見出し画像

Retro-gaming and so on

ゴーストバスターズ

ZOMBIO/死霊のしたたり」の話を書いた時、これがアメリカで公開された1985年には日本での大ヒットホラーコメディ「バタリアン」も公開された、と言う話を書いた。
でも、この当時、何故に「ホラーとコメディを混ぜたような話」がこうも作られたのか。何かキッカケがあったっけ・・・?とかちと悩んでたんだよな。
で、これを失念してたわけだ。ゴーストバスターズ・・・・・・。1984年公開の大ヒット映画だ。何故か全く思いつかなかった。
言い訳させてくれ(笑)。「ZOMBIO/死霊のしたたり」も「バタリアン」も「コメディ仕立ての」ホラー映画だ。一方、「ゴーストバスターズ」は「ホラー仕立ての」コメディだ(笑)。実は方向性が全く違う。前者2つはあくまで「ホラーにコメディを融合させた」映画でホラー成分が多い。後者は「コメディにホラーを融合させた」映画で、コメディの要素が多い。
従って、これらを単一の線で結んで捉えてなかったんだ。
ごめん。一生の不覚かもしれん(笑)。
いずれにせよ、1970年代から発達してきたハリウッドのSFXは1980年代に花開き、「ホラーネタをコメディで昇華出来る」と言う最初の例になったのは間違いなくゴーストバスターズだろう。

この映画は2つのポイントで珍しい。
まずニューヨークが舞台である事。もちろん、舞台がニューヨークの映画が全くない、って言ってるわけじゃあない。しかし、ハリウッドが発表する映画総数からの比率から考えると圧倒的に少ないんだ。やっぱハリウッドのお膝下である西海岸が舞台の映画の方が圧倒的に多いんだよ。それが1つ。
もう1つは日本でも大ヒットしたコメディ映画である事。実の事を言うと、アメリカで発表されたコメディ映画で日本に持ってきて成功する例、ってのは発表数からすると少ないんだわ、やっぱ。何故なら言語や文化の違いがあるから、だよな。
向こうの、英語での「ギャグ」をうまい具合に日本語に訳して観客に笑ってもらうのって結構大変なんだよ。だから日本でヒットする「コメディ映画」ってのは数が少ない。もっと言っちゃうと「アメリカから持ってこない」場合も多いんだ。
ゴーストバスターズはアメリカで性交成功したコメディアンの出演率が高い映画なんだけど、多分結構な確率で「この映画しか出演してるのを観た事ない」って人が多いんじゃないか。当然、彼らは映画とか出なけりゃ食っていけないわけで、彼らはそれなりに出演作は多いんだけれども、単に「日本に輸入されていない」か、あるいは「輸入されてもヒットしなかった」かのいずれか、なわけだ。
後者の場合は「言語の壁は大きい」ってわけだが、一方、この映画の場合、ネタが題名の通り「幽霊退治人」なわけで、コンセプト的には分かりやすいわけだな。

さて、この映画の公開時の事を回想しようと思う。
っつーか、正直言うと、この映画の公開時、全然僕は注目もしてなかったんだ。
ただ、意外と、当時周りにいた「とっぽい奴ら」が割に夢中になってこの映画の事を話してたのを覚えている・・・普段ハリウッド映画の話なんてしそうにない奴らが、だぜ?しかも「公開前」からだ。
だから何らかのブームになりかけてたんだよな。
1つは、アイコン化してた事が大きかったんじゃないか。なんか、ゴーストのワッペンとか、そういうアイコンが彼らの心を鷲掴みにしたみたい。


なんか、覚えてる人いるかどうか知らんけど、「アイコン化してとっぽい人間にウケる」ってのはそれ以前に流行った「なめ猫」を彷彿とさせてたんだよ。とっぽい人間の心を鷲掴み、みてぇな(笑)。


あと、おそろいの制服、とかね。もちろん軍隊とか警察とか、そういう機関も制服は着る、ってのはみんな知ってるだろうけど、ゴーストバスターズの「民間企業(?)なのにおそろいのツナギの制服」みたいな統一感、ってのがとっぽい奴らにウケたのかもしんない。良く分からんけどさ。


