雑木帖

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【共謀罪】誰のための広い適用か 高知新聞

2006-05-15 00:37:27 | 政治/社会

高知新聞 社説 2006/05/09

 【共謀罪】誰のための広い適用か

 …(略)…

 修正によって野党に譲歩したのだから、これ以上は譲れないとの声もあるようだが、譲歩は政府・与党にとって織り込み済みだろう。落としどころとの狙いが透けて見える。

 適用の対象となる犯罪集団や、犯罪準備という意味の「資する行為」の定義は、修正論議で詰め切れるものではないだろう。結局、取り締まる側の自由な判断になるのでは、これまで提出されてきた法案と同じだ。戦前の治安維持法になると懸念する声もある。

 権力を持つ側にとって、反対の立場、思想の国民を裁量で取り締まることのできる法律は魅力的である。今回、適用範囲が広いのは誰のためだろうか。

 現行法で摘発事例を重ねて国際犯罪を防ぐ道筋もあるはずだ。


「都内では標識がなくても、何かしら違反になる場所がほとんどです」

 これは改正道路交通法で民間人による駐車違反の取り締りが解禁、その駐車監視員の資格者証を取得させるための「駐車監視員資格者講習」で講師が言った台詞である。
 この「駐車監視員資格者講習」は、”道路交通に関する法令の知識その他放置車両の確認等の適正な実施に必要な技能及び知識について”2日間、計14時間の講義をおこなう。
 その後、1週間後1時間の修了考査があり、これに合格すると、駐車監視員資格者証の交付申請ができる。手数料は19000円。これで晴れてばんばん100万画素のデジタルカメラ片手に駐車違反が取り締まれる。
 一方で、”道路交通関係法令の規定の違反の取締りに関する事務に従事した期間が通算して3年以上である者”、また”確認事務における管理的又は監督的地位にあった期間が通算して5年以上である者”、つまり警察OBは上記講習などは免除され、資格者証の交付申請手数料も4500円ですむ。
 そして、取り締まり業務が可能となるのは、この駐車監視員資格者証の交付を受けた者がいて、かつ公安委員会に登録した法人。また、一地域に一法人の委託。
 法人として登録が可能なのは、公安委員会が相応しい企業・団体と認めることが必要で、役員などに警察OBなどが迎え入れられそうだ。このへんは、”駐日外交官たちの考える「耐震強度偽装問題」の意味”で書いた、改正された建築基準法で民間企業が検査機関としての指定を受ける際に、役所のOBを受け入れざるを得ない巧妙な仕組みまでつくられていたのと同じような構図の「天下り」システムといっていい。

 この改正道路交通法の駐車違反取り締りも異常なことになっている。

 参考:

 来月から違法駐車“即アウト 東京新聞 2006/05/14

 来月一日に始まる駐車違反の取り締まり強化をめぐり、運送業者から悲鳴が上がっている。短時間の違反でも“即アウト”となるためで、業界団体の全日本トラック協会(東京)は「運転手が車を離れられなくなる」として顧客に車両まで荷物を取りに来てもらうなど協力を求めるチラシ約百万枚の作製を始めた。

 取り締まりが厳しくなるのは駐車中の車に運転手がいない違法駐車。従来は警察官がタイヤなどにチョークで印を付け、一定時間後に標章を張っていた。十-二十分程度の“猶予”時間があるのが実態だったが、今後は民間の駐車監視員や警察官が、違法駐車を最初に確認した時点で標章を張る。

