「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.802 ★ 中国・習近平が生み出した「余剰男」たちが暴走…!「長期停滞」と  「排外主義」のヤバすぎる関係と「デジタル・ナショナリズム」が”日本へ飛び火  する日”

2024年11月01日 | 日記

現代ビジネス (藤 和彦:経済産業研究所コンサルティングフェロー)

2024年10月31日

海外に飛び火する「デジタル・ナショナリズム」

Photo/gettyimages

中国の景気低迷は民心の荒廃を生み、それが暴力に連鎖している可能性がたびたび指摘されるようになっている。

前編『習近平の経済無策で「排外主義」が止まらない…!「長期停滞」と「過剰労働力」で大量に生み出される「ナショナリズム」の危険な実態』でもお伝えしたように、中国政府の経済対策に各国の経済首脳やエコノミストは、あきれ顔だ。

 10月22日に開かれた国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会の記者会見で、イエレン米財務長官は「中国の国内総生産(GDP)に占める個人消費の割合を高めることが非常に重要だが、今のところこれに対処するような政策はない」と述べた。

 中国経済を長年ウオッチしてきたスティーブン・ローチ氏(元モルガン・スタンレー・アジア会長)は「中国経済は日本の『失われた30年』に非常に似た状況にあり、金利を引き下げても経済を刺激することはできない」と指摘している。

 こうした状況が、SNSなどで外国人排斥を訴える「デジタル・ナショナリズム」を喚起し、日本人をはじめ外国人襲撃につながっているのではないかという懸念を生んでいる。しかも、事態はそれだけにとどまりそうもない。 デジタル・ナショナリズムは、中国国内だけではなく海外での襲撃事件につながっている可能性がある。

「余剰男」の絶望

経済低迷が多くの「余剰男」を生んでいる…Photo/gettyimages

米ラジオ・フリー・アジアは「中国当局は犯罪に該当しない些細なことをした者も容疑者として扱っているため、拘置所の収容者が大幅に増加している」と伝えている。だが、中国ではこのところ子供が巻き込まれる事件が相次いでいる。

中国東部浙江省寧波市で22日、登校中の女児と母親が50歳の男に刃物で襲われる事件が起きた。日本人が巻き込まれたとの情報はないが、1ヵ月前の深圳市の悪夢(日本人学校に通う10歳の男児が登校中に44歳の中国人男性に刃物で襲われ死亡した事件)がよみがえってくる。

中国当局は一連の事件の犯行動機を説明していないが、筆者は「犯人に共通した特徴があるのではないか」と考えている。 中国で数十年にわたる一人っ子政策と根強い男児選好志向によって、性比の不均衡が深刻になっている。2020年末時点で「約3500万人の男性が余剰」との推計がある。35歳から55歳までの年齢層が大宗を占めるとされている。

仕事をリストラされ、家族もなく、絶望した「余剰男」たちが、女性や子供などの弱者を標的にした犯行を繰り返している可能性があるのではないだろうか。 気がかりのは、この傾向が世界各地に広がっていることだ。

「失恋から愛国へ」海外に広がる中国ナショナリズム

独国際放送局ドイチェ・ヴェレ(中国語版サイト)は10月14日「ドイツで中国人女性をターゲットにした性的暴行事件が頻発している」と報じたが、ドイツ警察の捜査から犯人は中国籍であることが判明している。

子供を狙った犯行も起きている。 スイスのチューリッヒで10月1日、中国籍の男が路上を歩く幼稚園児の集団に刃物で襲いかかり、3人が負傷(そのうち1人が重傷)する事件が発生した。 失恋の痛手がゆがんだ愛国主義にすり替わり、鬱積する不満を爆発させる道具となったと言われている。豪州でも8月末に中国籍の男が生後9ヵ月の赤ちゃんに熱いコーヒーをかけて重度のやけどを負わせている(10月21日付RecordChina)。 日本でも今後、このような事件が起きる可能性は排除できないと思う。