特攻服みてぇだから(笑)?違うか(笑)。

だから僕?
正直言って当時は何か話題に全く関わらなかったのね。周りにいた連中は「マシュマロマンってのが出てくる」とか(笑)、映画のオチに関わる話もしてたから(公開前なのに・笑)、かなり情報は「宣伝として」出てたんだとは思うんだけど、イマイチピンと来なかったんだよ。
いや、あとでテレビで放送した時観たら、「なるほど、これは面白い映画だ」とは思ったんだけど、公開前の「ブーム」的なのには全くと言っていいほど触らなかったのね。多分「ホラーとコメディの融合」って手法自体も新しかったんだけど、何か僕のアンテナには引っかからなかったんだよなぁ。何でだろ。

個人的な話をすると、いわゆる「現代的なアメリカンポップスの音」に初めて向き合ったのはこの主題歌かもしんない。いや、それ以前にマドンナとかシンディ・ローパーとか、流行っていたから色々知ってはいたんだけど(※1)。
そうじゃなくってロックの源流とか現代的なブラックミュージックとかね。レイ・パーカー・ジュニアじゃない、主題歌が。周りにいた人が主題歌なんかも聞かせてくれるわけなんだけど

「えっらい単調な曲だな」

とか思って(笑)。「これでエエんか?」とか凄い戸惑ったのを覚えてる。
もうベースのリフとか延々と同じじゃない(笑)。ちょっとだけ変化があるんだけど、それ以外は全部反復一本槍とか(笑)。それにビックリした(笑)。
要するにその時代からそれ以降に繋がってく「ヒップホップ」と同じ手法でしょ?ラップがガーンってあるわけじゃないんだけど(でもそれに近い・笑)、延々と同じ「バック」って構造が当時は耐えられなくって(笑)。それで「どーしたもんだろ」って悩んだのを覚えている(笑)。
今じゃこういう「構造らしい構造が全くない」音楽にも慣れたけどね。

Ray Parker Jr. - Ghostbusters

"近所でおかしな事が起こったら誰を呼ぶ?
ゴーストバスターズ!
とてもヘンな事が起きて、酷く見える時には誰を呼ぶ?
ゴーストバスターズ!
おばけなんて怖くない・・・"
とCMっぽい曲+アメリカ版「お化けなんてないさ」的なテーマ曲だ。

さて。ゴーストバスターズ。この映画の仕掛け人はコメディアンのダン・エイクロイド。前年(1983年)にもアメリカでDoctor Detroitと言うコメディ映画をヒットさせている。
ゴーストバスターズの映画でも(主役ではないが)中心人物であり、リアルでも企画と脚本を担当する。


映画内ではレイモンド・スタンツ博士を演じる。

そして脚本はもう1人、ハロルド・レイミスと言う人が担当する。


この人、本職はコメディ映画の監督や脚本を書いてる人で、むしろ俳優やコメディアンではないのだが、本作では俳優としてイゴン・スペングラー博士を演じる。
なお、彼は2014年に亡くなっている。

この映画の一番の目玉は銀幕デビューから7年、キャリアが10年にまだ達してないのだが、映画「エイリアン」でエイリアンを宇宙に放逐した女傑、エレン・リプリーを演じて当たり役となった、シガニー・ウィーヴァーだ。彼女がこの映画でヒロインを演じて、「コメディ役者もこなせる」事を証明して彼女の価値は鰻登りになった、と記憶している。


彼女はゴーストバスターズの「最初の客」である、音楽家、ディナ・バレットを演じている。

主役はビル・マーレイが演じる、女好きでデタラメな心理学・超心理学の博士号と持つ男、ピーター・ヴェンクマン博士。


この人も色々なコメディ映画に出てる人だが、恐らく日本だとゴーストバスターズの主役、って印象しかないんじゃないか。
ちなみに、僕の中では何故か「アメリカ版せんだみつお」となっている(笑)。


な〜んか、僕の中では印象が被ってるんだよなぁ(笑)。

他にもアメリカ版Mr.オクレ、もといリック・モラニスもキーバーソンとして出演。



監督はアイヴァン・ライトマン。後にアーノルド・シュワルツネッガーと組んでツインズキンダガートン・コップそしてジュニア、とたくさんコメディ映画を撮る監督だ。アーノルド・シュワルツネッガーの「脱・脳筋俳優路線」を支えた監督である。



