:00 精華小劇場  カラン、コロン、カラカラカラカラカラ…  屋根に小石が落ちて、それが転がっていく音がする。なぜ、屋根に小石が落ちたのか。小石はどこから来たのか。それに、小石が地面に落ちる音はしなかった気がする。小石はどこに行ったのか。  そんな台詞には、たとえばどこから来てどこへ行くのかわからない人生の寓意をよむことも可能だ。でもそんなのはつまらない。ここにある . . . 本文を読む

「蒼天。神を殺すにはいい日だ」 A級MissingLink 

2010-11-22 11:45:56 | 松岡永子
2010.11.6(土)19:00 アイホール  二人の男が穴を掘っている。どうやら親子らしい。  この地方では骨壺を各家の墓所に埋める風習があって、男は亡くなった祖父のために穴を掘っている。  父親が「おじいちゃん若い頃、脚本(ほん)書いとったらしいで。お棺に入れ忘れたから一緒に埋めたろ思て」と包みを渡す。  男が署名のところを見ると、祖父の名前につづけて「and神」、と書いてある。 「なんや . . . 本文を読む

惑星ボーイズ 伊藤えん魔プロデュース

2010-10-29 15:39:02 | 西尾雅
本作の戦争批判と恋バナは驚いた。あのえん魔が正面切って戦争と恋愛に言及するとは。「オンナとヤッたことある?」というストレートな台詞も今までのえん魔なら考えられないこと。草食系男子に活を入れる応援が、たしかに最近のえん魔作品に多く見られたが、ここまで恋愛を堂々と肯定し、観客に薦め、鼓舞するとは驚き。もっともそこでえん魔一流の逆説が全開。カップル客をいじって、観客から嫉妬と共感が混ざる笑いを引き出す。 . . . 本文を読む

ブレヒトだよ! 衛星

2010-10-05 16:48:11 | 西尾雅
再演だが、古さをまったく感じさせない。ホール柿落としに際し、あらためて蓮行が演劇人としての決意を表明。とはいっても難解さとは無縁、とっつきやすいエ ン上げるワザは手馴れたもの。 赤字続きの小劇団主宰・梶浦が、銀行カウンターで次回公演の資金を借りようと融資の相談に来る。が、窓口の銀行職員は、やる気まるでなしの新米クン。梶浦は演劇が社会に必要な理由をあれこれ説くが、のれんに腕押し。と、隣のカウンターを見れば、困惑顔の女子銀行員。相手の客は、変装しているがたしかに知り合いの 劇団主宰とその看板女優だ。 . . . 本文を読む