日本で高まる「反中感情」にも警戒が必要

ナショナリズムが日中関係に暗い影を落とす… Photo/gettyimages

出入国在留管理庁によれば、昨年末時点の在日中国人の数は約82万人、その数は山梨県などの人口に匹敵する規模だ。 特に多いのは東京で、約25万人を超えている。コミュニテイーの拡大に伴い、「中国的論理」が日本でも幅を利かすようになっている。

 中国政府が日本の「中国人社会」に介入している実態も明らかになっている。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは10月10日、「中国政府に批判的な在日中国人に対し、中国当局が嫌がらせや脅迫をしている」と発表した。

日本でもスイスの事例のように、ゆがんだ愛国主義に駆り立てられる者が出るのではないかと警戒感が高まるのも時間の問題だろう。 もちろん、在日中国人は様々な階層の人々で構成されているので、国籍だけで敵がい視するのは愚の骨頂だが、日本でも反中感情が高まっていることも踏まえておく必要はあるだろう。 なんらかの事件が起きれば、日中関係は戦後最悪の状況に陥ってしまうのではないだろうか。

 さらに連載記事『習近平、もう手遅れだ…中国19億人の“ケチケチ旅行”が映し出したデフレ経済「悪夢の真相」』では、中国経済の実態を詳しくお伝えしているので、こちらも参考としてほしい。

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No.801 ★ 半導体の対中国規制、いたちごっこ続く次の焦点 アメリカが圧倒的シェアを誇る設計技術がカギ

2024年11月01日 | 日記

東洋経済オンライン (情ポヨ : 半導体エンジニア)

2024年10月31日

半導体製造装置の対中規制は着実に強化されているが、狙い通りの効果が出ているかは常に確認しなければならない(写真:Bloomberg)

連日、半導体に関するニュースを見ない日はないが、多くの人にとって理解するのが難しいのが先端半導体関連の対中輸出規制だろう。アメリカは中国の半導体技術の発展を警戒しており、中国に対する半導体関連の規制を相次いで強化。米中デカップリングの代表的な事例となっている。

輸出規制でも対中比率は上昇傾向

現在、アメリカ政府とその求めに応じた日本など各国政府が先端半導体やその製造に必要な装置、技術について中国への輸出を事実上禁じている。ただ、輸出規制を実施しているはずなのにオランダ・ASMLやアメリカ・AMAT社、日本・東京エレクトロンなどの売り上げに占める中国向けの比率は図1に示すように下がるどころか、むしろ上昇しているのである。

図1:主要半導体製造装置メーカーの中国向け比率推移(各社IR資料を基に筆者作成)

この上昇傾向に疑問を持つ方は多いだろう。要因は需要側と供給側の双方にある。需要側である中国内の半導体メーカーが将来のさらなる規制強化を想定して、装置を買いだめしようとしている。逆に供給側の半導体製造装置メーカーは台湾や韓国などの発注が減少している穴埋めをしてくれる顧客を求めている。

双方の思惑が一致した結果、対中売上比率は上昇した。もちろん現在中国向けに販売されている装置は輸出規制に基づいて許可を得た製品だけである。それでも中国が装置を爆買いして、装置メーカーの業績を下支えしたのは確かだ。だが、最近のASMLなどの受注残高発表を見ると中国バブルも終焉が近づいているようにみえる。

そもそも米中デカップリングが生じたのは、多くの識者がすでに解説してきたように5G向け携帯基地局市場において中国・ファーウェイ(華為)のシェアが高まったからだ。ファーウェイは否定しているがネットワークの中枢である基地局に、情報を奪取できるスパイ関連機能が埋め込まれるリスクをアメリカやその同盟国は懸念している。

今まで強化されてきた対中半導体規制はファーウェイ製品の排除を進める一環として、2019年から本格化したのがその始まりである。図2に主に半導体関連の輸出規制の経緯をまとめている。

図2:ファーウェイやSMICなどに対する輸出規制推移(公開情報を基に筆者作成)

輸出規制の主要焦点は露光装置

アメリカは2020年より中国・SMICに対しての輸出制限も行い、その後もその規制範囲を拡大しながら、製造装置で高いシェアを誇る企業を有する同盟国の日本やオランダにも同様の輸出規制を求めて今にいたる。

