雑木帖

 ─ メディアウオッチ他 ─

新聞社の現実から遊離した特権意識

2006-03-19 01:33:28 | メディア
 公正取引委員会が新聞の特殊指定の見直しをすることについて、新聞社や放送局など計143社が加盟する日本新聞協会が、特殊指定の堅持を求める特別決議を採択した。
 日本新聞協会Webサイト より

 新聞特殊指定の堅持を求める特別決議

 平成18年3月15日

 日本新聞協会第83回会員総会

 日本新聞協会は第83回会員総会にあたり、公正取引委員会に対し、新聞特殊指定の堅持を強く求める。

 新聞は、憲法21条によって保障された報道の自由を担い、国民の「知る権利」に寄与するものである。こうした使命は、自由で多様な新聞がつくられるだけでなく、公正な競争を通じ、住む場所を問わず、また災害など困難な状況下でも、同一紙同一価格で戸別配達により提供されることによって実現される。

 新聞販売店による定価割引の禁止を定めた特殊指定は再販制度と一体であり、その見直しは再販制度を骨抜きにする。販売店の価格競争は配達区域を混乱させ、戸別配達網を崩壊に向かわせる。その結果、多様な新聞を選択できるという読者・国民の機会均等を失わせることにつながる。

 昨年7月施行の文字・活字文化振興法は、すべての国民が等しく文字・活字文化の恵沢を享受できる環境の整備を国に義務付けている。公正取引委員会による特殊指定の見直しは、こうした時代の要請にも逆行している。

 われわれ新聞人は、公正な競争に一層力を入れ、特殊指定の維持に向け活動を強化していく。

 以上
 この中の「住む場所を問わず、また災害など困難な状況下でも、同一紙同一価格で戸別配達により提供されることによって…」は、どこかで聞いたような話だ。そう、小泉郵政民営化で失われる懸念が持たれている郵便局のユニバーサルサービスである。けれど、僕は寡聞にして日本新聞協会加盟団体の中で、その小泉郵政民営化法案に明確に反対をした社などを知らない。逆にヨイショをしていたところならいくらでも挙げられるのだけど。
 新聞社の反ジャーナリズム的な現況とは不釣合いな彼らの特権階級意識と言うほかはないようにも思う。
 My News Japanもこの件に関し、”日経が社説で大本営発表 特殊指定で最後の悪あがき”なる題で辛らつだが事実そのままの、参考になる意見を述べている。

 電気用品安全法(PSE法)の記事でも、同じような問題の根っこを持っていると思われるものがあった。
 ”経産省部長ブログ「炎上」 PSE法巡り書き込み殺到” 朝日新聞 2006/03/08という記事に対し、切られお富!Blogが”こんなの「炎上」じゃない!経産省部長ブログとPSE法”と批判をしている。
 問題となった「谷みどりの消費者情報 2006年02月13日 ”電気用品安全法のPSEマーク”」のページを僕も読んでみたが、切られお富!さんが書いていることは全く正しいと思う。
わたしの見たところ、極端に感情的なコメント、嫌がらせ的なコメントは極めて少なく、むしろ勉強になるようなコメントの方が多かった。

それに、「公務中の更新」といったって、周知徹底不足という問題を考えれば、公務中におおいにコメントをしてもらった方が、「公務の不徹底」を補えるってもので、「国家公務員法の職務専念義務違反」なんて、的ハズシの議論そのもの。

わたしの印象では、経済産業省が自分たちの耳を塞いで、PSE法を強行するために、ブログを閉鎖させたようにしか見えない。つまり、ブログに寄せられた真っ当なコメントに対して「聞く耳なし」の姿勢を示したのに加え、ネットを眼の敵にする古~い体質の新聞社が思いっきりバイアスをかけて上記の記事を書いたって話ではないかと推測します。

