
図には社会保障支出の対GDP比が日本より小さい先進国はアメリカとオーストラリアだけであることを示しているが、なおも日本ははそれ以上の「小さな政府」を目指しているらしい。この記事の執筆者が朝日新聞客員論説委員というのも、今の世の中を象徴しているのかもしれない。
公正な市場ルールづくリが財政再建には欠かせない (『週刊ダイヤモンド』 2006/05/20)
小林慶一郎(経済産業研究所研究員・朝日新聞客員論説委員)
…(略)…
上の図は、社会保障関係の財政支出(GDP比)と、「所得は運で決まる(市場は不公正)」と信じる人の割合との関係を示したものである(出所:Alesina, Alberto, and George-Marios Angeletos (2005). "Fairness and Redistri bution." American Economic Review 95 (4) : 960-80.)。
「市場は不公正だ」と信じる人が多い国ほど、財政支出が多くなっている。アレシナとアンジェレトスによると、先進国かどうかというような属性を考慮しても、この結果は変わらない。また、この研究では、「市場は不公正だ」と信じる人ほど、大きな政府を支持する傾向を持つことも示されている。
多くの国民が公正だと納得できるような市場ルールをつくることは、それぞれの業界の小さな問題ではすまない。それは、小さな政府路線や財政再建への国民の支持をつなぎとめ、マクロ経済安定と将来世代の負担を軽減する前提条件ともいえるだろう。
参考:
・大調査!日本のお金持ちの本音 (『週刊東洋経済』 2005/04/02)
読売の記事で、自民「自宅担保に生活保護」など検討…歳入歳出改革 [読売新聞] 6月20日というのがあった。2011年度のプライマリーバランスの黒字化をめざすという自民党が、社会保障分野での歳出削減の項目の一つに、「リバースモーゲージ=自宅を担保に生活保護を受給し、死亡後に自宅を売却して返済にあてる」の導入を考えているのだという。
「家を売る」ですぐに思い出すのが、オリックス会長の宮内義彦氏が混合診療についての見解で述べた、
「金持ち優遇だと批判されますが、金持ちでなくとも、高度医療を受けたければ、家を売ってでも受けるという選択をする人もいるでしょう」
という言葉だ。
何だか庶民の家は質草であるかのようだ。
18日に閉幕した第164通常国会で成立した「医療制度改革関連法」では、この混合診療の実質解禁も盛り込まれていた。
これまでの特定療養費制度が廃止され、かわって効果や安全性がまだ確認されていない保険適用外の「高度な医療」や「先進的医療」の治療や薬剤などを、保険併用診療の「保険導入検討医療」と、自由診療の「患者選択同意医療」とに分け、「保険導入検討医療」の保険給付部分を「保険外併用療養費」として給付するというものだが、この「保険導入検討医療」に分類されたものについては自費診療と保険診療の併用が認められることになった──つまり、混合診療が実質解禁されたのだ。厚生労働省は、これで今後の混合診療の要望には「おおむねすべてに対応」可能と言っているらしい。
だが、これについての注意を呼び覚ます報道はまったくなかったようで、次の日経の記事のような相変わらずの異常なこととなっているようだ。
小泉政権の実績、肯定派が60%・日経世論調査 [日経新聞] 2006/06/19
最後の通常国会を終えた小泉政権の実績を世論調査で聞くと、「評価する」(15%)、「どちらかといえば評価する」(45%)との肯定的回答が6割に達した。「どちらかといえば評価しない」は22%、「評価しない」は11%にとどまった。
ただ5月調査と比べると肯定派は5ポイント下がり、否定派が9ポイント上がった。終盤国会で社会保険庁の不祥事や日銀総裁の村上ファンドへの資金拠出などが相次いで発覚した影響が出たようだ。
参考:
・もしも「混合診療」が解禁になったら……ナビゲーター 頼近美津子(日本医師会)
一方、政府と同じ穴の狢と呼ばれてもおかしくない報道機関は、重要法案を国民に対してシッカリと告知する義務があるにも拘らず、その代わりに馬鹿げた芸能ニュースばかりを報じています。
国民はこうしていつも、政府が齎す我が身に降りかかる危機に対して何も知らされないまま、窮地へと追い込まれていくんですね。
勿論、我々国民がもっと知る権利を行使する力を持つことも重要ですが、それには限界があります。
したがって、こういう姑息な政治のやり口は、明らかに説明義務を怠った政府と報道機関による犯罪といって良いですね。
我が子達の将来を考えると暗澹たる気持ちになってきます。
『週刊エコノミスト』の今週号で「強い生保」という特集を組んでいますが、強い生保NO1に選ばれたのは、沖縄で怪死した野口英昭氏が理事を務めていた安倍晋三氏の秘密後援会「安晋会」会長吉村文吾氏のAIGグループのAIGスター生命でした。
今後、「ザ・生保」は混合診療の拡大にともなう医療保険市場の大盛況により莫大な利益を計上し続けることになるのでしょう。