現時点での半導体製造装置の輸出規制を行う対象製品は以下の3点である。

・14nm/16nmノード以下のロジック半導体製造に使用可能な装置
・128層以上のNANDメモリ製造に使用可能な装置
・配線間隔(HP:ハーフピッチ)18nm以下のDRAM製造に使用可能な装置

焦点になるのは半導体製造のキーである露光装置の輸出管理だ。オランダは2019年にASMLによるSMICへのEUV露光装置の輸出を許可しなかったことから始まり、アメリカの要請に応じて2023年9月より7nmノード以下の先端ロジック半導体が製造可能なASML社の液浸露光装置NXT:2000iなどの輸出規制を開始した。

ただし、これでは上記で示した輸出規制の対象範囲の一部にしか対応していないことになる。そこで2024年9月より16nm/14nmノードのロジック半導体が製造可能な液浸露光装置NXT:1970i/1980iも規制対象に追加された。これがASMLの中国向け受注高が減少し始めた理由だと筆者は考えている。

さらなる規制強化は中国側の動きも念頭にあるだろう。2023年にファーウェイは7nmノード技術で製造された半導体チップが内蔵されたスマートフォンMate 60 Proを販売した。2023年の輸出規制強化に合わせたタイミングだったこともあり、「いくら輸出規制しようが必ず追いつく」との意思表明にも感じられた。

このような動きがオランダによる追加規制につながったのだろう。ファーウェイのスマホに搭載された7nmノード技術の半導体チップ(Kirin 9000S)はSMIC社で製造されたとみられる。液浸露光装置を使用したマルチ・パターニング技術を使用したとみられるが、台湾・TSMCの7nmノード世代の最初の製品もマルチ・パターニング技術を使用し製造されていたことからも、中国が輸出規制で入手不可能なEUV露光装置を使用せずに生産できた可能性は十分にある。

ただし、EUV露光装置を使用しないマルチ・パターニング技術は歩留まりの向上が難しいことが知られている。図3にSMIC社の売上と営業利益の推移を示す。売り上げは増えているのに営業利益がまったく増えていない。さらなる詳細な分析は必要だが半導体製造装置の買いだめ影響があるほか、先端製品の歩留まりが低迷していることも主要因だと筆者は考える。

図3:SMICの売り上げ・営業利益推移(SMIC社IR情報を基に筆者作成)

5nmノード世代までは経済合理性(製品歩留まり)を無視して量産してくるはずだが、EUV露光装置が必要になる3nmノード世代以降をキャッチアップするのは多くの時間を要すだろう。その意味で半導体製造装置輸出規制の効果はあると考えるが、この輸出規制は中国が半導体製造装置を内製する動きを加速させるだろう。

一方でニュースに出てこない問題は半導体設計技術の安全保障上の管理である。図4にアメリカ半導体産業協会(SIA)がまとめた分野ごとの地域シェアを示す。半導体の回路設計ツール・情報にあたるEDA&Core IPはアメリカが2021年で72%のシェアを占める。

図4:アメリカ半導体産業協会(SIA)が発表した2021年の各分野における地域別シェア(SIAから引用)

設計技術の保持が今後の焦点

アメリカ製の設計ツールがなければ半導体チップの設計はできない。そのため、これらの管理・規制が次の焦点になるだろう。最近、ファーウェイ製品から規制されていたはずのTSMC製の半導体チップが見つかった。詳細はこれから明らかになっていくだろうが、ファーウェイの意図をくんだ第三者(を装った)ファブレス会社がTSMCに半導体チップを製造委託していたのではと筆者は考えている。

TSMCなどのファウンドリー(受託製造)企業は取引先の信用調査をもちろん行っていただろう。ただ、中国には1000社を超えるファブレス企業がある。それらの会社の資本関係のほか、縁故関係をすべて調査するのは限界がある。その点で今回のTSMC製チップがファーウェイから発見された事案は、今後の効果的な輸出規制のあり方を考え直すきっかけにする必要がある。