とにかく、自分の目で判断しなきゃあいけないって話の典型ではないですか?これは!!
(”こんなの「炎上」じゃない!経産省部長ブログとPSE法”より)
 谷みどり氏のそのページに寄せられたコメントは、官庁のメッセンジャーボーイたち(新聞記者)の要領をえない記事の数々とは違って、とても参考になるものが多く、経済産業省が正式に答えなければならないものばかりである。いや、本来は質問をされる前に行政の「説明責任」として明示しなければならないものばかりだ。日本新聞協会の加盟団体は、何故そういった質問を記者クラブでおこなって記事にしないのだろうか。
 こういう記者クラブの現状については、ベンジャミン・フルフォード氏が以前『SAPIO』という雑誌に次のように書いている。
 記者クラブとは議会、省庁・警察、大企業などの取材対象機関のなかに出入りの記者たちが設けた組織のことだ。クラブ室、つまり記者室は相手機関が提供する。そして記者たちの多くは毎日これを利用、当該機関の取材にあたる。一方、相手機関はクラブで定例的な記者会見を実施し、情報によっては報道解禁日の協定なども行なう。
 これだけでも記者クラブ制度というものが、いかに日本のジャーナリズムを台無しにしているかが見えてくる。そもそも、批判的な目で見なければならない取材先からクラブスペースやさまざまの便宜を提供されているのだ。
 さらにクラブを抱える組織は、なにかと名目をつけ、メディアとの”懇親”を深めようとしてくる。それでも批判的な記事を書こうとする硬骨の記者に対し、各種の機関は、そのメディアだけ情報を提供せずに”特オチ(他のすべての社が報じたニュースを1社だけが取りこぼすこと)”させるなど、露骨な嫌がらせをする。そして、自分たちに都合のいいことしか書かない記者として”調教”しようとするのだ。一方、どうやっても”調教”できそうにない相手(一部の雑誌や外国人記者)に対しては、クラブヘの参入を強く拒むことで、情報を遮断してしまう。
 その結果、今では、政治部記者は政治家を、経済部記者は大企業を、社会部記者は警察を守るために活動するようになった。そして「日本の新聞は旧ソ連の『プラウダ』(共産党機関紙)のようだ。8割は書いてあることが同じ」(イタル・タス通信、ワシリー・ゴロブニン東京支局長)といわれるほどの状態を生み出してしまったのだ。
 それですべてがうまく行っているのならばいい。しかし、もはや日本経済は破綻しかかっているといってもよい状況だ。なにしろ、海外に日本の国債を売りに行っても、どの国も見向きもしないのだから。そして、そんな恐ろしい事実すらも、日本のメディアはタブーとして報道しない。(”日本の新聞とTVを内から腐らせる「クラブ制度とタブー」”『SAPIO』2005.03.09号)
 また、『週刊ポスト』に、
 日本の権力は、新聞、テレビは信用できるが、クラブに所属していない週刊誌や夕刊紙は信用できないという偏見を広めてきました。私にいわせれば、日本で信用できるメディアは週刊誌、夕刊紙、それに右翼の街宣車(笑い)。最後に新聞です。
 と書いている。
 最近話題になった「北海道警 VS. 北海道新聞」でも、
 北海道警は『北海道新聞』に対し、「特オチ」(「特ダネ」の反対で、1社だけ重要なニュースが報道されないこと)などの嫌がらせをくり返してきた。それは、各社記者が集まり、警察官から話を聞いているとき、「『道新』は外してくれ」と言われるほど、露骨なものであったという。(”警察裏ガネ疑惑は道警だけじゃない!! 告発者が知る「警察庁キャリア」の名前”『日本タブー事件史』より)
 ということがあったようだ。この「特オチ」というのは記者が一番恐れるものだそうで、何故なら不甲斐ないサラリーマン上司に「他社が書いているのに、うちだけ載せないなんてことが許されると思うのか!」などとこっぴどく叱られるからだ。
 閑話休題。

 とても全部は並べられないので、最初から少しその寄せられているコメントを紹介する。
最近ニュースで見て興味を覚えたので、この法律をいろいろ調べてみて
憤慨しています。国民の生活を脅かすとんでもない法律と感じています。

まず、騙されてはいけないのは、このマークが付いてる=安全 では
ないこと。安全性は旧規格と変わりなく、自主検査でマークが付けら
れるようになっています。現にマーク付きの製品の火災事例もありま
すし、オーディオや楽器等、規制される機器の火災事例の統計も取って
ないとのことです。

・中古品の売買禁止で、リサイクル業界に多大な影響を与えるのに、
全く周知がされていなかったことが報じられています。施行前には中古
品に触れず議員の了承を取りつけた後、最近になって解釈変更により中
古品にまで含ませたのではないですか?

・リサイクル業界が潰れると、個人が売るときの市場もなくなります。
オークションについても業者とされる基準が曖昧なのに、厳しい罰則が
あります。これは罪刑法定主義に反するのではないですか?

・また、売れない=財産価値は0になります。これは財産権の侵害では
ないですか?(私権を制限できるだけの合理性はないと思います)

・売れないとなると捨てるしかなくなり、リユースの阻害、不法投棄などの増加が懸念されますが、環境という視点では考えていないのか?
また、二度と作られない古い楽器などが放棄される文化的な損失も
はかりしれません。

・事業用機器にも適用されるが、中古工業機械等がが当たり前の業種
や、それを担保に融資を受けていた事業主は突然担保価値が0になる
可能性があります。(差し押さえた機器の競売はNGですよね?)

