雑木帖

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「共謀罪」:今日のブログ

2006-05-28 21:40:02 | 政治/社会

 暴走する(?)「共謀」概念(続) (弁護士・落合洋司の「日々是好日」)

法務省は、サイトで、
そもそも「共謀」とは,特定の犯罪を実行しようという具体的・現実的な合意をすることをいい,犯罪を実行することについて漠然と相談したとしても,法案の共謀罪は成立しません。
と、いかにも共謀というものが非常に厳格に解されているかのように解説していますが、現実の刑事裁判実務では、上記の程度の希薄な、漠然とした意思連絡(と言ってよいかどうかすら疑問ですが)で、「特定の犯罪を実行しようという具体的・現実的な合意」が認定されているのが実態です。捜査機関や裁判所が、「共謀」で引っかけて持って行こうとすれば、かなり容易に持って行ける、特定の人や組織を葬り去ることができる、と言っても過言ではないでしょう。恐ろしい世の中になってきたものです。

共謀概念が暴走した先にあるものは、組織的に動いたことが(人間はどうしても一人だけでは動けず組織で動くことが多いものです)、容易に組織犯罪視、共謀視され、暗くて人の自由が制限され、国民が息を潜めて暮らす、超監視社会かもしれません。

 政府・与党の国会答弁の「嘘」と矛盾 (No More Capitalism 小倉利丸)

(b)共謀罪は、刑事犯罪のための法執行機関の権力行使を911以降の「テロ対策」に転用している。「テロ」の定義は、日本政府も含めて確立されておらず反政府的な活動全般を「テロリスト」の活動とみなす傾向がある。刑事司法のように対象を特定して捜査するのとちがって、不特定多数を監視しコントロールすることをそもそもの基本的な性格としている国家安全保障対策としてのテロ対策が刑事司法の分野に入り込むことによって、無差別に人々を監視し抑制する傾向がますます強まる。
組織犯罪の規定から「物質的利益を得るため」を排除し、その結果、物質的利益を目的としない団体の違法行為が取り締まり対象に入れられたのも「テロとの戦争」体制下での刑事司法の国家安全保障への統合という目論見として理解されなければならないだろう。

政府・与党の態度には首尾一貫したものはない。明らかに議会と民衆を愚弄する詭弁と嘘とその場しのぎの言い訳に終始するものであって、道義的にも許せるものではない。こうした政府・与党の態度それ自体がこの共謀罪の本質を表している。結局、共謀罪で与党・政府がやりたいことは、法執行機関に予防検束を含めて最大限の捜査と逮捕権限を与え、大量の個人データを収集して監視できる法的な裏づけを得たいということにつきる。修正協議なんて論外である。廃案以外にないのだ。


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2 コメント

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Unknown (ゆりかりん)
2006-05-29 13:58:53
その昔、学生運動華やかなりし頃、赤軍だ、カクマルだ、・・・などとヘルメット被って、体制の不条理と果敢に戦った当時の若者達は、いまや各業界に散らばって、経営者(経営陣)、或いはそれを卒業して業界のドンに納まっている人達も多いわけです。・・・・・矛盾しますよね。あの時代、命がけであれほどまでに体制に立ち向かった筈の人々が、現日本社会の矛盾だらけの悲惨な事態を、取り返しのつかない方向に舵取りされていく状況を、蚊帳の外で(高級車に乗り、大豪邸に住み、最高級の酒をグラスに注ぎながら・・・)見て見ぬ振りをしています。彼等は今、青二才だった当時と違って、その頃とは比べ物にならないほどの大きな社会的地位や権力を得ている筈です。したがって、彼等が再度(?)団結し合って「日本社会を軌道修正しよう!」と本気で思えば、社会を一新するような物凄いエポックを齎すことだって不可能じゃない気もするのですが・・・?・・・・・どうしてでしょう?・・・・・人は一旦権力を持ってしまうと、保身にしか考えを巡らすことが出来なくなるのでしょうか?