最先端半導体設計・製造技術はこれからのネットワーク技術、AI技術、データセンターに必須な技術だ。これらの技術を同盟国間で保持することが重要である。政治家や官僚などの政策決定に直接かかわる人たちは、規制の目的と効果を慎重に検討して必要な立法措置や政策運用を行ってほしい。

私の知人はこう語っていた。「中国は3~5年の短期間ではなく、10年、20年単位で考えている。どのような措置を取ろうが必ず追いつくだろう」。この数年の対中規制政策とそれをかいくぐるかのような中国側の対策の動きから、その言葉の意味の重さを感じている。

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No.800 ★ 中国独自GPS「北斗」を活用〜1台3役の中国農業ロボット開発メーカー、売上の半分以上は海外事業

2024年10月31日 | 日記

36Kr Japan

20241029

農業用ロボットを提供する「嵐江科技(Lanjiang Technology)」(全称、江蘇嵐江智能科技)が、シリーズAで数千万元(数億円超)を調達した。亦聯資本(Engage Capital)が出資を主導し、微光創投(Welight Capital)も参加した。調達した資金は、生産能力のさらなる向上と製品のグローバル展開に充てられる。

嵐江科技は2021年12月に設立され、果樹園用多機能ロボットや農地管理ロボットなど、ハイエンドなスマート農業機械の開発・生産・販売を手がける。また、移動式データ収集プラットフォームのほか、アプリからパソコン、クラウドに至る包括的なソフトウエアシステムを構築し、果樹園管理を正確かつ効率的にサポートする。

主力の果樹園用ロボットは、中国独自の衛星測位システム「北斗」によるナビゲーションとデジタル技術を組み合わせ、農薬散布、除草、運搬という3つの機能を1台で実現。作業効率が大幅に向上し、手作業によるリスクを低減させられる。

果樹園用ロボットはすでに20以上の国と地域で販売されており、同社の売上高の半分以上を海外事業が占めているという。

*1元=約21円で計算しています。

(36Kr Japan編集部)

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No.799 ★ 中国 今年の電力消費7%増、業界団体が上方修正

2024年10月31日 | 日記

NNA ASIA

2024年10月31日

中国電力業界団体の中国電力企業聯合会(中電聯)は28日、中国の2024年の電力消費量が前年比約7%増の9兆9,000億キロワット時になると予測した。猛暑で夏季の電力消費量が急増したことを受け、7月時点の予測値(6.5%増)から上方修正した。伸び率は前年の6.7%を上回るとみている。

今冬は電力逼迫(ひっぱく)を回避できるとの見方。中国気象局は今年第4四半期(10~12月)の気温が全国の大部分で平年より高くなると予測しており、暖房向けの電力消費は落ち着く見通し。比較対象となる前年同期の数値が高かったこともあり、第4四半期の電力消費量は5%前後の伸びにとどまるとみている。

ただ、需給バランスが一時的に崩れる恐れもあり、華東や華中、西南、南方地域の一部の地域ではピーク時の電力需給が逼迫するとの見方を示した。

新規稼働8割が風力・太陽光

24年1~9月の電力消費量は前年同期比7.9%増の7兆4,100億キロワット時だった。8、9月の消費量の伸び率はともに8%を超え、猛暑が電力需要を押し上げた。

製造業の電力消費は5.8%増え、業種別ではコンピューター・通信・その他電子設備製造業(14.4%増)やハイテク・設備製造業(11.4%増)、自動車製造業(11.1%増)の伸びが目立った。消費財製造業は6.4%増加し、食品製造業(10.9%増)や家具製造業(9.7%増)、繊維・アパレル製造業(8.6%増)などといった業種の電力消費が増えた。

モバイルインターネットやビッグデータの急速な利用拡大に伴い、インターネット関連サービス業の電力消費量は24.4%増加。「新エネルギー車(NEV)」向け充電・電池交換サービス業は56.7%増となった。

発電設備の新設も進んでいる。24年に新規稼働する発電設備容量は4億キロワット前後となり、このうち風力・太陽光発電は全体の8割に当たる約3億3,000万キロワットになる見通し。