さて。
最初の「ブーム」の時の印象はさておき、ゴーストバスターズ、は僕のお気に入りの映画の1つになっている。
でも何で今まで取り上げなかったのか。
1つは僕の世代だとあまりにもメジャー作品だ、って事。「紹介する」って必要がない程の映画だった、と言う認識。
そして当時の流行りはともかくとして、現時点、さしたる「ホラーコメディ」と言うジャンルが継続して作られてるわけじゃない、って事がもう1つだ。
もし、ホラーコメディと言うジャンルが継続的に作られてるとしたら、この映画は「エポックメイキングな作品」って事になるが、実際は違うわけじゃない。ゴーストバスターズが切り開いた「ジャンル」は消えていて、要するに一過性のブームを作っただけ、ってのが悲しくも現実なわけ。そして「ゴーストバスターズ」ってネームヴァリューは特定の世代に響く懐古趣味的な想いを掻き立てるけど、それ以上じゃないんだよね。この数年でゴーストバスターズのリメイク的な作品が2つ作られてるが、懐古趣味者にはウケたろうが、往年の盛り上がりは取り戻せなかったような気がする(※2)。
しかし、一旦映画として見てみると、テンポも良いし、誰が見ても「面白い」と言うデキになってると思う。もし、若い人で「一回も観たことがない」と言う人がいるのなら、オススメの映画ソフトではある。

話は極めて単純だ。



名門コロンビア大学(※3)で超常現象研究室を構える心理学・超心理学者ピーター・ヴェンクマン博士、超常現象の歴史(※4)に詳しく、金属学者であるレイモンド・スタンツ博士、そして超常現象と素粒子理論学者のイゴン・スペングラー博士の3人は、「結果が出ない研究ばかりしている」として大学を追い出されてしまう。丁度「幽霊を捕縛する」理論が出来たばかり、なのにだ。



しかし、イイ加減でめげないピーター・ヴェンクマン博士は「ビジネスの世界に出るべきだ」と力説し(※5)、3人はなけなしの資金(とは言っても全部レイモンド・スタンツ博士が亡くなった両親から受け継いだ遺産・笑)を使って、幽霊退治を専門とする会社「ゴーストバスターズ」を立ち上げる。






とまぁ、あらすじはそれだけでイイだろ(笑)。題名がそのままコンセプトなんで、ひっじょーに分かりやすく、また楽しめる映画だ。
オタク君、みたいなリック・モラリスが演じるルイス・タリーにも見せ場があり、なんとシガニー・ウィーヴァー演じるディナ・バレット(ルイスが心を寄せている)とのキスシーンがある。



男女逆になったようなキスシーンだが、基本この映画(と続編)では、オタクは単なるコミックリリーフではなく見せ場があり、ある意味救われる構成になってるトコロが良い。ダン・エイクロイドの視線が極めて「優しい」トコロに好感が持てるんだ。
また、映画ファンは後年ダイ・ハード/ダイ・ハード2に出演する2人が出てくる辺りにも注目すればいいだろう。


連邦環境保護局から来た、ゴーストバスターズの活動を全く信じず、嫌がらせのような行動を取るウォルター・ペック。演じるのはウィリアム・アザートン。ダイ・ハードでも「嫌な」テレビレポーターを演じてて、「嫌な奴」をやらせれば上手い(笑)。


ゴーストバスターズが留置所に捕えられた時の看守。演じるのはレジナルド・ヴェルジョンソン。端役だが、彼はこの後、ダイ・ハードとダイ・ハード2で主人公ジョン・マクレーンを支えるアル・パウエル役を演じる。

また、ポリティカル・コレクトネス、とかクソな事を言う前に撮られた映画な為、レイシズム的なギャグが出てきたりしてそれも笑える(笑)。





ニューヨークがラスボスのせいで壊滅しかねない状態になった時、ニューヨーク市長との面談が行われる。
ゴーストバスターズ4人目のメンバーは黒人のウィンストン・ゼドモア(演: アーニー・ハドソン)だが、白人の市長に対し、「ゴーストバスターズに参加してから白くなるようなクソばっか見てきてる」と力説する(笑)。
もちろん、日本語訳では「顔が青白くなる」と言うような訳になるだろうが、原文では黒人が白人に「白くなる」(turn you white)と言うレイシズム的なギャグになっている。
原文: Since I joined these men, I have seen shit that'll turn you white.

