CULTURE CRITIC CLIP

舞台評
OMSの遺志を引継ぐ批評者たちによる、関西圏のアートシーンを対象とした舞台批評

レベッカ

2010-06-25 15:34:20 | 西尾雅
ゴシックロマンと謳われる原作はミステリーやホラー、心理サスペンス、ラブロマンスの要素がミックス。最大の山場はレベッカの死の謎解きだが、少女「わたし」の成長譚と見る方がより興味深い。無垢で傷つきやすい少女から、母性愛あふれる大人の女へ、さなぎは脱皮し蝶が羽ばたくように「わたし」は突然生まれ変わるのだ。もう戻ることはない、あの少女だった日々。本作が回想で語られるのは必然だ。広大なマンダレーの屋敷はもはやない。朽ち果てた屋敷跡の夢から物語は紡ぎ始められ、何十年か後の現実に舞い戻り、目覚める。苦く甘酸っぱい思い出、もう帰らない失われた時間、それが本当の主役だ。ダンヴァース夫人にとって、亡きレベッカこそが永遠かつすべてであったように。 . . . 本文を読む