24年末時点の発電設備容量は前年同月末比13.5%増の約33億2,000万キロワットと予測。このうち風力・太陽光発電は13億8,000万キロワット前後と全体の4割以上を占め、火力発電の14億6,000万キロワットに迫るとみている。

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No.798 ★ 「習近平の共産党」を守るためなら手段を選ばない…"西側諸国"で次々と明らかになった"中国スパイ"の実態 日本が"次の標的"として狙われている

2024年10月31日 | 日記

PRESIDENT Online (矢部 武:国際ジャーナリスト)

2024年10月29日

 

世界各国で中国スパイによる事件が多発している。国際ジャーナリストの矢部武さんは「中国は20年前からスパイ活動を展開していたが、西洋諸国は中国市場での立場を悪化させないために対応が遅れていた。この数年でスパイの脅威を認識し対応を強化したため、情報管理が手薄な日本が狙われやすくなっている」という――。

写真=AFP/時事通信フォト

ジェフリー・A・ローゼン司法副長官は2020年9月16日、ワシントンD.C.の司法省で、「APT 41」と呼ばれる中国政府や人民解放軍の支援を受けたサイバー攻撃に関連する告発と逮捕について、FBIのデビッド・ボウディッチ副長官の話を聞いた。

スパイ行為の見返りとして約4億円を受け取る

2024年9月3日、米国3大ネットワークの1つABCはニューヨーク州知事の元側近が逮捕されたニュースを報じた。同州のクオモ前知事と現職のホークル知事の側近だった中国系女性、リンダ・サン被告(41)が中国政府の「代理人」として活動していたスパイ容疑で逮捕されたというのだ。

ホークル知事の副主席補佐官を務めていたサン被告は中国政府関係者を積極的に州当局者に会わせたりする一方で、台湾の要人が州知事に接触するのを阻止したり、中国政府にとって重要な案件については州知事のメッセージを書き換えたりしていたとされている。

これらの行為は中国の諜報活動の一部であり、中国が領有権を主張する台湾の地位や少数民族ウイグル族の弾圧など論争の多い問題で中国の立場に有利になるように政治的言説に影響を与えることに重点を置いている。

サン被告は中国共産党の関係者と接触し、スパイ行為の見返りとして数百万ドル(約3億円から4億円)相当の利益を得て、他にもコンサートやショーのチケット、中国政府高官のシェフが調理したアヒル料理を受け取っていたという。

ホークル知事は会見で、「激しい怒りを感じ、衝撃を受けています。本当に厚かましい行為で、州民の信頼を裏切りました。不正が発覚した後、すぐに解雇しました」と語った。

この事件は氷山に一角にすぎない

サン被告は30代前半だった2017年に海外在住の中国人青年を称賛するイベントに参加するため、北京を訪れた。その際に出身地の江蘇省南京に立ち寄り、中国の諜報機関の一部である江蘇省統一戦線工作部(UFWD)の幹部と会談した。

その幹部は彼女に「米中友好の大使となり、ニューヨークの中国人移民の間で積極的に連帯を促進するべきだ」と伝えたという(ニューヨーク・タイムズ紙、2024年9月16日)。この会談がサン被告に中国政府の代理人となるきっかけを与えたようだ。

中国政府は海外の中国人コミュニティや中国系の政治家・役人などを利用して情報を入手し、政策を形作ろうとする諜報活動を行っているが、彼女のケースは氷山の一角にすぎない。

軍事技術を盗むために研究者に接近

ドイツの公共放送ZDFは2024年4月22日、「中国がドイツ国内で積極的に情報を探り出そうとしていることがわかる注目すべきニュースです」と述べ、中国の諜報機関の指示を受けて軍事転用が可能な技術を入手したとして3人のドイツ人が逮捕されたと報じた。

中国の諜報機関である国家安全省(MSS=Ministry of State Security)のスパイとして活動していたトーマス・アール被告はその技術を入手するため、一組の夫婦を仲間に引き入れた。夫婦は経営する会社を通して、研究者や大学などとコンタクトを取り、軍艦用エンジンなど機械部品の最新情報を収集していたが、当局から自宅と職場の捜索を受け、アール被告とともに逮捕された。