このような手続では国民の信頼は得られないと思います。

Posted by 一消費者 at 2006年02月18日 12:23

俺「電気用品安全法とはなんですか?」
経「国民の安全と財産を守るための法律です」
俺「ビンテージ物の楽器とか売買できないのに財産を守る?」
経「個人ではできます。事業者ができません」
俺「小さいリサイクルショップなど潰れてしまうのでは?」
経「……」

俺「製品の選定の基準は?」
経「法律に基づいたもの」
俺「なんでPCがOKで楽器が駄目なの?」
経「ACアダプターを使ってないから」
俺「楽器で事故が起こったというならわかるし、その事例でもHPに載せてあれば
  納得できるが基準がさっぱりわからない。製品選定について精査されたのか?」
経「5年前の法律に基づいたもの」

俺「消費者に伝えたのか?」
経「5年の猶予期間があった。業界向けには伝えた」
俺「消費者に伝えたのか?」
経「経済産業省の官報・HPで広く伝えた」
俺「あなたは他の省庁の官報読みますか?他の省庁のHP見ますか?」
経「…いいえ、その仕事に関わっていないので」
俺「普通の人はそんなとこ見ない。せめて新聞や雑誌に載せるでしょ?
  5年の猶予があったらと言うなら消費者にも広く伝える
  義務があったのでは?」
経「国民ひとりひとりに伝えきれたとは言い切れない」

俺「憲法29条の財産権の侵害では?」
経「電●用品安全法に基づくものであって、こちらではなんとも言えない」
俺「5年も猶予があって公式見解を伝えられないのか?
  ザル法じゃないんですか?」
経「……」
Posted by ごんべえ at 2006年02月18日 12:35

細々と音楽に携わる者です。
中央に比べ音楽文化に触れる機会の少ない地域の子供達に、機会の平等を与えんと志をもって取り組むうえで、この法律の恐ろしい破壊力を持つことに気づきましたので、意見を書き込まさせて頂きます

これまでは、音楽教室に入りたいけど楽器を買うお金が・・という時には、電子ピアノなら買えるから、電子ピアノも新品は買えないけど中古品を安く譲ってもらえるんだったら、そんな形で子供さんの夢をかなえてあげることができてまいりました。
でも、中古品が流通しなくなると、それほどおられるわけではありませんが、機会を失ってしまう子供達もいるということを知っていただきたい。
まるで開発途上国のことの様だ、とお笑いになられるかもしれませんが、それが田舎町の現状なのです。
それに、最近の電子楽器で火災事故にあった事例なぞ聞いたこともありません。メーカーさんにしても事故で社会的信用を喪失することもあり、品質管理には万全を期してこられた筈です。
どうして最近10年間ほどの十分に安全にな電子楽器まで規制されてしまうのでしょうか?

未来ある筈の子供達の機会の平等を奪うことなど無き様、きめ細かで人々の幸せにつながる様に運用いただけることを願うばかりです。
通商産業省にて法律をおつくりになられる方のホームページと聞き、飛んでまいりました。
失礼致しました。
Posted by 匿名希望 at 2006年02月18日 12:53

最近、この問題を知りましたアマチュアミュージシャンです。
この間までまったくこの問題を知りませんでした。
知り合いの中古音楽店は店を閉めるそうです。
ネット上でのこととはいえ、
多くの方がこうやって真摯に意見を求めていられるのに、
それをまったく無視するのは、唾を吐きかけられているようで
非常に不快で、公務員の方として有るまじき態度だと思います。
この問題についてさらに活発な議論が行われることを望みます。
Posted by 匿名 at 2006年02月18日 13:29

これから販売される製品にPSEマークが付けられ、徐々に移行してゆくというのなら、何も反論するつもりはありません。

中古品の売買を性急に禁止する必要性は本当にあるのですか?
昨日まで普通に使用されていたものですよ。それが危険だというのなら、市場に出回っている家電製品全てに危険性があるということになります。この不合理は何なのですか?
しかも品物によっては、リユース度が高いという理由で対象外とする。
リユース度が高くても、やはり危険性はあるんですよね、貴女方の基準からすればPSE法以前の家電製品全てに。

PSE法自体に反対してるのではないので、当方の視点をしっかり理解して頂きたいのですが、これから販売される製品にのみ適用するのが妥当なのではないですか。

PSE法以前の機材にまつわる文化、研究、趣味の全てを消し去る法律なのですよ。あまりに乱暴で強引です。

8mmフィルム文化はこれで消えてなくなることを理解していますか?
音楽の世界でどれだけアナログシンセサイザーをはじめとする過去の名機が愛されているか知っていますか?
工学系研究室でどれだけ古い機材が重宝されているか知っていますか?
3ヶ月前の中古品にまつわる決定は、本当にこれら全てを理解したうえでの妥当な決定であったと胸を張って言えますか?
Posted by hayashi at 2006年02月18日 13:34
(谷みどりの消費者情報 2006年02月13日 ”電気用品安全法のPSEマーク” コメント欄より)

