雑木帖

 ─ メディアウオッチ他 ─

企業広告の場が、新聞・テレビからネットに移りつつある?

2006-01-08 11:43:04 | メディア
『森田実政治日誌』1月6日”マスコミに忍び寄る危機/広告から見放される大マスコミの構造的衰退のおそれ――広告の主流はすでにインターネットに移っている”で興味深いデータが示されている。
 森田氏の広告業界に詳しい友人が、
「森田さん、大新聞と民放テレビの時代はもうすぐ終わりです。広告の主流がインターネットになりました。非常に信用の高い調査機関の最近の調査で明らかになりました。大新聞と民放テレビが大リストラに着手する日が近づいています。まさに〝驕れる者久しからず〟です」
 と電話をしてきたという。その調査とは次のようなもの。
 インターネットの普及により、消費行動に変化が起きている。市場環境が変わったのである。
 友人が知らせてくれた最新の調査結果によると――
 ◆ブランド/商品認知――(1)インターネット34%、(2)テレビ24%、(3)雑誌9%、(4)新聞4%
 ◆商品理解・比較検討――(1)インターネット46%、(2)店頭21%、(3)テレビ7%、(4)口コミ4%
 ◆購入商品決定――(1)店頭35%、(2)インターネット34%(購入商品決定の段階ではテレビ、新聞の影響はほとんどない)
 ここで僕が一番着目し、ちょっと驚いたのは「商品認知」でインターネットがテレビの上をいき、また雑誌を大きく引き離しているという点だった。
「商品理解・比較検討」「購入商品決定」の調査結果は、手軽に自由に商品の比較や商品の情報の収得ができるインターネットの特色上、商品の機能性や解説ではなく、主にイメージ性によって顧客に訴えかけるテレビのCMや活字媒体の広告が後塵を拝するのは当然の結果ともいえる。しかし、この検討や選択というプロセスは、商品が認知されていることを前提としている。だから企業側から見れば、この消費者の認知を得られる場ということが、広告では一番重要な要素になる。

 この認知が得られやすいという場がインターネットということになれば、消費者を企業の商品宣伝ホームページにも誘導しやすくなるという多大なメリットもあり、そうなれば企業の広告の場がテレビや活字媒体からインターネットに移行するということが急激に起こるということを想像するのは難くない。
 けれど、これまで、僕個人はインターネットという場が商品の認知の場にはあまり向いていないという感じを持ってきた。今でもやはりちょっとそう思える。
 たとえば、人々が興味を持てる優秀な各企業のCMをオンデマンドで配信することを専門とするサイトが出来たりすればどうだろうかと思ってみたりもするのだが、これとて余程の出演者群を取り揃えるか、内容そのもの自体が非常に優れたものでなければ、やはり集客は難しいという気がしてしまう。

 森田氏は近年の大新聞・テレビの大政翼賛報道的な性質に強い懸念を示しており、企業の広告の主流の場がその大メディアからインターネットに移り、大メディアの世の中に対する影響力が低下するという状況を生むことは、今の大メディアの反ジャーナリズムの状態からいけば好ましいことだと考えている。僕も大筋それには賛成である。企業広告の主流の場がインターネットに移ることによって、インターネットでも企業の影響力が増すという問題が出てくるにしても、今の大マスメディアの状態はそんな問題よりも深刻で危険なものだという認識を持っているからだ。
 とはいえ、『小林恭子の英国メディア・ウオッチ』でネット上の規制に関する興味深い記事が始まったように、インターネットの行く先も、ジャーナリズム、思想や言論の自由という観点からすればとても危うい。この日本では、次のブログにもあるように、主に公明党議員が主導するインターネット規制も水面下で進められている。

・インターネット有害情報規制に着手:「有害サイトは閉鎖させるべきだ (kitanoのアレ)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050615
・インターネット上における違法有害情報対策 (kitanoのアレ)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050905

「個人情報保護法」の時にも問題になったが、日本はまだ「言論・表現の自由」を市民自らがお上から勝ち取ったという歴史がなく、それ故に「言論・表現の自由」の規制という問題に対しては反応が鈍いという意見もある。とくに最近その傾向が顕著だということは、僕も身にしみて感じている。
 守るべきものは守らなければならない。そう思う次第だ。


参考:
 以下はいずれも『週刊東洋経済』2005/11/19号から。






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