※写真はイメージです

また、同じ日にイギリスのロンドン警視庁が英国議会の調査員だった男2人を中国のためにスパイ行為をしたとして、敵国に利用されるかもしれない文書・情報の入手を禁止した国家機密法の違反容疑で逮捕した。

2人は保守派の議員らでつくる中国研究グループと関わりのある議会調査員で与党保守党(当時)の議員数人と接触していたとみられている。

この疑惑に対して在英中国大使館の広報担当官は、「中国が“イギリスの機密情報を盗んだ疑いがある”という主張は完全にでっち上げで、悪意ある中傷以外の何ものでもない」と一蹴した。

アメリカでは“悪質スパイ企業”に制裁を発動

さらに中国の諜報機関はサイバースパイ活動も積極的に展開している。

米国司法省は2024年3月25日、中国国籍の7名を外国での諜報活動と経済スパイ活動を推進するために約14年間にわたり、企業や批評家、政治家などを標的にハッキングしたとして、コンピューター不正侵入と通信詐欺の共謀罪の違反容疑で起訴したと発表した(司法省のホームページより)。

これに伴い、リサ・モナコ司法副長官は「1万件以上の悪意あるメールが複数の大陸で数千人の被害者に影響を与えました。本日の起訴状で申し立てられているように中国政府が支援する大規模な世界的ハッキング作戦は、ジャーナリスト、政治家、企業を標的とし、中国政府の批判者を抑圧し、政府機関を危険にさらし、企業秘密を盗みました」と述べた。

標的となった米国政府関係者にはホワイトハウス、司法省、商務省、財務省、国務省の職員、民主・共和両党の上院および下院議員が含まれていたという。

※写真はイメージです

この中国政府系ハッカー集団は「APT31〔=Advanced Persistent Threat(高度で継続的な脅威)〕」と呼ばれ、諜報機関MSSの一部門とされている。司法省は7人の起訴に加え、MSSのフロント企業と目されている湖北省武漢市にある「武漢小瑞科技有限公司」に制裁を発動したことも発表した。

メリック・ガーランド司法長官は、「私たちは、国民に奉仕する米国人を脅迫し、米国の法律で保護されている反体制派を黙らせ、米国企業から盗みを働こうとする中国政府の取り組みを容認しません」と警告した。

元中国スパイが活動内容を暴露

中国は政治的工作から経済スパイまで様々な諜報活動を展開しているが、その中でも特に闇の部分として恐れられているのは、海外で中国政府を批判している人たちを拉致し、本国に送還する任務を負っているスパイである。

彼らは中国の連邦警察および治安機関である公安省(MPS=Ministry of Public Safety)の部隊に属し、その実態はよく知られていないが、それがついに明らかにされた。

MPSで2009年から2023年まで潜入捜査官として働いたという元スパイ(39歳の男性)が2024年5月13日、オーストラリアの公共放送ABCの調査報道番組「フォー・コーナーズ」に出演し、活動の実態について語ったのである。

番組ではエリックという仮名を使い、安全のためにフルネームやMPSの担当者の身元などは公表しなかった。

MPSの部隊は中国共産党(CCP)の主要な弾圧手段の1つとされ、CCPと習近平主席の批判者を監視し、拉致し、沈黙させるために世界中で活動しているが、彼も15年間、中国、インド、タイ、カンボジア、カナダ、オーストラリアで活動したという。

どんな手を使っても敵対者を追いつめる

エリックは、中国が国家の敵とみなした人々の情報をどのように収集し、彼らを本国に帰国させて訴追するためにどのような手口を使っているのかを明らかにした。

時には手の込んだストーリー(架空の話)を作り、ある時は不動産会社の幹部として、あるいは「自分も中国共産党が嫌いで自由のために戦っている」などと反CCPの闘士を装ったりして批判者に近づき、彼らの信頼を得てから強制的に本国へ送還する。