特にこと『共謀罪』に関しては、彼等こそ立ち上がって廃案に持ち込んでほしかった。(戦時下の自由主義者達の次に)彼等ほど警察組織の理不尽極まりない暴挙を被った世代はいないわけで、ちょっと仲間と酒呑んでただけで警察にボコボコにされた挙句、でっち上げの罪状で拘留されたり、警察の執拗な嫌がらせを受けて自殺に追いやられた者もいたり、女といえど容赦しない警察の暴力によって一生癒えない傷を背負わされたり、・・・・・そうした様々な警察組織による犯罪の、正真正銘実際の犠牲者であったり目の当たりにしてきた当事者なわけですから。こうした警察組織による犯罪が、『共謀罪』が施行された途端、大手を振って堂々と横行するだろうことは勿論、更にもっと深刻な事態を生むに違いないという危惧は、我等その後の世代よりも遥かに彼等の方が重々理解出来ている筈なのですから。

ほんの数年前のこと、元赤軍だった現デザイン会社社長の一言が印象的でした。「ようやく去年から来なくなったよ、公安からの中元と歳暮が」・・・・・彼等も年を取ってしまったのですね。
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ダニエル・エルスバーグ氏 (雑木帖@管理人)
2006-05-30 00:07:56
> その頃とは比べ物にならないほどの大きな社会的地位や権力を得ている筈です。したがって、彼等が再度(?)団結し合って「日本社会を軌道修正しよう!」と本気で思えば、



ほんとにそうですね。新宿にゲバ棒、ヘルメット、また機動隊の防護用品などが置いてあるバーがあって、往年の運動家と機動隊員らが集まってそれらを身につけ、当時を懐かしむ場所になっているという話もあります。何をか況やです。



ダニエル・エルスバーグ氏は『ペンタゴン・ペーパーズ』という国防総省秘密報告書をニューヨークタイムズ紙とワシントンポスト紙の協力を得て公にすることによって、ベトナム戦争が4人の歴代アメリカ大統領たちが過去の失策を隠蔽し、自身の政策を推進するために意図的に奨励した明確な目標のない戦争であった(そのためにアメリカは500万人ものベトナム人──95%が民間人だった──を死傷させた)ことを暴露しました。そのきっかけは、次のようなことでした。

1967年、国防省の官僚だったエルスバーグ氏はロバート・マクナマラ国防長官のオフィスで、アメリカの北ベトナム侵略計画を練っていました。その時、ペンタゴンの中に入ろうとした反戦運動家たちが棍棒で打たれ、逮捕されて連れていかれるのを、彼は窓から見ました。

のちにエルスバーグ氏はその時のことを回想し、こう証言しています。

『私は自分の胸に聞いた。…この人たちは自分の良心に忠実に生きている。私がそうしたらどうなるだろう』

エルスバーグ氏は『ペンタゴン・ペーパーズ』を公にすることにしたのです。



2002年11月、エルズバーグ氏はマスメディアが多く入っているロックフェラーセンタービルの前でアメリカのイラク攻撃に異議を唱えるデモをして逮捕されました。



次の一節は、昨年5月の「ごまめの歯ぎしり」(河野太郎の国会日記)です。

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NHKと朝日新聞の件でコメントを求められる。

はっきり言って、この件に興味はない。



1971年にマクナマラ元国防長官が作成したペンタゴンペーパーがニューヨークタイムズとワシントンポストに掲載された。

アメリカ政府はこの文書を差し止めるためにいろいろとやったが、両紙は屈することはなかった。

ウォーターゲート事件の報道でも政権からの圧力に屈せずに真実が明らかにされた。

マスコミが第四の権力たらんとすれば、政府そのものの権力に対しても戦わなければならない。

いかに安倍晋三が若手の花形政治家とはいえ、その力などたかがしれている。仮に安倍晋三が圧力をかけたとしても、その程度の政治的圧力で転ぶマスコミなど、存在価値はない。

アメリカをはじめ、各国でマスコミが戦っていることに比べれば、今回の事件は、ままごと遊びだ。



だいたい朝日新聞もNHKも記者クラブの常連ではないか。身内で固まり、部外者は排除する組織の内側にいながら、報道の自由とか独立を言うか。記者クラブの暗黙の掟をみんなで守りながら、「政治の圧力をかけられた」とはちゃんちゃらおかしい。

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