今じゃ許されないギャグかもね(笑)。
いずれにせよ、楽しいし面白い。コメディなんで細かい「挫折」とかなく、ゴーストバスターズは簡単に性交成功するんだけど、それも展開のスピーディさに繋がってるんで、ホンマいい映画だと思うよ。
観たことがない人には特にオススメしておく。







※1: ディスコ系音楽を除くと、70年代は一般的に、アメリカン・ポップスは「ダサい」印象だった。割と古めかしい日本の歌謡曲的なサウンドが主流だったのだ。
一方、80年代初頭で、今や見る影もないが、「先鋭的」で「クールだ」と捉えられていたのはヨーロッパの音楽、特にイギリスの音楽だった。カルチャー・クラブデュラン・デュランを始めとするイギリス勢が、そのファッションセンスと共に当時の日本のティーンを虜にするのである。
僕個人としても、結果、圧倒的にヨーロッパ派であり、ヒップホップなんかの音楽が台頭するまでアメリカの音楽を「ダサい」と避けてた程なんだ。
ちなみに、実はこの時代、音楽を「聴く」なんつー事は「マニアの行為」であり、80年代後半になって「CDが普及し」、「それまでの高価なステレオ装置を駆逐していって」となるまで、音楽ソフトの売り上げは一桁以上小さい市場を形成してるに過ぎなかったんだ。
だからホント、「イギリスの音楽がいい」とか「アメリカの音楽はダサい」とか言ってる層はマニアの層で(笑)、大多数の人はテレビで「ベストテン番組」とか「トップテン」とかのアイドルが歌う番組を見て(ちょっとこだわる人はフジの「夜のヒットスタジオ」を観てた)、気に入った歌をたまにシングルで買う、って程度の市場が基本だったんだよな。
なお、JASRACはあたかも「音楽売り上げが落ち込んで正常じゃない」と言うような論を発してるが、事実は全く違っていて、いわゆる「音楽売り上げが絶好調を迎える」と言うのはCDがフツーになった1990年以降の一時期に過ぎない。それまでは、音楽に興味があって、でも高価なステレオ機器を買えない、と言うような人はラジオのオンエアから音楽をカセットテープに録音して編集する、と言った行為が「フツー」で(当時は「エアチェック」とか呼んでた)、今で言うとそれこそ違法コピーがフツーだったんだ。
だから本音で言うと、「CDが高価なステレオ装置を駆逐して安価でクオリティの高い再生環境を構築して」、音楽の売り上げが伸び、ちょっとした音楽バブルのお陰で業界が太っちまったんだけど、売り上げが落ちたので、各種機構の「スリム化」が必要なトコがそれが出来ないんで、色々と消費者に難癖を付けている、ってトコが「本音」だろう。彼らの言ってる「音楽の売り上げが落ちた」どころか、その「落ちた」状態が元々「正常の状態だったんだ」ってのは歴史の指し示すトコロだ。
繰り返すが、80年代くらいまでは音楽市場は元々は「デカくはなかった」のだ。何故なら、アナログレコードを再生する「環境」は好事家が所持するような「高価な機械」が必要であり、そんな環境を自宅に持てる人は限られていたから、である。

※2: ただし、2016年のゴーストバスターズのリブート版、ってのはかなり良く出来ていると思う。これについては近々書きたい。

※3: アメリカの名門私立大学のうちの1つ。ここ20年弱のYahoo!とGoogleの創業者を輩出したスタンフォード大学の陰に隠れちゃった印象があるが、アメリカ北東部の有名私立大学群、アイビーリーグのうちの1つだ(スタンフォード大学は西海岸側なので、アイビーリーグには含まれない)。ニューヨーク市にキャンパスを構える。
シンガーソングライターである宇多田ヒカルが一時期在籍してた事でも有名だろう。
THEの2022年度世界大学ランキングでは11位、QSの2022年度世界大学ランキングでは22位、と日本の東京大学よりも当然上位にいる大学だ。

※4: こんなもんで学位が得られるのかどうかは知らない(笑)。

※5: この辺が日米の文化の違いで、アメリカでは博士号を持ってビジネス世界に飛び込む事は割にフツーである。日本みたいに「博士号持ちは大学に勤めるしかない」と言う感覚が彼らにはない。あるいは日本みたいに「博士号持ちはビジネスには役立たない」等と言うおかしな偏見もない。
アメリカ人にとっては修士号あるいは博士号は「キャリアアップ」の為のツールなんだ。
言い換えると、実はアメリカはイメージと違ってそのまんま「学歴社会」なのだが、日本は実は学歴社会ではないんだ。
  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「映画」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事