写真は20年以上も前のものとなりました

つれづれなるまゝに日ぐらしPCに向かひて心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつづっていきます

タマネギと涙

2016年07月26日 | 随想

 

ハウス食品が「涙の出ないタマネギ」を今秋から全国のスーパーなどで本格的に販売する、のだとか。チッ、よけいなことを・・・。

涙の出ない玉ねぎ」は2013年の「イグノーベル賞」を受賞(ノーベル賞のパロディ版)しているそうで、その受賞理由が「タマネギが人を泣かせる生化学的なプロセスは、科学者が考えていたより複雑であることを明らかにした」という、何それ?というような理由だそうである。レトルトカレーの製造工程の合理化を目指していたら、結果的に涙の出ないタマネギの開発につながったというのだが、画期的な発見というものは得てしてそういうものなのだから、ここはまぁ、受け流しておくしかないだろう。

しかし、である。

タマネギと言えば「涙」。タマネギに涙はつきものである。そういう出だしのコラムが日本中を感動で震えさせたことがある。再掲になるが、2012年1月17日付の読売新聞「編集手帳」をあらためて紹介しておきたい。

タマネギに涙はつきものである。「玉葱(たまねぎ)の 皮 剥(は)ぐ時に 易々(やすやす)と人にも見せて 涙ながせる」(富小路禎子(とみのこうじよしこ))。別に理由があっての涙を、タマネギにこと寄せて流した経験は歌人に限るまい◆17年前の1月16日、兵庫県芦屋市の米津漢之(よねづくにゆき)君(当時7歳) と 深理(みり)ちゃん(同5歳)は 生まれて初めて、翌日の夕食用に 二人でカレーを作った。兄と妹は この記念すべき合作のカレーを口にすることができなかった。二人は翌朝の地震で亡くなる◆「私には会ったことのない兄と姉がいます」。2年前、震災の追悼式典で 小学6年生・12歳の米津英(はんな)さんが挨拶した。「わが家では毎月17日にカレーを食べます」。今夜もそうだろう◆阪神大震災からきょうで17年になる。歳月は流れても、親御さんの耳には幼い二人がはしゃぎながら料理をする声がいまも聞こえるであろうことを思うとき、タマネギをむく お母さんの目頭は想像するまでもあるまい◆カレーか、ハンバーグか、亡きわが子の好物で献立を考えているお母さんは多いことだろう。1月17日のタマネギは、3月11日のタマネギは、普段にまして目に染みるはずである。

 

1月17日のタマネギ、3月11日のタマネギ、その他いろいろな日のタマネギがあるはずだ。

そろそろ、あの暑い夏の日もやってくる。