その際、スパイにはアメとムチを含めあらゆる手を使うことが認められているという。エリックはそれ以上の詳細は語らなかったが、「彼らからは、何をしてもいい、と言われていた」ということははっきりと述べた。

MPSの目的は中国共産党の地位を守り、内外での党の支配を維持することだが、2012年に習近平氏が指導者に就任して以来、中国の諜報機関は再編成され、MPSの活動も強化された。

※写真はイメージです

しかし、オーストラリアの法律では外国の諜報機関が国内の外国人を脅迫したり、帰国を強制したりすることは犯罪となるため、MPSの活動は豪中間の外交問題にも発展している

ABCの番組によれば、2015年に中国の秘密警察2人がメルボルンの中国人バス運転手を拉致し、本国へ送還したが、この事件が公表されると、オーストラリア政府が抗議し、中国側は「二度と起こさない」と約束した。しかし、その後も2019年に中国将校がオーストラリア在住の59歳の中国人男性を強制帰国させるなど、事件は繰り返されているという。

中国政府の“最も闇の部分”

エリックは番組で、「真実を暴露するために声を上げている」と語り、こう続けた。

「国民には“秘密の世界”について知る権利があると信じています。私は中国の政治治安機関で15年間働きましたが、それは今日の中国政府の最も闇の部分です」

彼は2023年に中国から逃亡してオーストラリアに渡り、同国の諜報機関「オーストラリア安全諜報機構(ASIO=Australia Security Intelligence Organization)に自身の経歴を明かし、保護を求めた。ABCによれば、中国の秘密警察・諜報機関の関係者が公の場で発言したのは初めてだという。

対中関係を重視し、スパイ活動を容認していた

中国の諜報活動の拡大は西側諸国にとって重大な脅威となっているが、西側の対応はなぜ遅れてしまったのか。この問題については、英国公共放送BBCが対外諜報機関(MI6)の幹部の発言を引用して興味深い報道をしている。

報道によると、「中国の諜報機関は2000年代にはすでに経済スパイ活動を展開していたが、当時の西側の企業は往々にして沈黙していた。なぜなら、中国市場における立場が危うくなるのを恐れて明らかにしなかったのだ」という(BBC NEWS JAPAN 2024年6月11日)。

*写真はイメージです

重要なビジネスパートナーである中国との関係を悪化させたくないばかりに沈黙していたのは企業だけでなく、政府や政治家も同様である。たとえば、ドイツの国会では中国の経済スパイの脅威が高まってきても、中国との関係を重視する意見がずっと根強く存在しているという。

ドイツの国会議員で元陸軍将校でもあるローデリヒ・キーゼヴェッター氏は、「ドイツの諜報機関は数年にわたって中国の経済スパイの脅威について警告したが、その警告は故意に聞き入れられなかった」と述べている(ガーディアン紙、2024年5月8日)。 

脅威を再認識し、対策を強化

また、英国は2010年代にデビッド・キャメロン首相が英中の経済関係の強化を背景に両国関係を「黄金時代」と表現した。

しかし、英国の中国専門家のマーティン・ソーリー氏は近々刊行される著書『All That Glistens(輝くものすべて)』の中で、「英国がキャメロン首相時代の英中友好の“黄金時代”を吹聴したことで、結果的に中国は(英国の)政治家や実業家を操りやすくなった」と指摘している。

最近はこの「黄金時代」を皮肉って、「黄金の失敗」ではなかったかと揶揄されているというが、2022年に誕生したスナク政権で外務大臣を務めたキャメロン氏も中国を公然と批判するようになった。同氏はその理由を「多くの事実が変わった。中国は時代を決定づけるチャレンジ(難問)になった」と述べている。

欧州は最近になって、中国のスパイ活動への対応に力を注いでいる。英国のMI6は2024年1月、中国の諜報活動に対応するために専門の外国人コンサルタントを雇ったという。

また、ドイツは2024年4月、フェーザー内相が「中国のスパイ活動がビジネス、産業、科学に多大な危険をもたらしていることを認識している。我々はこうしたリスクと脅威を非常に注意深く見守っており、明確な警告を発し、あらゆる場所に防諜措置が強化されるよう意欲を高めている」と述べ、中国にメッセージを送った。