 「車から荷を下ろし、お客さんの自宅や店に届け、ハンコを押してもらうまで仕事の一環。車を離れるな、というのは経済活動を無視している」

 大手から零細まで約五万五千の運送業者が傘下に入る、同協会の幹部は困惑顔だ。街中はトラックを止めようにも駐車場がないことも多い。

 協会は、運転手が車両を離れられない場合、客に路上の停車場所まで足を運んでもらい、荷物の受け渡しをする事態を想定。協力を求めるチラシ製作に急きょ着手した。

 法人の荷主などには、事前に自社の駐車スペースを空けてもらうなどの対応も依頼するという。

 今月下旬には約百万枚を準備し、各業者などを通じ配布する予定だ。

 警察庁は「交通の安全や円滑性に影響が大きいため、貨物車だけ特別扱いはできない」と説明。

 一方で、各地で駐車禁止を一部時間帯は解除したり、一部地域で集配中の貨物車に限り駐車を認めたりといった配慮もしたという。

 しかし、同協会は「十分ではないと思う。お年寄りに『車まで荷物を取りに来て』とは言いにくい。混乱が起きるのではないか」としている。

<メモ>駐車監視員

 道路交通法の改正で、都市部を中心に全国270警察署管内で民間の駐車監視員が誕生する。監視員や警察官は違法駐車を確認すると、デジタルカメラで撮影し、端末に違反状況のデータを入力して、車に標章を張り付ける。標章の張り付け前に運転手が戻れば原則、警告にとどまる。

 監視員が重点的に活動する場所や時間帯を定めたガイドラインは、各都道府県警察のホームページで公表されている。


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2 コメント

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Unknown (ゆりかりん)
2006-05-15 16:40:59
たったの14時間の講義を半分居眠りしながら聴いていさえすれば、駐車監視員資格=『みなし公務員』のレッテルを貼ってもらうことができるので、もし不本意な警告等を受けた際に、「警察官じゃないんだし・・・」とついウッカリぶん殴っちゃったりしたら、さぁ~大変! 『公務執行妨害』で逮捕されちゃいます。w ぶん殴らないまでも、押したり、手を跳ね除けたり、逆らったりしても、運が悪けりゃ、その対象になる恐れもあります。www



しかも、これってつまりは、公務員のスリム化=節税の反対を行ってるわけですよね。=増税になっちゃうんですもん。青天井で『みなし公務員』を大量増員し、そうした法人をドンドン増やすということは、その分が単純に支給交付金として、従来の警察予算に上乗せされることになるんですから。ちょっとくらい警察官減らしたくらいじゃ到底間に合わないような予算が、そこには発生してくることになるわけで。



更に言えば、国民の財布から出る税金でもって、国民の望んでいない悪法が、国家権力によって無理やり行使されるという、こうした民主主義精神に相反する仕組みは、まさに、かつての『電気用品安全法(PSE)』が然り。そして、今回の『共謀罪』も然り。

ところが、搾取され騙されようとしている当の国民の殆どは、というと、・・・あまり怒っていないんですよね。不満を感じているかもしれないけど、その憤りのボルテージはあまり高まっていない・・・ように私には見えてなりません。(もしかすると、こうした深刻な法案に関しての認知度が低いのかもしれませんが?)



国民の質が低下しているという証拠を突きつけられているような気がします。



『国家=政治=国民』という言葉を改めて忸怩たる思いで噛み締めています。

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あまりに非現実的な法律なので… (雑木帖@管理人)
2006-05-15 22:01:32
> あまり怒っていないんですよね。不満を感じているかもしれないけど、その憤りのボルテージはあまり高まっていない・・・



二つほど思うのは…

一つは毎日の生活──さらに競争が過酷になりつつある仕事環境など──に追われて精一杯?

もう一つは、法律の内容があまりに現実離れしたものなので、虚をつかれたかのように現実感がわかない。



民間人による駐車違反取締りは、二重に”増税”です。民間人の雇用費用+駐車違反料金(笑)です。笑っている場合ではないのですが(笑)

一日中、駐車違反の取締りをやるのだから相当数アげられると思います。

それと、警官の数はたしか今後増やす予定だったと思います。

このへんは、前にゆりかりんさんが書かれていた不安定な世の中になってゆくということからなのでしょう。

だけど、宅配便が配達のために運転者が車を離れたら「駐車違反!」なんて、ほんとに現実なのでしょうか!?



でもほんとに、そろそろ市民は立ち上がるべきですね。

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