雑木帖

 ─ メディアウオッチ他 ─

共謀罪:未だくすぶっているゾンビ法案

2006-11-29 00:20:31 | 「共謀罪」
*注 文中のリンクは雑木帖@管理人によるもの。

「共謀罪」米国でも一部留保 与野党攻防の焦点に [朝日新聞] 2006.11.28

 国際組織犯罪防止条約を批准するために必要とされてきた「共謀罪」創設法案をめぐり、与野党の攻防のテーマとしてクローズアップされてきた問題がある。代表的な批准国である米国が、条約の国内法への適用を一部除外する「留保」をして批准している点だ。与党は共謀罪の今国会での成立をいったん断念したが、衆院法務委員会の理事たちはここに来て審議入りに執念を見せている

 これに対し、野党は「留保」問題に関する質問主意書を提出して政府を追及。回答を得るまでは審議入りに応じないと主張し、水面下の攻防が激しさを増している。

 日本の刑法では、罪に問われるのは、実際に犯罪を遂げた「既遂」が原則で、「未遂」は例外。やり始める前の「予備」は例外中の例外だった。さらに前段階の「共謀」を幅広く罪に問おうというのが今回の法案だ。政府案では、600種類以上の犯罪に適用される。

 政府は、こうした広範囲な共謀罪を国内法で整備しなければ条約を批准できずに「国際社会から孤立してしまう」と説明。一方、野党や日弁連は「英米法が源流の共謀罪は日本の社会になじまない」と反対してきた。

 ところが、共謀罪の本家、米国は05年、条約を批准した時に「一部の州では非常に限定された犯罪に関する共謀罪しか設けていない」と宣言、条約の一部条項を留保したことが表面化。野党はこの事実に飛びついた。

 政府は今国会の一般質疑で、米国の留保について知っていたと認めた上で、「連邦国家では連邦法が前提になっており、一部の州について留保されていても全体の連邦法でカバーされている」として「問題ない」と説明。限定的にしか共謀罪を設けていない「一部の州」として、バーモント、アラスカ、オハイオの3州を明らかにした。

 野党が調べたところ、アラスカ州法で共謀罪があるのは殺人、性的暴行、パイプラインの破壊など20種に限定されていた。バーモントでは15種程度、オハイオでは約20種だったという。

 野党側は主意書で「共謀罪の対象範囲をさらに限定することは条約上できない、というこれまでの政府の説明はうそではないか」と追及した。

 与党側は「自分たちが知らなかった部分もあり、こうした点を明らかにするためにも審議をするのが正しいやり方ではないか」と応酬。審議入りを強行する可能性をちらつかせ、野党を揺さぶっている。
 朝日の久しぶりの「共謀罪」関連のニュース。
 ところで、『週刊現代』(2006.12.09号)の今週号の記事“週刊誌の現場から:一斉アンケートでわかった大手メディアの無責任”ではメディア、政党、宗教団体、労組などの「共謀罪」法案に対するアンケート取材の結果を発表している。
 メディアと政党については次のような結果になっているらしい。

  朝日新聞  ×(○)
  読売新聞   ▲
  毎日新聞  ×(×)
  産経新聞   ○
  日経新聞   ▲
  共同通信   ▲
  時事通信   ▲
  日本テレビ  △
  TBS    ▲
  フジテレビ  ▲
  テレビ朝日  ▲
  自民党    ○
  民主党   ×(×)
  公明党    ○
  共産党   ×(×)
  社民党   ×(×)
  国民新党   ▲
  新党日本   ▲


 上の記号は各々の好きなおでんの具のことではもちろんなく、次のようなもの。(申し訳ありません m(_ _)m)
自民党再修正案に
○…賛成 ×…反対(カッコ内は共謀罪の新設自体に賛成か反対か)
△…どちらともいえない ▲…回答できない
 報道機関の▲は、おおむね次のようなことらしい。
「報道機関として、法案に対して賛成か反対かを表明する立場にありません」TBS広報部
 (『週刊現代』の同記事より)
 テレビ局はテレビ朝日とTBSのごく一部の番組を除いて、「共謀罪」法案の問題点や本当の争点などをテレビはそもそも報道すらしていないのではないかと思うが(テレビ朝日とTBSにしても僕の意見では数が不足だ)、ここは一つ「法案の社会的な重要度はどれくらいと思うのか、またそれに比する報道などをおこなっているか」という質問でもやってもらいたかった。

 ともあれ、上のアンケート結果で見ると、冒頭に紹介した記事を書いた朝日新聞は、与党案には反対だが「共謀罪」法案の新設自体には賛成となる。
「テロや密輸など国際的な組織犯罪に対し、各国が足並みを揃えて立ち向かうことが必要だから。その目的に沿って、法律の対象を国際的犯罪組織に限定すべきだ」朝日新聞広報部
 (同上)
 これを知ってから朝日新聞の記事を読み直すと、記事の意味するもの、また印象も少し違って感じられる?まぁ、書いた記者も新設に賛成だとは限らないわけだが…。

 前エントリーに続き、また朝日新聞を俎上にのせているけれど、単に偶然でもちろん別に悪意などはない。

『週刊現代』の記事で、僕が印象に残ったのは次の日本弁護士連合会の平山正剛会長のコメント。
「このような刑罰を作ることにより、盗聴や密告、自白の強要などの人権侵害を拡大する捜査手法が強まる可能性があり、刑事司法全体をゆがめてしまう危険性があると考えます」
 (同上)
 朝日新聞はこういう意見に対し、新聞の読者の納得のいく朝日新聞自身の答を紙面に載せて公表すべきではなかろうか。

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