 実は、家にはもう6年以上も前に購入した未使用の電気、電子部品が沢山ある。ちょっとした趣味の電子工作の材料なのだが、抵抗、コンデンサーから、電源、ステッピングモーター、ロジックIC、ワンチップマイコン、LED等々まで、かなりの数が残っている。ネットを始めてから時間などのこともあって、ここ数年は全く製作をおこなっていない。それで、近々一部を除いて一挙に処分するつもりでいた。なんとなれば、部屋の掃除などの時に邪魔で大変だからだ。
 しかし、ヘソまがりの僕は、今回のこの「電気用品安全法」の一件で、古いものも捨てるのはやめることにした。
 ちなみに、僕は新品の電化製品も無条件には信用しないほうである。今の電化製品はテレビなどのように、常に100Vの電源が入っていて、スイッチを入れれば瞬時に番組の画面が映ったりするのだが、僕などはエコロジー以前の問題として、「危ない(もしかしたら、部品や組み付けが悪く、熱を持って燃えるかもしれない)」という懸念から、長い時間家を留守にする時にはなるべくコンセントを抜くようにしている。とはいえ、近年はけっこう手のほうを抜いていたりするのだが…。
 しかし、紹介したコメントにもあるように、「電気用品安全法」の理念といったものはおかしい。もし、中古品を販売する時には検査認証が必要なほどの事項というのであれば、世の中に存在する様々な重要な場所、またシステムの位置にある機器などは特に、別に売るのでなくても、その年数ごとに全て一つ一つチェックをするべき、ということになるのでは? けれど、事故の統計すらとっていない、というのではそもそも一体どんな実効的な根拠をもとにして法を定めたのかもあやしく、法を作成する以前の問題…と言わざるをえないのではないかと思う。

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2 コメント

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近年稀に見る悪法ですよね。 (ゆりかりん)
2006-03-20 17:40:55
私も含めて友人達の多くは、ロハスなんて形骸化した言葉が流行るずっと以前から、(可処分所得が低いが故に?)リサイクルショップをよく利用していました。

家電製品などを購入したり、使用しなくなったPCなどを売ったり・・・。(特に単身赴任者や、勤務先がコロコロ代わる契約社員の友人達は、新品をそのたびに購入することなど出来ませんから、重宝してたんです)

そういうケースはまだ良い方かもしれないですね。

リサイクルショップやアンティークショップだけに留まらず、例えば、(中古のトラクターなどを利用していた)農業従事者、(中古の船などを再利用していた)漁業従事者、(中古の医療機器で凌いでいた)医療従事者、(様々な加工機器を中古で購入していた)町工場、・・・そういった業種の人達にとっては、直接多大なダメージを受けるわけで、深刻な死活問題ですから。

そういうことを考えて行くと、これは、日本社会全体に甚大な被害を齎すのではないか?・・・と思えてきます。

ようやく回復しかけていた日本経済に水を差すどころか、本来盛り上げていくべき生産・製造の現場が喪失されかねない。

(役人どもが、如何に家電メーカーから賄賂を貰ったかは不明ですが、そういうバカバカしい目先の欲一つで)またもや日本が国際競争力を失うようなシステムへと向かわざるを得ない状況を生もうとしていることに、連中は気づいているのでしょうか?

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この数年、”稀にみる悪法”だらけですね (c-flows)
2006-03-20 23:17:20
2011年7月24日までに、テレビのアナログ放送は全てなくなると決まっているのですが、現実はそう計画(ちゃんとした計画などあったのでしょうか。とても疑問です)通りには運ばないような感じです。今の調子ではその2011年7月24日になっても相変わらずアナログ放送しか受信できないテレビが大量に残る公算のほうが高いと聞きおよびます。

このテレビの地上デジタル波放送化は、家電業界にとっては「無から有が生じる」が如き福音といえますが、当然その決定プロセスにはその家電業界が一枚も三枚もかんでいるに違いありません。官僚などは、家電業界の売り上げが伸び、「経済」が活性化されてよい、くらいにしか考えていないのかもしれません。

でも、ゆりかりんさんが書かれているように、ほんとの経済はそんなことで良くなるようなものではないですよね。

僕は今度の「電気用品安全法」にテレビなどを含む中古家電が加えられた背景には、もしかしたらこの2011年のアナログ波の停波問題があるのではないか、とふと疑念を覚えた次第です。

思うに、家電などが新品ばかりの部屋というのもちょっと寒いような気もします。テレビなどは、時々映らなくなって、バンと叩いたらまた映る、くらいがいいのではないかと個人的には思ったりします。

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