西側スパイと中国スパイの“決定的な違い”

西側の対応が遅れたもう1つの理由としては、中国の諜報活動の目的や方法が西側と異なることによる独特の難しさがある。米国連邦捜査局(FBI)で対諜報活動を担当するロマン・ロジャフスキー氏はその違いをこう説明する。

「中国のスパイにとっては中国共産党の地位を守ることが一番の目的です。そのために中国は経済成長を実現する必要があり、スパイは西側の技術獲得こそ国家安全保障上の最重要課題と考えている。そして中国のスパイは入手した情報を国営企業に共有するが、西側の諜報機関は自国企業にそのようなことはしない」(前出・BBC NEWS JAPAN)。

つまり、西側では民間企業が経済スパイを行うことが多いが、中国では政府の諜報機関がそれを主導し、国営企業を積極的に支援している。政府と企業が一体となって経済スパイを行っている中国に対し、西側各国が対抗するのは容易なことではない。ちなみに中国が諜報活動に投入している人員リソースは約60万人と推定され、他のどの国よりも多いという。

また、CIA(米中央情報局)やMI6など西側の諜報機関が中国国内で活動する際の独特の難しさもある。中国内では顔認証やデジタル追跡技術の発達によって監視体制が徹底しているため、現地で工作員や協力者に直接会って情報収集するという伝統的な人的諜報活動がほとんど不可能だという。

いままで以上に日本が狙われやすくなったワケ

BBCニュースによれば、中国は約10年前、CIAが現地で張り巡らせていた大規模な工作員のネットワークを一掃したそうだ。

さらに付け加えれば、世界的な通信傍受とデジタルインテリジェンスを担当する米国のNSA(国家安全保障局)や英国の通信傍受機関GCHQにとっても中国は技術的に難しいターゲットになっている。理由は中国が西側と異なる独自の技術を使っているからだという。

他の西側諸国と同様に日本でも中国のスパイによる被害が増えている。

2020年10月、大手化学メーカー、積水化学工業の元社員がスマホの液晶画面に使われる技術を中国の通信機器会社に不正に漏らしたとして不正競争防止法違反容疑で書類送検された。

元社員が電子メールで技術情報を送った相手の中国企業関係者は、世界最大級のビジネス関連情報のSNS「リンクトイン」を使って接触してきたという。大阪地裁は2021年8月、元社員に懲役2年と罰金100万円、執行猶予4年を言い渡した。

※写真はイメージです

また、2021年4月には宇宙航空開発機構(JAXA)など国内約200の企業や研究機関へのサイバー攻撃に関与したとして、警視庁公安部が中国共産党員でシステムエンジニアの30代の男を私電磁的記録不正作出・同供用の疑いで書類送検した。警察当局は中国が軍の組織的な指示で高度なサイバー攻撃を仕掛けていたとみて、攻撃を受けた組織に注意喚起した(日本経済新聞、2021年4月20日)。

警察庁の担当者が出向き、スパイ対策を共有

日本の先端技術が中国のスパイに狙われる背景には、ハイテク利権をめぐる米国と中国の覇権争いが激化したことで、各国における先端技術の管理などの対応が強化されたことがある。その結果、欧米諸国と比べて情報管理が徹底されていない日本の技術も中国に狙われやすくなったということだ。

このような状況を受けて、日本の警察当局も対策に乗り出した。警察庁は2022年4月に「経済安全保障室」を設置し、技術情報流出の未然防止のための取り組みを都道府県警察と連携して推進している。

対策の柱はアウトリーチ活動で、担当者が企業や研究機関に出向いて実際の事件をもとに海外の経済スパイやサイバー攻撃の手口を解説したりして対策の徹底を呼びかけているという。

世界的に中国の諜報活動が活発となり、先端技術の争奪戦が激化する中で、日本の技術が流出する可能性は高まっており、日本はこれまで以上に警戒感を高め、対策を強化する必要がある。

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